とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『思いやりはお金に換算できる!?』有路昌彦

思いやりはお金に換算できる!? (講談社プラスアルファ新書)思いやりはお金に換算できる!? (講談社プラスアルファ新書)
(2008/06/20)
有路 昌彦

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著者は、環境経済学生物資源経済学の専門家です。養殖マグロで有名な近畿大学水産研究所の客員准教授も兼任されています。

この本では、環境経済学を駆使して、「お金に換算できない」と考えられてきたもの(思いやり、景観、自然、快適、安全など)を、お金に換算して、その価値を知らしめようとされています。

持続可能社会をつくっていくための新しい学問である環境経済学を学ぶのに、役に立つ本です。

この本を読んで、面白かった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人がお金を払うのは、欲望が満たされてヤッホーな気持ちになるためか、トホホな気持ちを癒したり、その原因を取り除くためのどちらか

・目の前の利益追求は必ずしも「善」ではない。経済学も「自分のことだけでなく、周囲に与える影響も計算に入れる」「今だけでなく、これから先のことも計算に入れる」と考えるようになった。環境経済学は今や、経済学の主流になりつつある

エコ経(環境経済学)とは、「人間が長く快適に生き、暮らし続けられる条件を整え、しかも利益を上げるための経済学」。エコ経が基準にしているのは、持続可能性

・自然資本は増やして使えば、ずっとある。やりようによっては、ものすごく増える。地球は、「元本」に手をつけない限り、長く、豊かに「利子」を生んでくれる

・数年で元も子もなくなって、共倒れになるような荒っぽい金使いはやめて、暮らしのベースを安心おトクな資産運用に切り替え、長く利子生活を楽しみましょうというのが、「持続可能性」

・材料を買い叩く、人件費をケチる、環境やまわりに配慮しない、無理に売りつけるなどの企業行動は、確かに数年は利潤が上がるが、最終的に地域の雇用も環境も持続可能でなくなってしまう

・みんなが少しずつまわりを思いやり、無理難題を言わないようにすれば、いろいろなものが持続可能になり、いい循環で回り始め、結局は儲かる

・人間はものごとがラクだったり楽しくなければ長続きしない。どんなに素敵なシステムをつくっても、長続きしなければ意味がない

・BSE感染するリスクを1としたら、スズメバチに刺されて死ぬリスクはその1000倍、お餅をのどに詰まらせて死ぬリスクは44,000倍、入浴中の溺死は38万倍。BSE感染の全頭検査にかけた費用が4000億円。1年に1人も死なないリスクに大切なお金を使った

・4000億円あったら、経済難にある13万世帯に300万円を給付できる。その5%の200億円で、高度不妊治療が健康保険で受けられるようになる。そうなれば、少子高齢化のこの国に2万人近い子供が増える

・リスクを小さくするにはそんなにお金がかからないが、ゼロにするにはものすごいお金がかかる。にもかかわらず、リスクはゼロにすると考えるのがゼロリスク症候群の考え方。この考え方に従えば対策費は無限大になる

・何か問題が起きたとき、情報が偏っていると、どう行動したらいいかわからなくなる。「このリスクの本当の大きさはどのくらいだろう、社会全体にあるリスクの中では、どのくらいの位置か」という目で考え直すことが大事

・みんなが魚をさばく技術を身につければ、ロットが小さくて流通に乗らなかった魚をおいしく食べられるようになる。浜で破棄される魚が無駄にならなくなる

・田んぼを昔の田んぼに戻したら、ドジョウ、ウナギも獲れるし、セリなど食用にできる野草も生えるし、シジミも獲れるようになる。田んぼそのものがおトクになる

・ボランティアの人たちは、やがて息切れする。余力や時間を注ぎ込み、タダで働くと、人の「時間資源」はなくなり、最後は対価活動に移る。実際に働いた人たちがお金をもらうシステムは長続きする。持続社会ではボランティアをしてはいけない

・主婦業をアメリカではホームメーカーと言う。主婦業は会社での仕事と同様に経済的に重要な役割を果たしている。主婦は社会コストのかなりの部分を肩代わりしている。主婦は社会コストを減らす役割を担っている



この本を読むと、何でも完璧を目指したり、何でも一方に偏ったり、何でも神経質になったりすると、社会的に大きな無駄が生じることがよくわかります。

とにかく、ラクして、楽しく長続きすること。これが環境経済学でいう持続可能社会の根本のようです。

私たちのコミュニティーも、企業も、国家も無駄なことばかりしています。その無駄を金銭価値に置き換えて判断し、上手に取り除くことが、環境問題より、先にしなければいけないことです。そのモノサシとして、環境経済学が役に立つように思います。
[ 2010/06/06 08:09 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)
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