とは学

「・・・とは」の哲学

『人類滅亡を避ける道』関野吉晴

人類滅亡を避ける道―関野吉晴対論集人類滅亡を避ける道―関野吉晴対論集
(2013/04)
関野 吉晴

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著者は、医師と大学教授を務めながら、南米の先住民を尋ねる旅を20年続けて、植村直己冒険賞を受賞した探検家です。

そのユニークな活動をされている著者が、日本の賢者9名と対談したのをまとめたのが本書です。人間とは何かを深く語り合う内容の書です。

その中から、宗教学者の山折哲雄氏、芥川賞作家の池澤直樹氏、霊長類学者の山極寿一氏、作家の島田雅彦氏との対談が、面白かったので、その4氏の主張をまとめてみました。



・「欲望の制限や抑制ということを考えるならば、まず人類が狩猟採集の段階から農耕の段階へ移行した時期のことを考え、捉え直してみることが非常に重要」(山折哲雄)

・「日本には、黒潮に乗って日本列島にたどり着いた南方系の平等社会に則った文化と、中国大陸からの氏族社会、階層社会との対立構造がいつの間にか形成されていた」(山折哲雄)

・「関心が蓄積に向かう土着農耕民に対して、移動する人たちはできるだけムダを省くから、欲望を制限する方向に向かう」(山折哲雄)

・「移動する、歩く、旅する。それは人間の限界を試すことにつながっていく。当然、移動の途中は、欲望をコントロールする知恵や工夫が働かざるを得ない。欲望を抑制していく生き方については、その知恵や工夫からも多くを学べる」(山折哲雄)

・「インドは、世界最大の民主主義国として生き残っている。その根源エネルギーは、カースト制度。社会学者は、カースト制度を、人間を不幸にするマイナスの制度と語るが、そうではない。カースト制度こそ、土着の生活から生まれた観念であり、価値観」(山折哲雄)

・「翁が童子を養い、育てる。童子は翁を尊敬して生きていく。こんな関係を大切にした文化は、世界でも日本だけ。これからの高齢社会、老人問題を考えるうえで、大事なのは、日本特有の「翁」の思想と「童子」の思想」(山折哲雄)

・「文明とは、農村ではない、絶対に都市。狭いところに人がたくさん集まって、密度が高まって、出会いが増えて、小さくすればするほど効率が上がって、面白いものがどんどん出てくる」(池澤直樹)

・「成長と拡大はどこかで行き詰まる。大量生産・大量消費とは、その外側に資源の大量搾取と廃棄物の大量蓄積がある。だから、いつまでも続かない」(池澤直樹)

・「資本の論理というのは悪辣。少人数で多くの仕事ができるようになると、多くの人に仕事を少しずつ分けたりしない。どんどん首を切って人を減らす。残った連中は首になるのが嫌だから、めちゃくちゃ働く。そうすると、その仕事が他に回らない」(池澤直樹)

・「人間の家族は、平等性や対等性を担保する「負けないためにつくられた社会の装置」だと考えられる。家族は、繁殖における平等を徹底的に保証するだけでなく、他の家族を支配したり、攻撃したりしない」(山極寿一)

・「人間は狩猟によって進化したのではない。その逆で、人間を襲う強い肉食獣から身を守り、生き延びるために、コミュニケーション能力や共同体を発達させてきた」(山極寿一)

・「人間以外に、家族と共同体を両立させた動物は一つもいない。なぜなら、家族と共同体の論理は対立するから」(山極寿一)

・「資本主義というのは、キリスト教やイスラム教よりも、より世界に浸透している「宗教」。資本主義は「拝金教」として世界で最も成功した宗教。中国でも信者が多くなっている」(島田雅彦)

・「働きながら暮らすほうが、実は楽。そして、働かずに暮らすことほどキツいことはない。ゼロ円では食っていけないし、生きがいがないと食っていけない」(島田雅彦)

・「イギリスで成功した人は、いつまでも都会で暮らさず、田舎に引っ込んでジェントルマンになる。発展の恩恵に浴した者も、発展し続けてもロクなことはないと悟り、あこぎなふるまいを反省し、この先は滅びない程度に力を抜こうとする」(島田雅彦)

・「人は、ある程度大人になって悟ってきたころに、みんな優しくなる。この「優しいおじいちゃん」になる感覚は、誰もがたどり着く先。その「おじいちゃんの哲学」は、民族レベルでも成熟度とともに発揮されてくる」(島田雅彦)



人間が滅亡しないためには、何が必要かを、それぞれの専門家が持論を述べる刺激的な対談集でした

これらに共通していることは、やはり「少欲知足」ということです。どうすれば、人間の欲を抑えることができるか、これも立派な学問なのかもしれません。


[ 2014/06/11 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)
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