リチャード・フロリダ氏の本は、「
クリエイティブ資本論」に次ぎ、2冊目です。
この都市経済論では、資本論に比べ、より具体的に、クリエイティブな人々が、どんな都市に住みたがるか、都市にとってどんな効果がもたらされるかということに言及されています。
アメリカで起きている事実が、着々と日本でも起きてきているように思います。これから、
魅力ある都市とはどんなところか、この本によって、知ることができます。
この本の中で、興味深かった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。
・クリエイティビティの新しい地理学とその経済効果を理解する鍵は「経済成長の3つのT」。
技術(テクノロジー)、
才能(タレント)、
寛容(トレランス)の3つの概念である
・才能は
多様性指標の高い場所に強く結びついている。アーティスト、ミュージシャン、ゲイ、その他のクリエイティブ・クラスの人々は、一般的に、開放的で多様性のある地域を好む
・「イノベーション」と「ハイテク産業」が「
クリエイティブ・クラス」と「才能」の立地に深く結びついている。ハイテク地域の上位のほとんどが「クリエイティブ・クラス地域」の上位に入っている
・「移入者(移民)」の多さは、「ハイテク産業」と関係している。外国生まれ人口の割合とハイテク成功との間の相関は極めて高い
・ボヘミアン(作家、デザイナー、ミュージシャン、俳優、ディレクター、画家、彫刻家、写真家、ダンサーなど)指数が高い都市は、「ハイテク」基盤だけでなく、人口成長、
雇用成長も高い都市
・
クリエイティブ経済では、環境の質は、才能を引き付ける前提条件として重要。環境は、経済的競争力、生活の質(QOL)、才能の吸引力を高める
・
オールド経済では、企業の立地決定こそが地域経済の原動力であり、人間の立地決定は、企業の立地決定に従うものであった。クリエイティブ経済の到来は、この立地を劇的に転換する
・若いクリエイティブ・ワーカーは、地下鉄やLRTといった大量公共交通機関を、より広い範囲の地域へ行く
移動交通手段として好んでいる。それらがあるところを居住・就業地を選ぶ上で重要と見ている
・水辺は、
高アメニティ地域にとって共通の重要要素。もっとも成功しているハイテク都市のうち、いくつかは
水系の近くに立地し、水系の資源をうまく戦略的に利用し、環境の質を高め、レクリエーションや交通の機会を増やしている
・大学は、クリエイティブ経済を構成するインフラ。才能を生みだし、生かすメカニズムを提供する母体。イノベーションを生み出すだけでなく、創造の力によって、経済を増幅させる
・日本の社会は、ブルーカラーのクリエイティビティを引き出すシステムは最高だが、ホワイトカラーのクリエイティビティを引き出せない
・現在のアメリカは、
ワーキングクラス(3300万人)クリエイティブクラス(3800万人)
サービスクラス(5500万人)。クリエイティブクラスが多い都市がサービスクラスも多く、経済的にも成長している
・全米で急激な経済成長を記録する都市のほとんどが、数万人~30万人の中小都市であり、巨大な大学を抱え、大学関連人口比率が数割に達し、
教育の外部効果が非常に発揮されている都市
・21世紀の経済社会は、「A.少数の富裕層とそれに隷属する低次サービス業就業者からなる二極分化社会」「B.多くの人がクリエイティブクラスになり、機械化省力化の恩恵を受ける人間活用社会」の可能性。Bへの誘導は、社会を「
大学習社会」にする必要がある
リチャード・フロリダ氏が言う、これから伸びる都市は、「環境の質」「大学」「芸術家クリエイター」が大きな要因になります。
日本は、官僚社会の弊害で、いまだに東京一極集中が進み、遅れた社会構造になっています。しかし、著者が言うところの芽は出てきていると思います。長いスパンで見た、伸びる都市は、日本でも同じになるような気がします。