とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『天才の世界』湯川秀樹

天才の世界 (知恵の森文庫 t ゆ 1-1)天才の世界 (知恵の森文庫 t ゆ 1-1)
(2008/12/09)
湯川 秀樹

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この本をすすめてくれたのは、独立前に勤務していた会社の上司Fさんです。Fさん曰く、「天才に出会わないと、成長が止まる」。その通りです。

世の中を動かすのは、天才です。凡人は、天才が築いた軌道の上を走っているだけです。行き詰まったとき、天才に出会うと、その光を浴びて、復活することができるように思います。

天才は滅多にいませんが、時空を超えた書物の中には、いっぱいいます。その天才に触れることは大事なことです。

湯川秀樹はまさに天才です。湯川秀樹が天才たるゆえんは、本業の物理学だけにとどまらず、他の分野にも造詣が深いことです。

この本では、湯川秀樹が、「空海」「石川啄木」「ニュートン」といった天才たちについてどう考えていたかを知ることができます。

特に、空海に対する知識の深さには驚かされます。今回、この本を読んで、ためになった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・空海は芸術で自己表現する欲望が強い。これは悪くすれば自己顕示欲まる出しになるが、もう少しスケールが大きい。宇宙的生命を自分のところへ凝縮し、それをワッと表現するので、非常に大袈裟なものになる。それが、彼の思想であり、人生でもあった

・空海は、非常にイマジネーションが豊富で、それがどんどん湧き出してくる天才。「生れ生れ生れ生れて」と言わなければ、中から出るものが表現しきれない。同じ文字を単に並べているように見えるが、ある意味、現代詩のパターンを無意識のうちに発見している

・空海は、自分の興味を、宗教だけに制限しようと思ってもできない万能的な天才。密教だけにとどまらず、他のものも別のものと思わずに、ワッと取り入れ、自分の思想体系を構築した。その体系の中には、他の思想がみな入ってくる

・ゲーテの一番の特徴は、非常に豊富でいくらでも詩が湧き出てくること。無理やりにひねり出したものではなく、湧くように出てくる。80歳になって恋愛したのは、すべて生命力のあらわれ

・天才というのは、どうしても自分を決まった軌道に乗せられない。悪く言えば、自我が強すぎることになる

・空海は全部やった。あとの人が先へ進める余地がない。あとの発展では、鎌倉仏教の法然、親鸞、道元、日蓮が出た最澄の比叡山のほうが盛ん。空海は、東寺にせよ、高野山にしろ、先にがっちりした体系をこしらえてしまった

・ニュートンは自分の体系をこしらえる。古くは、アリストテレスもそう。アインシュタインだって、一般相対論というとんでもない立派なものをつくると、それで完成してしまい、手をつけられなくなる。すると、研究する人が少なくなる

・空海が日本に持ってきた曼荼羅は金剛界曼荼羅胎蔵界曼荼羅。この二つの曼荼羅は、金剛界が認識あるいは知恵、胎蔵界が実在。認識と存在が両方いっしょに並んでいるのは実に見事なシステム

・空海は非常にヴァイタリティを持っているから、欲望を昇華、向上させなければならない。宗教的修行、学問的活動、芸術的活動、土木技師的なことまでやる。それらのすべてを意欲的にやらずにはおられない

・朝廷としては、空海を国家的宗教の指導者として、もっと利用したい。しかし、空海の希望は京都の東寺にいるより、高野山へ行って、自分を慕う弟子だけ集めて、静かに修行したい。本来的に体制べったりになれない気持ちがあるので、俗物にならずにすんだ

・啄木が落ちぶれて帰るのは失意の美感。失意がかえって自己陶酔を強める。文学はかならず一種のペシミズムを持っている

・芸術家、学者など、矛盾が唯一の根源となり、その中から天才が生まれてくる

・啄木は歌にとりつかれた。一つの問題を徹底的に考えぬいていくと、取り憑かれた状態になっていく

・ニュートンは、神の志、意思、知恵、神の力を求め、再現しようとしている人であることは明らか

・ニュートンは、生きている間から崇拝者が出て、死んでも二百年間、物理の教祖の地位にあるが、直接の弟子はいなかった。彼は非常に孤独な人であった

・人から何かをやらされて、他律的に学ぶのではなく、若いうちに、自律的に、独学的にやる時期を通らなければいけない

・ニュートンは万能の人。天才の素質は本来もっているが、幼児期の悪い環境のために、なかなか発現できない。それが、自分のものを確保したい、のちになって、自分の業績というところへいく

・相当古い時代の西洋の学者には、ニュートンと同じように、独身という人は割合多い。なにか宗教者に近いところがあった

・ニュートンは理性ばかりの人のように言われてきたけれど、非常にエモーショナルな人。それが、怒りや恐れなど、いろんな形であらわれる

・天才は精神的ヴァイタリティが強い。ということは、それを自分でコントロールする力が必要になる。コントロールの側を意識的につかんでいたのがデカルト

・どこかいやらしいところがあるとか、人に迷惑をかけても平気であるということが天才に共通している

・天才は、自己顕示欲が非常に強い。ないように見えても、あるいは丸出しであっても、本質的に自己顕示性が強い



凡才が天才を評する本は数多くありますが、天才が天才を評する本は稀です。天才である湯川秀樹が天才をどう感じていたかがよくわかります。

この本を読めば、真の天才の姿に触れることができます。天才に触れると、自分の至らなさを知り、謙虚になれます。これこそが読書の醍醐味のように思います。

[ 2011/02/09 08:24 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)
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