賀川豊彦って、ご存知でしょうか?ノーベル文学賞とノーベル平和賞の候補に計5回なった人物です。もし、ノーベル賞に輝いていたら、湯川秀樹より早く受賞して、日本初になっていました。
賀川豊彦のすごさは、それだけではありません。今の、
労働組合、
農協、
生協のきっかけをつくった人物です。今や、既得権益団体に成り下がった?これらの団体は、賀川豊彦が貧困を救うために提唱したキリスト教精神から生まれたものです。
実際に、貧民街で暮らし、貧民、工場労働者、小作農民の救済に捧げた賀川豊彦の思想と人生に迫った本書の中で、心に響いた箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。
・「私自身の理想は、貧民窟の撤去にあるが、今すぐに貧民窟がなくならないとすれば、貧しい人々と一緒に慰め合っていきたい。これは必ずしも慈善ではない。これは『
善き隣人』運動の小さい糸口である。人格と人格との接触をより多く増す運動である」
・「讃美せざるを得ないのは、このドン底にも一種の固い道徳と、愛と、相互扶助があること。貧民窟の博徒が入監でもすれば、皆で同情して差入をする。病気になれば、近所で救済する」
・「
精神的堕落と共に、
頽廃的気分に社会が包まれると、飲酒、黴毒等によって、貧民窟を目がけて集まってくる」
・「貧民は群衆として生活しており、
個人の意識が弱いから、ついつい群衆の波におされ、無意識的盲動に安ずる」
・「人と生まれて、
屑物拾いにまで堕落すれば、永遠の向上することができない。親に連れられて屑拾いに出た子供は永遠に絶望である。彼らはいつかは奈落の底に堕ちていく。物を拾うことから、物をとることまでは、何の抵抗もなく連続している」
・「世界に悪人はいない。世界に聖人もいない。善は失楽園以降破片となって世界に散っている。ドン底の人々にも少しずつの
善の破片が落ちている」
・「もし今日、貧民階級をなくしてしまおうと思えば、今日の
慈善主義では不可能である。慈善主義は常に貧民を増加させる」
・1918年の関西
労働同盟会創立宣言で、賀川の宣言はさらに進んで、八時間労働制、最低賃金の制定、社会保険制度の確立、工場民主制、男女同一賃金、住宅問題の解決、教育の機会均等を要求している
・「人間はその本然において自由である。ゆえに労働者は人格である。ただ賃銀相場によって売買せしむべきものではない。労働力を掠奪し、人間性を物質化せんとする時に、
社会秩序の支持は黄金にあるのではなく、人間性にあることを資本家に教えねばならない」
・「我らは何よりも先に人間になりたい。要求はただ賃金の値上げだけではない。八時間労働制だけではない。貧乏しても、労働時間が長くてもかまわない。先ず
人間でありたい」
・「憎悪を教えることは、すべての社会運動においては失敗である。社会運動の
根本的動機は愛であらねばならない」
・1922年
日本農民組合創立大会で可決された賀川の起草、「農民は知識を養い技術を磨き徳性を涵養し農村生活を享楽し農村文化の完成を期す」「相愛扶助の力により相信じ相倚り農村生活の向上を期す」「農民は穏健着実合理合法を以て共同の理想に到達せんことを期す」
・「農民は年々疲弊していく。彼らは、ほとんど貧民同様の生活に甘んじている。日本の750万人の農民家族は一反の田畑を持っていない
無産階級の人々。日本の社会問題は農村にある。農村の小作人は、体裁のよい賃金労働者である」
・「農村の貧民はきそって都市に集中してくる。都市に集中した職工の8割が農民。彼らは、不況になっても故郷に決して帰らない。とにかく、百姓していては儲からないからである」
・賀川はデンマークの農民高等学校にならって、全国からの農村青年たちと起居を共にし、農村問題について語り合い、農民の生きる道を話す
農民福音学校をつくった
・「今日労働運動で、私の最もいやな傾向は、労働運動が抗争的になって、人間愛の基調から分離して、
倫理運動から堕落していくこと」
・1919年賀川は
購買組合共益社を組織したときの網領、「実質本位の日用品を廉価に供給して、組合員の生活を安定幸福ならしむ」「購買による利益を二分し、一を組合資本に積立て共同の利益を図り、他を組合員の購買高に応じ年末配当し、家計を安定豊富ならしむ」
本書には、賀川豊彦の理想と生き様が描かれています。理想が必ずしも実現できたわけではありませんが、今日に影響を与える大きな足跡を残しています。
愛を貫き、人間の
人格を尊重し、その身を
公平な社会実現に捧げた賀川のような人物が、今の格差社会の世の中において、現れてくることを願っています。
http://mikiosumiya.jimdo.com/