とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『幸福について-人生論』ショーペンハウアー

幸福について―人生論 (新潮文庫)幸福について―人生論 (新潮文庫)
(1958/10)
ショーペンハウアー

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ショーペンハウアーは「ショーペンハウアーの言葉」に次ぎ2冊目です。ショーペンハウアーは、西洋の哲学者には珍しく、東洋的な思想を持ちあわせているので、日本人の心にも響きます。

この本は、1788年生まれのショーペンハウアーが63歳のときの晩年の作です。少々難解でしたが、内容を吟味しながら、読んでいけば、十分に理解することができると思います。

1958年に出版された本ですが、版を重ねて、ずっと売れているロングセラーです。この本の中で、勉強になった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・健康はいっさいの外部的な財宝にまさる。健康な乞食は病める国王よりも幸福である

・才知に富む人間は、独りぼっちになっても、自分の持つ思想や想像に慰められる。愚鈍な人間は、社交、芝居、遠足、娯楽と目先が変わっても退屈する

・金持ちに不幸な思いをしている人が多いのは、精神的な仕事をなしうる興味を持ちあわせていないから

人としてのあり方のほうが、人の有するものに比して、幸福に寄与することが大である。にもかかわらず、人間は精神的な教養を積むよりも、富を積むほうに千万倍の努力をささげている

・美は事前に人の歓心を買う公開の推薦状である

・人間の幸福に対する二大敵手が苦痛と退屈。困苦と欠乏が苦痛を生じ、安全と余裕が退屈を生ずる

・内面の空虚から生ずるのが、社交や娯楽や遊興や奢侈を求める心。これらのために多くの人が浪費に走り、やがて貧困に落ちる。こうした貧困を最も安全に防ぐ道は、内面の富、つまり精神の富である

・才知に富む人間は、安静と時間の余裕を求め、隠遁閉居を好み、孤独をすら選ぶ

・自分自身にとって、一番よいもの、一番大事なものは自分自身であり、一番良いこと、一番大事なことをしてくれるのも自分自身である。享楽の源泉が自分自身の内に得られれば得られるほど、幸福になる

対外的な利益を得るために、対内的な損失を招く。すなわち、栄華、栄達、豪奢、尊称、名誉のために自己の安静と余暇と独立とを犠牲にする。愚の骨頂である

・人間は三つの享楽の中から自己に適したものを選ぶ。第一は再生力の享楽(飲食、休息、睡眠)。第二は刺激感性の享楽(舞踏、乗馬、狩猟、運動競技)。第三は精神的感受性の享楽(考察、観賞、詩作、絵画彫刻、音楽、読書、瞑想、発明、哲学的思索)

・煩悩に動かされなければ、退屈で味気ない。煩悩に動かされれば、苦痛になる。それ故、有り余る知性を与えられた人だけが、幸福な人間になる

・現実生活の他に営むべき知的生活には、下は昆虫、鉱物、貨幣をただ蒐集して記録する仕事から、上は文学や哲学の最も優れた業績に至るまで、無数の段階がある。こうした知的生活は退屈によって生ずる有害な結果を予防する

・天才と呼ばれる精神的卓越の極致にある人間は、何ものにも妨げられずに自己を相手とし、自己の思想と作品が痛切な欲求となり、孤独を歓迎し、自由な余暇を無上の財宝とし、それ以外の一切はむしろ無用なもの、厄介なものと考える

精神の足跡を全人類の上に刻みつけることを使命とするとき、幸不幸は唯一つしかない。それは、自己の素質を完全に伸ばして、自己の作品ないし事業を完成することができるか、できないかということ。それ以外は自分にとって取るに足らぬことばかりである

・俗物には俗物の虚栄心の享楽がある。富か位階か、権威や威力などで他人を凌ぎ、それによって他人に尊敬されること。俗物が求める相手は、精神的欲望を満足させてくれる人でなく、肉体的欲望を叶えてくれる人

・富や権勢こそ唯一の真の美点と見て、その点で傑出したいと願っている人間は、人物評価や尊敬をもっぱら富や権勢によって測ろうとする

・医薬は病人のみ、毛皮は冬季のみに役立つもので、唯一つの欲望を満足させるだけ。金銭だけは具体的に一つの欲望だけに合致するものでなく、欲望全般に合致する。金銭を愛することは自然の勢である

・官職、称号、勲章はもとより、富、学問、芸術までが、他人からの尊敬を少しでも大きくすることが努力の究極の目的になっている。これこそ人間の愚かさを証明するもの

・誇りの中でも最も安っぽいのは民族的な誇り。民族的な誇りのこびりついた人間には、誇るに足る個人の特性が不足している。個人の特性が不足していなければ、何もわざわざ自分を含めた幾百万の人間が共通に具えている要素に訴えるはずがない

・人間精神の最高級の業績は、冷淡に迎えられ、長い間冷遇される。やがて高級な精神の持主が近づいてきて、この功績に共鳴し、声価を顕揚する。この経路は、人間誰しも自分と同質的な事物しか理解し、評価することができないことを一貫して教える

・名声は得るのは難しいが、維持するのはやさしい。この点で名声は名誉と反対である。名誉は一度でもくだらぬ行為をすれば失われて二度と回復できなくなる

・アリストテレスが表明した「賢者は快楽を求めず、苦痛なきを求める」という命題が、処世哲学の最高原則だと考える

・すべて物事を局限するのが幸福になるゆえん。我々の限界、活動範囲、接触範囲が狭ければ、それだけ我々は幸福であり、それが広ければ、苦しめられ、不安な気持ちにさせられる

・自己に満足し、自己がすべてであると言うことができれば、それこそ幸福にとって最も好ましい性質。幸福は自己を愛する人のものである

・「自らを低くして人に交わる」意味は理解できるが、自己の本性の恥ずべき部分を介さなければ付き合えないような仲間は、避けたい気持ちになる



日本の江戸時代末期に、ショーペンハウアーは幸福について真剣に考えていました。それを現代の日本人が読んでも、少しも古くないと思えるのが驚きです。

この本は、古今東西、老若男女の幸福を考える上で、欠かせない古典の書だと思います。
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