とは学

「・・・とは」の哲学

『人生論』武者小路実篤

人生論 (岩波新書 赤版)人生論 (岩波新書 赤版)
(1986/11)
武者小路 実篤

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本書の初版は、1938年(昭和13年)です。戦前~戦後の若者に大きな影響を与えてきた書です。

小説や水彩画での武者小路実篤の作品は、読んだり観たりした経験はありますが、エッセイは初めてです。本書には、武者小路実篤の思想や人間性が表れているように感じました。その一部をまとめてみました。



・下らない人間の、利己的欲望のために、貴き生命を無駄にするのは、惜しみてもあまりあること。今の世には、そういう仕事をしないと食えない人が多いのは残念なこと

・金を儲けるために仕事をする人がある。金が目的で一生をつぶす人がある。金をとることが仕事だと心得る傾きがある。生きるためではなく、金をとるために生きる人がある

正しい仕事は、他人に迷惑を与えない。できたら、他人に喜びを与える。また他人の生活に役立つ

・金を儲けることは悪いとは決まらない。しかし、他人を不幸にすることは悪いこと。人間が金銭を考え出したのは、はじめ便利のためだったが、それがあまりにも便利すぎるので、いろいろに発展しすぎて、ついに今日の状態になってしまった

権力争いとは、虫のいい争いで、決して両方の人格を高める争いではない。勝てば、物質上では得するが、正しく自己を生かしたとは言えない

・貧でいじける人よりは、富んで、積極的に何か人間の喜びになり、国民の生活のために働く人を賛美する。一番いけないのは、プラスのない人。欠点はあっても、長所のある人のほうがまだまし

・理想の職業というのは、その職業のために働けば働くほど、自分のためにもなり、他人のためにもなる仕事

・金を考えずに、ただ仕事のことだけを考えて、他人を損させない仕事はいくらでもある

・理性的な人間は、幾分冷静で、分別がある。過ち犯すことが少ない。礼儀を知っている。馬鹿なことはしない。それは、本能が弱いのではなく、本能をよく御しているから

・世間が怖いとか、悪口を言われるのがいやだとか、他人の思惑を恐れて、したいことも出来ない人間は、理性的な人物とは言えない。そういう人は、他人の制御を受けてやっとどうにか悪いことをしない人間で、他人さえ気づかなければいくらでも悪いことをする

・社会の大勢に支配されて、どうにかこうにか、あまり悪いこともせずに生きていく人は、人間を進歩させたり、文明に導いたりする力のほとんどない人

・道徳は、相手がもっともだと思ったとき、効が上がる。悪かったと思った時、ききめがある

・真の道徳心は、われらの生命を正しく生かすために与えられているものだから、それに従って生きる者は、自ずと人々の心を正しき処に導く力を持っている

・友情の価値は、両方が独立性を傷つけずにつき合えるという点にある。お互いに自己をいつわって仲よくなっているのだったら、その友情はお互いに害がある

・善良な愛すべき人は、国家にとって一番大事な人。その時の社会の命じるままに、善を善とし、悪を悪とし、別に大して疑いをはさまない人。金も名誉も嫌いではないが、ごく平凡な一生を送って、別に苦しみもしないで、楽しく暮らせればそれでいい人

・人間は何より生き抜くことが必要。死ぬまで生きること。生きている以上は何かする。自分の仕事を忠実に果たすのが大事

金とり仕事は、そのとった金で家族を養ったり、何か有益なことに使うならいいが、金とるそのことだけでは、人格を高めないし、叡智は深めない。また、良心を喜ばさない

・生き生きすること、学ぶことが必要であり、本当と思うことを行うことが必要

・真に自分の本心に従って生きようとした宗教家たちは乞食の生活を恐れなかった。現実にやっつけられても、乞食以上にやっつけられないことを知っていた彼らは、その生活に甘んじて、自分の行いたいことを行い、言いたいことを言った



昔も今も、賢人は人生を真剣に考えています。世間に流されずに、自分や社会を見つめています。

技術が発達していなくても、人生に関する考え方は変わりません。人生論の古典である本書を読むことは、現代人にとって、有意義なことではないでしょうか。


[ 2014/07/02 07:00 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)
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