とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『社会脳・人生のカギをにぎるもの』岡田尊司

社会脳 人生のカギをにぎるもの (PHP新書)社会脳 人生のカギをにぎるもの (PHP新書)
(2007/07/14)
岡田 尊司

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著者は、東大哲学科中退、京大医学部卒の精神科医です。小笠原慧のペンネームで、横溝正史賞を受賞した小説家でもあります。

この書のはじめに、著者は「近年の研究で、社会性の能力が、知的能力以上に、人生の幸福度や社会的成功を左右していることが明らかとなってきた」と書かれています。

学力以上に大切な社会性の能力とは?社会に通用する人間とは?その社会性を司る脳や遺伝子はどうなっているのか?

こういったことが本書のテーマです。今回、読み終えて、勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人間には、さまざまな情動があるが、それは概ね、怒り、恐怖、嫌悪、驚き、喜び、悲しみの6つに分けられる。6つの基本情動のうち4つまでがネガティブなものであるあたりに、人間がいかに否定的な反応に囚われやすい存在かわかる

・怒りは、自己愛を傷つけられることと深い関係がある。自己愛的怒りと呼ばれるものは、自己愛の尊厳を守るために、しばしば命さえも犠牲にする

・社会性の基本は、他の個体に対して適切な距離をとることと、互恵的な関係(毛づくろいに代表される)をもつことにある。適切な距離と互恵的に関わることができれば、社会生活はスムーズにいく。そのどちらかを侵害すると、社会での摩擦や孤立を招く

・社会性を成り立たせる二つの要素「距離をとるシステム」と「触れ合いを求めるシステム」、そして、その「両者のバランスをとるシステム」の三者が、社会脳を構成している

・リーダーシップを取ったり、交渉や折衝をしたり、仲裁をするといった、高度な社会的行為においては、二者関係以上の三者関係を扱う能力が必須になる。多対多の関係は、社会的情報量も多く、流動的でどんどん変化するため、対応しきれなくなる

・社会的な知恵がある者とない者の決定的な違いは、表面に現れている言葉や態度の裏にあるものを見通すことができるかどうか。知恵の乏しい者はうわべだけに反応する。知恵ある者は背後の意味を見抜く

・競争と協力という葛藤状態におかれたがゆえに、人間は欺くことと信頼することという二面性を抱えた複雑な心を発達させた

・成功した人に共通する点は、目標をもち、たゆまぬ努力をしたことである。超俗的な生き方をした人でさえそうである。一角の人物と凡人の差は、大部分、目的意識と努力の差に還元できる

・創造性と注意力とは、両立が難しい。不注意な傾向は、新しいものに対する好奇心と関連がある。芸術家や独創的な研究の科学者の子供時代を調べると、大抵落ち着きのない不注意な子どもだったことがわかる

・話がすぐに脱線する人がいる。最初話していた肝心な問題から、話せば話すほど逸れてしまう。そうした傾向を持つ人は、話だけでなく、仕事や生き方の面でも、しばしば同様の行動を見せる

・報酬系は、現在の行為の満足に関わるだけでなく、将来の「報酬予測」にも関わることで、意欲を左右する。意欲の源泉とは、将来予測される報酬だからである

・無気力は、その人の脳が、報酬予測を切り下げることによって起きる。つまり、努力しても報われない、無駄だと思い込んでしまう。それは何らかの躓きによって自信を打ち砕かれる体験より生じる。そうなると、チャレンジに消極的になったり臆病になったりする

・長期間恵まれた状況にいると、心の安定や判断力の低下を引き起こし、長期的な利益よりも、目先の誘惑に惑わされやすくなる。そのため、転落の道を歩むことになる

・人間の社会脳はヒエラルキー型の社会集団を前提として発達してきた。人間は本性として、集団内ヒエラルキーをつくろうとする。霊長類以来の遺産。ヒエラルキー型社会を乗り切ることができるかどうかという局面に我々はいる

・競争的攻撃性や防衛的攻撃性は、生きていくのに不可欠な攻撃性。それに対して侵略的攻撃性は、集団内のランキング争いとも関係なく、生存が脅かされる状況でもないのに、攻撃対象の命を奪う過剰な攻撃。フェアなルールもなく、高揚や興奮を伴うだけ

・互いに毛づくろいする小集団のサイズは、人間において縮まり始めている。親密で温もりのある関係は、狭くなり、一人きりで食べ、遊び、生きていくことが、当たり前になりつつある



著者は、この本の中で、「摩擦」と「孤独」が一方的に走らないように、上手に「舵とり」することが社会性であると言われています。

日本人には、昔から「ふれあい派」が多く存在していたように思います。最近では、その反動なのか、「孤独派」が急増しているように思います。

人を「ふれあい派」「孤独派」という軸で観察すると、人との付き合い方も判断しやすいのではないでしょうか。

私自身は、「孤独70%ふれあい30%」くらいの人です。「かまわないでほしいのですが、ときには温もりもほしい」という、少しわがままなタイプのように感じます。

この本は、そういうことを判断するものではないですが、人間社会を生きていくのに、身につけておくと役に立つことが書かれている本だと思います。
[ 2010/07/16 07:12 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)
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