とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『僕は人生についてこんなふうに考えている』浅田次郎

僕は人生についてこんなふうに考えている (新潮文庫)僕は人生についてこんなふうに考えている (新潮文庫)
(2006/04)
浅田 次郎

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NHKのBSで1月より放送されている「蒼穹の昴」を毎週欠かさず見ています。中国の清朝末期の難しい時代を大きなスケールで描いた、浅田次郎さんに感服しております。

しかも、「蒼穹の昴」は、「鉄道員(ぽっぽや)」で直木賞をとる前の作品です。このエネルギッシュな創作意欲が、どこから湧いていたのか興味と関心がありました。

氏の人生観について書いたものがないのかを探していたら、この本を見つけました。

早速、読んでみると、そこに著者の固い意志や強い性格が数多く見受けられ、創作意欲の源を知ることができました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・根底に、知識と努力があった上で初めて、勘が閃くというのは、人生すべてに共通すること

・「食えない苦労」と「生命の危機」の二つの心配さえなければ、誰でも「幸福な人間」と言うことができる

・労働が善行で、遊びが悪行だとする意識を改革しなければ、幸福の実感は永遠にわれわれのものにならない

・襲いかかった不幸の有様をどのように記憶するのか、幸福がもたらされた原因と理由をどのように分析するのか、これがまことの学習であろう

・金で買えないものがあるってことを、貧乏人はよく知っている。それが貧乏人の有難さというやつ

・善人ばかりと付き合って退屈するか、悪党と付き合って泣き笑いするか、どっちが得かは、棺桶に片足つっこんでみなければわかるまい

・メスは受胎したとたんに愛したことも愛されたことも忘れて母になる。そうでなければ種を維持することはできない。逆にオスは愛し愛されることにこだわり続ける。これもまた、そうでなければ種を維持することができない

・世の中には自分のことを差し置いて、他人の心配ばかりする人間が多すぎる。自分のケツも拭けないやつが、どうして会社のためだとか、公共のためだとかに走り回れるのか。自分のことがしっかりしていれば、世の中良くなるに決まっている

・底辺に行けば行くほど人間は明るくなる。逆に上に行けば行くほど人間は暗くなる。永遠のお坊ちゃまみたいな奴がいちばん暗い。本当の笑いはハイソサイエティの社会の中にない。涙も知らないから、笑いも知らない

・死んでもいいというのと、死にたいというのは大違いだ。最高の男と最低の男の違いだ。一緒くたにしてはいけない

・人生の経験談を見聞きしていると、必ず共通しているのが、いちどハネた後にやってくる「冬の時代」で、この挫折を克服した者が真の成功を勝ちうるという図式がある

ドンブリ勘定でやっているヤツは、勝負事に絶対に負ける。セコイくらいの金銭感覚を持っているくらいでちょうどいい

・競馬でも麻雀でも、負けるヤツを見ているとわかる。負けている人はグチり始める。悪態をついた時点で負け

成功の感覚は「これは行けるかもしれないぞ」である。失敗の感覚は「もうダメだ」である。勝利の実感も満足に味わえぬまま劣勢に立った者は、ヤケクソになる

・土地や家に愛着なんか持ってはいけない。たかがクソたれて寝る場所である

・「力こそ正義、富こそ幸福」というアメリカ流合理主義を讃美するわけではないが、「権力は悪蓄財は不善」とする日本人のモラルにも異論がある。サクセスストーリーを思い描く権利を奪われた日本の子らは、長じて悪い権力者になり、不善を働きつつ蓄財をなす

・「貧乏は罪悪である」というのは、かなり的を射ている。私はかつて「赤貧洗うが如き」などという立派な貧乏人に会ったことがない

・貧乏人は犬や猫と同じで、与えられたものを食うしかない。まずくても、腹をこわしそうな気がしても、生きるためには目の前のものを食うしかない。ガキの時分からそういう暮しをしていると、習い性になって、他人の言いつけに逆らうことを忘れる

・神頼みとは、「自分はこうします。願わくば照覧あれかし」と自分の心に誓いながら、神に語りかけること。神仏に祈りを捧げるには、「~にしてください」ではなく「~になります」と言うこと

・俺がおまじないをしてやる。「忘れろ、忘れろ、忘れろ」。苦しみは片っ端から忘れて行かないと、人間は生きてはいけない。全部忘れたら、希望が残る

・真の努力をした者は己の努力の至らなさを知る。だからその結果、どれほどの名望を得ようともそれを容易に信じようとはしない。自分を取り巻く人々のすべてが、自分より優れた者と考えてしまう

・個性は経験によって獲得される。平穏無事な人生を歩んできた人は、その性格まで平穏無事、没個性的。波乱万丈の人生を送ってきた人は、喜怒哀楽の残滓を体内に蓄積して個性的。しかし、個性と能力は別物だから、人生経験が社会評価につながるとは限らない



著者の知識の量と努力する時間が尋常でないように感じました。何かと常に闘っているようにも思います。しかも、勝負に出ることができる、勝負師的な勇気も持ちあわせられています。

精一杯やるだけやったら、後は運に委ねる潔さ。これも著者の創作活動に欠かせない要素ではないでしょうか。

クリエイティブな仕事に携わる人に、おすすめできる1冊です。
[ 2010/06/25 07:27 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)
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