とは学

「・・・とは」の哲学

『江戸しぐさに学ぶおつきあい術』山内あやり

江戸しぐさに学ぶ おつきあい術江戸しぐさに学ぶ おつきあい術
(2013/06/25)
山内あやり

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江戸しぐさに関する本を紹介するのは、越川禮子さんの「江戸の繁盛しぐさ」「暮らうるおう江戸しぐさ」に次いで3冊目です。著者は、その越川禮子さんのお弟子さんです。

江戸しぐさには、人との関係、社会との関係を円滑に保つ姿勢が詰まっています。今回は、以前紹介した「江戸しぐさ」を除いて、まとめてみました。



・「あいづちしぐさ」は、相手が話しやすい環境をつくることが第一、という意味。話させ上手こそ聞き上手。「間合いのいい相づちを心がける」こと

・「芳名覚えのしぐさ」は、本名をあえて聞かない交流のコツ。江戸の人々は、さまざまな身分や立場の人が集う場で、いきなり名前を聞くのは野暮で、自然に知る機会を待ち、誰かが呼んだその名前で話しかけた

・「のん気しぐさ」は、すべて努力をした後は、天の意思にまかせて前向きな心持ちでいましょうということ。江戸商人の心得は、一にやる気、二に根気、三にのん気、と言われた

・「世辞が言えて一人前」は、相手への心遣いを言葉にして伝えよ、という意味。世辞=大人らしいもの言い。世辞は社会人の挨拶として、円滑なお付き合いには欠かせない心配り

・「聞き耳しぐさ」は、聞き耳を立てるつもりはなくても、自然と耳に入ってきたことに対して、知らないふりをするやさしさのこと。江戸っ子は、“聞こえなかった”ことにして、すべてを胸の内におさめ、むやみに他言しなかった

・「三脱の教え」は、年齢・職業・地位など、人を肩書きという先入観で決めつけるのではなく、その人の本質を見極めよ、という教え

・「この際しぐさ」は、大火事や自然災害など、いざというときに備え、ここぞというときに臨機応変に対応すること。それは、物事の道理をわきまえ、規律をしっかりと身につけた者だからこそ逸脱できる業。型ある人の型破り

・「結界わきまえ」は、自分の立場や身の丈を把握し、人の領分まで侵してはならないという心得。他人と自分には、目に見えない境界線が引かれており、この“見えない一線”をどう守るかが、人付き合いでは重要と考えていた

・「けんかしぐさ」は、喧嘩のときの暗黙のルール。万が一手をあげるまで発展しても、頭や顔面はなどの急所をつく卑怯なやり方はしない。周囲の人は、どちらかに弱みが出たら、仲裁に入って止める。そして、必ず仲直り。仲直りすることまで含めて「けんかしぐさ」

・「へりくだりしぐさ」は、相手を立てることを第一に考えるという意味。相手に敬意を払わない人は、誰からも尊重してもらえない。相手を立てていれば、やがて自分も立ててもらえる。誇り高く自分をへりくだれる人には、自然と人は集まってくる

・「八度の契り」は、八回の約束を果たし合うほど、時間をかけて相手を見極めながら、ゆっくりと付き合いを深めていくのが好ましいという意味。本性を見せ、本音を言い合える相手は、そうそういないもの

・「刺し言葉・手斧言葉」は、決して人に言ってはならない言葉。話の腰を折るようなトゲのある言葉(「それで?」「それだけ?」など)と相手を不快にさせる断定的な言い回し(「所詮」「どうせ」など)、そして、乱暴な言葉(「うるさい!」「馬鹿!」など)のこと

・「陰り目しぐさ」は、こちらまで暗い気分になるような陰気な目つきのこと。商人が、目に力なく、沈んだ表情で店に立っていたら、お客さんは居心地も悪く、買う気も失せる。無意識の一瞬の暗い表情でも、意外に人に見られているので、気をつけろ、という教え

・「後ろつつき」は、気づかないうちに人に危険を与えている迷惑行為のこと。自分の視線が届かない後ろにこそ、細心の注意を払い、人への心遣いが必要という意味

・「朝飯前・傍楽・明日備」は、商家の一日の過ごし方。朝ご飯を食べる前に、簡単なことをこなし、仕事中は、人を楽にするために動き、夕刻になると、明日に備えるという意味

・「小意気・小奇麗・小確り」は、外見も内面も美しい「江戸小町」の条件。生き生きとして元気がよく、サッパリとした装いと身だしなみがお洒落で、凛々しい立ち居振る舞いのできる女性が憧れの対象だった

・「三つ心・六つ躾・九つ言葉・十二文・十五理で末決まる」は、江戸の段階的養育法。世間に出しても恥ずかしくない人間になるように、当時の成人年齢15歳を節目に段階を区切って育てた



法の支配が弱かった江戸時代、大都市で、人々が円滑な関係を築くには、法よりも道徳が必要でした。その大都市の道徳こそ「江戸しぐさ」です。

この「江戸しぐさ」の数々は、現代でも通用することばかりです。マナーとして、知っておけば、誰でも、素敵な人になれるのではないでしょうか。


[ 2014/05/09 07:00 ] 江戸の本 | TB(0) | CM(0)
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