とは学

「・・・とは」の哲学

『居場所としての住まい』小林秀樹

居場所としての住まい: ナワバリ学が解き明かす家族と住まいの深層居場所としての住まい: ナワバリ学が解き明かす家族と住まいの深層
(2013/07/31)
小林 秀樹

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本書の面白いところは、人間の集団には、「順位制」と「ナワバリ制」があり、これが部屋や間取りに大きく影響を与えている、という意見です。

著者は、住環境計画が専門の大学教授。時代や地域によって、部屋や間取りが大きく違ってくるとの見解です。家族と住まいに関する記述で、興味深かったところをまとめてみました。



・「ナワバリ学」とは、人々が空間をどのように領有しているかを解き明かす学問。住まいにおいては、家族の一人ひとりが、どのように自分の居場所を確保しているかを解き明かす。これを通して、家族の深層心理がみえてくる

・ナワバリとは、そこを自分の場所だと思いコントロール(支配)する空間。このような空間は、食事テーブルの席や個室という身近な範囲でも見られるし、お花見の席取りから国の領土争いといった広い範囲でも見られる

個室がない昔の住居は「順位制」、現代の個室がある住居は「ナワバリ制」に対応している。昔の住居は、家長を頂点として、家族一人ひとりの順位が明確であり、風呂に入る順番、食事をとる順番など決まっていた

・「順位制」の集団では、いちいち言葉を交わさなくても相手の様子を感じ取り、上下関係に基づくルールに従って、自然に行動することを大切にする。現代風の言葉で言えば、「空気を読む」こと

・個室のある「ナワバリ制」に求められる行動様式とは、自分の意思をしっかりと表明するとともに、相手と意見交換して合意することを重視する。というのは、「ナワバリ制」は、互いの接触を避ける仕組みだから

・犬のオシッコは、臭いによる信号の代表。臭いのある場所に侵入すれば攻撃するぞというメッセージ。人々も領域展示物(門、塀、表札、ポスターなど)をうまく利用して、ナワバリを防衛または開放する

・人間の場合、儀式ではなく「作法」によって、ナワバリ防衛の攻撃衝動を抑え、温かく受け入れる。ドアをノックするのも、他人のナワバリに侵入する際の作法。上座と下座は、互いの順位を確認し、無用な争いを避ける作法

・ナワバリには、個人のナワバリだけでなく、集団のナワバリがある、家は、家族のナワバリ。村は、村落共同体のナワバリ。会社や学校、国や都市も、集団のナワバリの例

・パーソナライゼーションとは、人間による空間の「臭いづけ」。部屋に、お気に入りのカーテンや家具をしつらえ、住宅まわりに、植木鉢を置いたりする行為

・母主導型が、近年増加している。昔の家父長中心の家族の住まいが、そのまま母親中心に代わったイメージが強い。現代の都市住宅では、父親のナワバリが希薄になってきている

日本の家族は、封建家族(父主導型)、温情家族(母主導型)、友愛家族(母子が友達のように振る舞う家族)の三つが混ざり合っている

・住宅市場では、子供がいない夫婦でも、資金に余裕があれば3LDKを購入しようとする。そのほうが、中古になっても売りやすいから。このように、住まいは3LDKの定型に収斂していく。その結果、個人の生活の実態とは必ずしも一致していない

・マンションの標準的な間取りにある中廊下は、昭和初期に登場した。各部屋の独立性を高め、家族のプライバシーを守る先進的な住まいであり、知識人や建築家は、封建家族からの転換という社会規範をそこに重ね、好ましい存在として推奨した

・ここ十年ほどで、「居間中心型」と呼ぶ間取りが急速に増えている。これは中廊下形式からの転換をはかるもの。親が、家族の触れ合いを求めて、意図的にこの間取りを選択している

・居間中心型は、個室群でも個室のない住まいでもなく、中廊下を見直した「家族が自然に出会う間取り」。しかも、個室を否定しているわけではない。それを肯定した上で、家族の触れ合いを求めた間取り

これからの住まいの条件は、「夫婦寝室は最低8畳」「子供部屋は間仕切りタイプ」「部屋の配置は居間中心型(玄関から居間に入って個室に)」「食事室(LD)とつながる余裕室の確保」」「裏のバルコニー(ゴミの一時置き場)」



家の間取りは、家族の形態や性質によっても異なってきます。そこを考えた理想的な空間であれば、狭くても問題ないのかもしれません。

住宅を買う前に、立地、環境、広さ、設備だけでなく、間取りについても学んでおくことが、将来的な満足感を高めてくれるように思いました。



[ 2014/04/04 07:00 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)
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