とは学

「・・・とは」の哲学

『スウェーデンはなぜ強いのか』北岡孝義

スウェーデンはなぜ強いのか (PHP新書)スウェーデンはなぜ強いのか (PHP新書)
(2010/07/16)
北岡 孝義

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スウェーデンの本を紹介するのは、これで10冊目(「北欧の本」を参照)になります。

本書は、経済学的観点からスウェーデンを見た書です。著者は、スウェーデンの経済力を生み出すもとを、国家戦略にあると考察されています。その一部をまとめてみました。



・スウェーデンは不思議な国。税金が高い国なのに、国民からの反発の声が少ない。それどころか、国民の幸福感は日本よりもはるかに高い。福祉が行き届けば、国民はやる気を起こさないはずなのに、国民は勤勉であり、労働生産性は日本よりはるかに高い

・大きな政府、反市場主義の国と見られながら、スウェーデンの企業政策は、米国以上に市場原理主義的。スウェーデン政府も企業のリストラを容認。その結果、失業率は高い

・北欧諸国の森林利用率は高い。森林の成長量に対する伐採量の割合は7割に達する(日本は4割)。北欧の木材利用は進んでいるが、森林破壊が進んでいるわけではない

・スウェーデンの人口増加時期(1960年代前半、80年代前半~90年代半ば、90年代後半~現在)は移民の増加時期に対応している。人口成長率の76%が移民の増加によるもの

・所得税は、地方税が収入の額に関係なく30%。国税が年収390万円まではゼロ、590万円までは20%、それ以上は25%。消費税は25%

・社会保険(年金、医療保険、失業保険、介護保険など)の保険料は、個人負担が給与の7%、企業負担が給与支払総額の29%。企業負担の割合が高いのは、スウェーデンでは、企業活動で得た利益は従業員や株主に還元するべきとの考え方があるから

自殺率が高かったのは、高福祉・高負担のスウェーデンモデルが完成する前の時代。現在の自殺率は、日本に比べてはるかに低い

・スウェーデンの国会議員の多くは、議員活動を行うとともに、もともとの本業を続けている。これは、政治家が実社会から遊離せず、政治屋になることを防ぐ効果がある。国会議員は職業ではなく、一種の社会奉仕であるとの認識が定着している

・社会・経済環境が変化しても、それに最低20~30年は耐えうる制度の構築が必要。それが制度への信頼を生み、国民に安心を与える。スウェーデンの年金改革は「生活の安心は、十分な年金額ではなく、制度の持続可能性によって得られる」との考えに基づいている

・「情報の非対称性」(供給者は知るが、需要者は自分の受けるサービスの質の良否を知らない)の市場で、自由取引を認めると、悪い者がはびこり、良心的な者は市場から排除される(レモンの原理)。医療サービスや社会インフラ整備は、政府が行うほうが効率的

・スウェーデンの政府は、中央政府と、ランスティング(日本の都道府県)とコミューン(市町村)の地方政府に分けられる。コミューンは、学校教育、児童福祉、障害者福祉、高齢者福祉、ラスティングは医療、中央政府は年金、失業保険などの社会保障を担当する

・近年のスウェーデンは、福祉と環境を成長戦略として位置づけている。環境では、CO2排出の減少とともに経済成長率は高まっている。しかし、旧来型のスウェーデン福祉政策は、低成長、少子高齢化という経済・社会環境に対応できていない

・福祉は、「新たなビジネス、産業を創出する」「セイフティネットの構築を通じて、雇用を流動化させ、労働の低生産性部門から高生産性部門への移動を促す」「国民の不安を軽減させ、総需要の拡大に寄与する」点で、経済成長の原動力になり得る

・スウェーデンは昔から学者が尊重される国柄。学者出身の政治家が多いので、政治が理念を優先させる。現在の首相も経済学者

・政治家が悪いことをしても、ばれなければ、政治家は悪しきに流れ、悪い政治家のみが生き残り、政治は機能不全に陥る。スウェーデンでは、国民(依頼人)の利益にかなう政治を、政治家(代理人)にさせるために、情報公開、説明責任の徹底を法的に義務づけた

・市場の機能がうまく働かない分野の代表が、教育と医療。スウェーデンでは、ほとんどの学校や病院・診療所は国営・公営。金融の分野も、市場機能に全面的に委ねていない。すべての分野を市場の機能に委ねる考え方は、真の市場主義ではないと考えている

・市場経済にふさわしい経済人の育成は、市場経済を支える無形の社会的インフラ。市場の参加者は、独立心が強く、自由と平等、個性の尊重を持つ必要がある。スウェーデンは、この無形の社会的インフラの維持に努力している。これがスウェーデンの底にある強さ



スウェーデンという国の強さの要因は、「学者を尊敬する社会」「市場と政府の役割を決める考え方」「政治家の不正排除の徹底」にあるようです。

スウェーデンといえば、福祉や環境の面ばかり強調されますが、根底に、上記のような強さがあることを忘れてはいけないのかもしれません。


[ 2014/03/19 07:00 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)
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