とは学

「・・・とは」の哲学

『勲章・知られざる素顔』栗原俊雄

勲章 知られざる素顔 (岩波新書)勲章 知られざる素顔 (岩波新書)
(2011/04/21)
栗原 俊雄

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昔、ある団体の仕事をしていたとき、その団体の理事長と勲章の話題になりました。

私が、若気の至りで、その理事長に向かって「勲章なんて何でほしいのかわからない」と言いましたら、「君も歳をとったら、勲章をほしいという気持ちがわかるようになる」と言い返された記憶があります。

それから、二十年以上経ちましたが、いまだに勲章を欲しがる気持ちがよくわかりません。

国家の権力者にとって、庶民を掌の上で踊らすのに、一番安くて最適な道具が勲章です。

例えば、会社でも、社内表彰制度がありますが、表彰してもらっても、賞状だけで給料が上がらなかったら、馬鹿にされているような気分になります。

国家から、多額の金一封があるか、将来の年金が大幅にアップするなら、勲章をもらいたい気持ちもわかりますが、戦後の憲法下では、お金の妙味はなくなっています。

現在では、子供がつける缶バッジと本質的に変わらないのに、勲章をなぜ欲しがるのか?勲章を欲しがる心理とはどういうものなのか?

それを知るために、この本を読みました。参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・いかなる職業のいかなる地位の人が、どのような等級の勲章を与えられているかを見ることによって、国家の、職業に対する価値の高さと評価の度合いが明らかになり、国家の考える価値体系が明確になる

・大多数の人々は生きていくために、それぞれの分野で励み、働いている。評価の分かれ目は、模範になるかどうか

・明治憲法体制下では、勲章の恩恵は名誉だけではなく、年金が支給されていた。日本国憲法の下になり、勲章の年金制度は廃止され、経済的恩恵はなくなった

勲章受章者の官の割合が58%で、公職を含めれば66%。民(34%)の2倍近い。政治家や公務員は公のために働くのが仕事であり、相応の報酬も得ているのに、莫大な税金を使って勲章や褒章で顕彰する必要はないと、1990年代より批判が噴出している

叙勲の種類は、「1.春秋叙勲」(55歳以上、春秋ともに、4000人)「2.高齢者叙勲」(春秋叙勲対象外の88歳)「3.死亡叙勲」「4.外国人叙勲」「5.危険業務従事者叙勲」(警官、自衛官、消防吏員、海上保安官等、春秋ともに3600人)「6.緊急叙勲」

勲章を欲しがる人がいなくなったら、勲章の価値はなくなる。それゆえ、勲章を贈る側にとって、最も避けたいのは、辞退されること

・叙勲を受けることができない「欠格条件」は、有罪判決者、犯罪容疑者だけでなく、「刑罰等調書」(駐車違反の罰金刑を含む刑罰の有無、破産宣告または破産宣告手続きの有無など)も協議書類の一つ

・永井荷風は妖艶で詩情豊かな世界を描いた作家で、権力を嫌い、ストリップ劇場や娼婦街を取材し、品行方正とは言い難い暮らしであった。世間は勲章など受けることはないだろうと見ていたが、文化勲章を受賞し、授賞式当日の様子を詳しく記している

・社会党は「今の叙勲は戦前と同じく人間を細かく格付けしており、新憲法になじまない」「社会党員と議員は生存者叙勲を拒否する」との見解であったが、1970年の加藤シヅエ以来、党議は完全に溶解してしまった

・福沢諭吉は、栄典を嫌い、徹底してこれを避けた。叙勲の話があったときも、「迷惑」として辞退する書簡を送っている

・芥川龍之介は、勲章を「小児の玩具」に似ているとし、「なぜ軍人は酒にも酔わずに、勲章を下げて歩けるのか、不思議である」という文章を残している

・彫刻家の佐藤忠良は、文化功労者の打診を断った理由に、「職人に勲章は要らないから」と答えた。佐藤は「粘土職人」を自認していた

・作家の城山三郎は、「物書きの勲章は野垂れ死。もらわないよ。断ってくれ」とにべなく言った。さらに、自分が死んでも決して受け取らないように念を押した

・勲章の1個あたり製造費は約10万円。2010年度の予算額は約28億円

・勲章を受けるかどうかが、その人の人となりを判断する大きな要素。勲章制度をどう評価するかは、その人の歴史観、国家観に大きく左右される



この本を読み、わかったことは、勲章をもらえたのにもらわなかった、勲章辞退者こそが、立派な人物であったということです。その人たちを、心の中で表彰したいと思います。

勲章をもらうことと、AKBの総選挙で上位に入ることは、「人間心理の操られ方」において同じです。違いは、誰の手で、踊らされるかということです。

それならば、国家に選ばれるより、CDを買ってくれた人たちに選ばれて、踊らされたほうが、よっぽど名誉なことなのかもしれません。
[ 2011/06/16 08:15 ] お金の本 | TB(0) | CM(3)
なにいってんだこいつ
[ 2014/02/16 11:47 ] [ 編集 ]
勲章もらって喜んでる馬鹿な人間には、分からないでしょうね。
辞退できるような素晴らしい人間に、私もなりたいです。
[ 2015/11/10 15:13 ] [ 編集 ]
あえてなしさんへ
勲章って、考えてみたら、国が与える「缶バッチ」ですものね。
それをもらって、一喜一憂するのは、あくまで本人の価値観次第。勲章自体に金銭的価値はあまりないように思います。
[ 2015/11/10 20:34 ] [ 編集 ]
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