とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『「温暖化」がカネになる』北村慶

「温暖化」がカネになる「温暖化」がカネになる
(2007/09/15)
北村 慶

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著者の「貧乏人のデイトレ金持ちのインベストメント」という投資の本を、3年ほど前に読みました。北村慶氏は、他にも、投資ファンドや金融に関する著書を多く出されています。

この本は、環境関係のコーナーで見つけ、ちょっと意外だったので、手に取りました。

著者が投資に携わっておられる関係からか、ちょっと不真面目に思えるようなタイトルになっていますが、内容はいたって真面目です。

環境とお金、相反するように思えることを、統合して論じている素晴らしい書だと思います。著者の地球温暖化の知識と排出権取引の知識が、両方とも豊富で、濃い内容になっており、面白く読み進んでいくことができました。

また、不思議に感じていた排出権取引制度に関して、この本で、しっかり勉強させてもらうことができました。

自分自身、非常に勉強になったと思える箇所が20ほどありました。これらを紹介したいと思います。


・「温室効果」により、地球と太陽の距離からすれば氷点下18℃であるはずの地表の温度が、32℃暖められ、平均気温14℃という快適な水準に保たれている

IPCC(気候変動に関する政府間パネル・国連機関が設立した政府間機構)は、人為的な温室効果ガスが温暖化の原因である確率は90%を超えると結論付けた

・地球の平均気温の上昇を2℃程度に抑えることができるか、3℃以上となるかによって、人類への深刻度が大きく異なる

・排出量の発生源は、2010年の世界排出量全体の46%が発展途上国で占めるようになる

・排出権取引を可能にする京都議定書の「京都メカニズム」と呼ばれる仕組みこそが、地球環境問題と金儲けを繋ぐ役割をしている

・地球温暖化ガスを削減するという崇高な目標と、金銭を対価とした「京都クレジット」=「排出権」取引という経済的行為が結びつくことになった

・中国は、「排出権の世界一の原産国」であり、政府自身が「わが国は、排出権の世界最大の輸出国になる」と宣言し、「何もしなくても空からお金が降ってくる」と公言している

・2007年8月現在、「排出権」は1CO2トンあたり、およそ20ユーロ(約3000円)前後で取引されている

・日本政府は、2008年から2012年までの5年間、毎年2000万トンの排出権を買う必要がある。京都議定書を守るために、毎年600億円以上の税金が使われることになる

・1990年より、日本の温室効果ガス排出量の半分弱を占める「産業(工場等)分野」だけが排出量を減らしており、それ以外の「運輸分野」「一般業務分野」「家庭分野」はいずれも2桁台の大きな伸びを示している

日本のエネルギー効率は欧米の2倍、中国の8倍と言われ、「日本政府が他国に譲歩しすぎた」「削減目標が厳しすぎる」という意見に、他国も同情的

・日本の排出権購入が必至の情勢で、最後は金で解決すると見られ、ヘッジファンドの敏腕マネージャーたちが、排出権への投資に注目している

・日本がEU域内のみ有効の「EU域内排出権(EUアローワンス)」を購入しても京都議定書上の削減効果は得られない。「京都議定書排出権(CER等)」を取得しなければならない

・石油価格と排出権価格との関係、降水量と排出権価格との関係、気温と排出権価格との関係により、価格の上昇が指摘されている

日本のCO2削減計画は原発頼み。植林によるCO2吸収分も削減量にカウントできるのに、林業軽視のツケが回っている

・20011年・2012年頃になって、15~20ユーロで取引されている排出権が80~90ユーロまで高騰する恐れがある。仮に、削減目標に対し10%未達成に終わったとすると、5兆円を超える税金を投入せざるを得なくなる

新しい経済学(地球と人類双方にとって都合の良い経済学)は以下の3つの柱を持つ
(1)経済活動の目的の変換「所得から資源へ」
(2)税制の変換「所得税・消費税から資源使用税へ」
(3)社会構造の変換「グローバル化・フラット化からリージョナル(地域)主義へ」

・人間の金儲けの欲望を利用した「排出権」制度が、温室効果ガスの総排出量の抑制に成功するか否かは、地球レベルでの壮大な実験。「金儲けで地球環境を救う」という発想

・「環境を守ろう」という掛け声だけでは人々は動かない。あるいは、動いたとしても、それだけでは地球温暖化という大きな問題は解決できない

・人類の生存と地球環境を同時に満たすための究極の方策は「人口増加権」の売買


排出権取引にヨーロッパ人の策略めいたものを感じていたのですが、この本を読むと、「金儲けの欲望を利用しないと地球は救えない」ということがわかり、彼らの知恵に一応納得しました。

しかし、日本のほとんどの人たちが、CO2削減目標と排出権取引の関係について、現在、あまり知識を持っていないように思います。お金が絡んでくることなのに、CO2削減が、経済的に議論されていないことは、ちょっとおかしく思えます。

CO2削減という崇高な精神と金儲けという現実的な欲望がどうしても結びつかないという人には、この本を是非読んでほしいと思います。

そして、金儲けという視点から、現実的な地球環境について議論が進んでいけば、もっと面白くなるのかもしれません。


[ 2009/11/22 19:03 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)
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