とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『骨董の言葉・一〇七七の用語と五二の成句』伊藤順一

骨董の言葉―一〇七七の用語と五二の成句骨董の言葉―一〇七七の用語と五二の成句
(2013/12)
伊藤 順一

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骨董や古美術の業界用語には、「隠語」が多いとされています。価値も値段も判断しづらく、騙し騙されが日常化されている世界です。

こういう世界で、われわれ日本人は、伝統的に、どんな言葉を使ってきたのか、興味の湧くところです。それらを少しだけですが、まとめてみました。



・「初(うぶ)」 今まで市場や店頭に出たことがなく、他人の眼に触れていない骨董・古美術品。また、新しい出土品や将来品なども、初、初いという

・「下手物(げてもの)」 大量に生産される民衆用の日用雑器の類を下手物と称する。中には質の高い工芸美を有するものがあり、柳宗悦はこれを「用の美」と言った

・「残欠(ざんけつ)」 欠け残ったもの。仏教美術において、仏像本体はないのに、その手だけ、蓮弁の一ひらなど残ったものを残欠と言う。日本人はその残欠から仏全体の優美な姿を思い、残欠の美として観賞する

・「時代付け」 新物を時代のある真物に見せるために施す手法のこと。古い時代の箱を合わせたり、漆や金属の表面に手を入れ、自然の手擦れのように見せたり、薬品で錆を作ったり、書画を茶湯に浸し、古い紙に見せたりすること

・「3D(スリーデー)」 いったんコレクターの手に納まった美術品が再び市場に出てくるのは十数年以上経過するものだが、例外は、持ち主が死亡(Death)、離婚(Divorce)、借金の形(Debt)の三つのケースで、これをオークション用語で3Dという

・「せどり」 同業者の中間に立って、注文品や探求品を聞き出し、これを捜して売買の取次をして口銭を稼ぐこと、また、それを業とする人。また、地方や新規開店の古書店から探求書などを抜き取り、他店に持ち込んでサヤを稼ぐこと、また、それを業とする人

・「飛し(とばし)」 紙本の書画を二枚に剥がし、二枚の真筆を作ること。下側の一枚は色も薄く、落款も不鮮明であるが、これを元箱に入れて売る悪徳商法の一つ。近年は、経済的損失を他に転嫁して隠蔽する手法を「とばし」と称している

・「ボツ」 陶磁器の焼成後に表面に生じた染みのこと

・「飽きやすの惚れやす」 手に入れた物をすぐに飽きてしまう人に限って、物にすぐ惚れてしまう、いつまで経っても、この繰り返しをやっている人を揶揄していう言葉

・「金惜しみ」 真正な物でも、その値段は高額すぎて不合理だと考え、とにかく安く掘り出しだけを狙い、結果として贋物を手にしてしまうこと(人)をいう

・「奇貨居くべし(きかおくべし)」 珍しい品物は機会を逃さず買っておけば後に利益になる。好機を逸してはならないというたとえ

・「玉を懐いて罪あり」 身分不相応なものを持つと、とかく災いを招きやすいもの

・「素人十倍玄人百倍」 素人は相場の十分の一くらいの値段で、玄人なら百分の一くらいの値段でよい物を手に入れたとき、それぐらいを掘り出しという。骨董業界の掘り出しの目安

・「話(ストーリー)で物を買うな」 コレクターの琴線に触れるような物語(出所や来歴、逸話など)が付いている物には往々にして贋物や安物がある。骨董買いはストーリーで買うのではなく、物そのものの価値で買うものだという骨董買いの基本をいった言葉

・「遠くのものには手を出すな」 よくわからないものは買わないほうがよい。株式投資などでも使われる言葉

・「二度目の見直し三度目の正直」 一度見ただけでは不確実、二度目見たときに見直すことがあり、三度目見てはじめて正確に観察(判断)できるもの

・「一目にて見るは二目にて見るに如かず」 個人の見解よりも多数の人の見解のほうが正しい

・「貧乏光り」 木地や金属製の骨董・古美術品を磨きすぎて、本来の見所であるせっかくの古色を落としてしまった光沢をいう

・「物は常に好む所に聚(あつ)まる」 物は必ずその物を好む人の所へ集まってくる



骨董・古美術品業界の「隠語」だったものが、われわれが日常使っている「日本語」に昇格した言葉も数多くあります。

こういう言葉を覗き見ると、人間はウソをつき、人を騙し、姑息に儲けようとする生き物だということがわかります。お金があろうと、なかろうと、それらは変わらないのかもしれません。


[ 2014/03/28 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)
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