とは学

「・・・とは」の哲学

『科学者の卵たちに贈る言葉・江上不二夫が伝えたかったこと』笠井献一

科学者の卵たちに贈る言葉――江上不二夫が伝えたかったこと (岩波科学ライブラリー)科学者の卵たちに贈る言葉――江上不二夫が伝えたかったこと (岩波科学ライブラリー)
(2013/07/06)
笠井 献一

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本書は、著者が科学者として生きる上で指導を受けた江上不二夫教授(1982年没)の言葉をまとめたものです。

この「江上語録」は、科学者すべてに通じる生き方の知恵のようなものです。これらの言葉の中から、一部をまとめてみました。



・研究はスポーツ競技ではない。目的は他人に勝つことではない。闘争心を研究の原動力にしたのでは、勝った、負けた、だけにこだわってしまう。他の人と争うような研究テーマに群がるのはやめて、なるべく違う課題をいろいろな角度から攻めるのがいい

・今流行している研究分野に、あわてて参入しなくていい。流行している研究をやっていることで、自分は重要な仕事をしていると安心してしまいかねない

・日本の科学者が世界の第一流になるためには、たくましい科学者でなければならない

・独創的な研究をしなければならないとみんなが言うが、そんなことに囚われないほうがいい。独創的であるべきだと叫んでも、独創的な研究ができるわけではない

・独創的でないと、他の人から批判されても気にかけず、自分の仕事を大事にして、自分のペースで仕事を続けるほうがいい。そうやっているうちに予想もしないすごい発見ができたならば、結果として独創的な仕事をやったことになる

・重要な研究、最先端の研究をしなければ、とあせって、キョロキョロしたところで、成功する可能性なんて少ない。新しいことに飛びつかずに、日本の伝統、研究室の伝統恩師の伝統を尊重して、地味であってもこつこつと研究を続けるのがよい

・研究室の伝統に乗って研究すると、他の研究室にないがっちりとした土台や役に立つノウハウがあるから、同じことを始める人に比べて、他の人よりも有利にスタートを切れるし、その後もいろんな点で助けてもらえる

・つまらなそうに見えることでも、やっているうちに、どこかで本質とつながっていることがわかってくる。今は重要でないと思っていても、いつか重要なこととの接点がきっと見つかる

・流行っている研究は君がやらなくても、必ず誰か他の人がやるに決まっている。そんなテーマをやってもつまらない。自分のやっている研究が面白くないなら、君の手で面白いものにしてやりなさい

・誰もまだ気がついていないことから重要な研究課題を見つけだしなさい。他人に大事だと言ってもらえないから大事だと思えないような自信のなさではいけない。自分の選択に自信をもって、それを育てなさい

・研究を始めてから三ヵ月たったら、自分の研究について世界で一番よく知っている人間になってなければならない

・指導者がやらせたいことをやらせたり、チームでやるような大きな仕事の一部を分担させたりするのは、科学者を育てるには有害極まりない。だから君たちには大きな選択肢を与える。その代わり、自分が選んだ以上、そのテーマに関して、全責任をもちなさい

・自分の考えに固執する人、自信を持ちすぎる人は、指導者になったとき、部下が自分の期待と違う実験結果を出すと、こんなはずはない、君が悪いのだといって責めてしまう

・自分の予想したとおりの結果を出すように部下に圧力をかけると、部下も指導者の気に入るデータを報告するようになり、間違った結果が公表されることになる

・自然は人間の頭で考えられるよりもはるかに偉大で複雑。これまで数えきれないほどの実験がやられて、たくさんの優秀な頭脳が考え続けてきたけれども、まだわかっていないことのほうがずっと多い。自然から教えてもらう。これが実験科学者の取るべき姿勢

・生命は人智をはるかに超えているから、人間の浅はかな頭で考え出したことなど、その偉大さ、神秘さに適うはずがない。自然に対する謙虚な姿勢が、結局は真理の発見につながる

・みんながこうすればいいと言っているのではない。私はこうすると言っているのであって、ほかの人が同じことをする必要はない



この科学者として生きるための言葉は、科学者のみならず、人としての生き方に通じるものがあります。

付和雷同にならない、流行を追わない、といったことは、独創性と創造性を求められる分野では、必須の心構え、姿勢ではないでしょうか。


[ 2014/02/24 07:00 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)
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