とは学

「・・・とは」の哲学

『和解する脳』池谷裕二・鈴木仁志

和解する脳和解する脳
(2010/11/17)
池谷 裕二、鈴木 仁志 他

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脳科学者と法律家の対談共著です。人はなぜ争うのか、どう和解していくのか、これを脳科学によって、検証しています。

人と人との軋轢、互恵、不和、利己、利他、愛情など、興味深い人の言動の数々を知ることができます。それらをまとめてみました。



・科学は基本的に帰納を排除するが、司法の現場では、帰納をすごく重要視する。人間は、ほとんど癖と言っていいくらい、帰納が大好き。でも、科学は帰納をやるとミスる。演繹のほうが100%正しい(池谷)

・多くの人は、科学者は仮説を証明するために実験していると勘違いしている。本当は、仮説を否定するために実験をしている。「反証可能性」こそが科学の大前提(池谷)

・刑事裁判は「実体的真実」を追求する。本当に何が起こったのかを調べる。けれども、民事裁判は「形式的事実」でいい。実は違うかもしれないが、両当事者がそうだと認めた場合、それが真実ということで進む(鈴木)

・記憶は後からも作られるという意味で、「理屈」は、人を説得したり、自分を納得させたりする点で、嘘や作話に近い面があり、本能をねじ曲げる側面がある(鈴木)

・言っていることが真実かどうか見極めるには、証言に立ってもらって、反対尋問を受けてもらう必要がある。その記憶が実際にその人自身の体験から出たものかを質問して、その反応、言葉のスムーズさ、表情などを直接確かめないと、なかなかわからない(鈴木)

・和解を進めるには最初、共感と受容が有効。とにかく喋るだけ喋ってもらい、こちらはとことん聞くことに徹する。医者が患者に汗をかかせて熱を下げるようなイメージ(鈴木)

・受容がある程度進んだところで、理性や思考といった「理」の部分を使う段階に入る。弁護士の仕事を、共感や癒しの部分だけで解決するのは難しい。「理」は、弁護士の切り札。これをいつ、どのタイミングで、どんな表現で切るかが重要(鈴木)

・心が落ち着いてから、客観的な情報を教えられると、素直に受け入れられる。例えば、煙草を吸っている人に「煙草を吸うな」と言えば、相手はムッとするが、「ここでは法律上煙草を吸えないはず」と言えばいい(池谷) 紛争解決規範としての法は有用(鈴木)

・人間は妙なところに快感がある。食欲を満たすのも、寝るのも快感だが、それ以外に特有の快感がある。達成感も快感だし、お金を使うのも快感。お金をもらうだけでなく、使うのも快感。そういう点を考えずに、人間の営みは理解できない(池谷)

・「経済合理性」は一見すると、「理」(理性)の問題のように感じるが、本質的に「情」(感情)の問題。なぜなら、経済合理性というときのその合理性の基準が、人や社会によって全然違うことがよくあるから(鈴木)

・金銭の話は、経済合理性の問題のように考えられがちだが、結局、快不快、好き嫌いの問題に行き着く。お金は「約束」でしかない。それだけでは、単なる期待。最終的に「快」に変換されないと意味がない(鈴木)

・「金をくれてやる」「恵んでやる」といった優越感の表現では、相手の感情を逆撫でし、大金でも受け取られない。反対に、愛情や謝罪の意味を感じれば、お金を受け取る。つまり、お金の裏にある「情」の部分の意味合いが、行動決定に大きな影響を与える(鈴木)

・関係が濃ければ濃いほど、その中で積もり積もった不快感が爆発するということはよくある。親子なんだから、兄弟なんだから、友達なんだから仲良くしなさいといっても、紛争解決にはつながらない。近い関係であればこその葛藤がある(鈴木)

・決断するとき、決断したあとにも、うまい言い訳を探すこと。「こういう理由だからしかたがない」「この理由なら文句はつけられない」と納得できる論理に乗ること(鈴木)

・マネーは、いろんな「快」と交換できるので、無限の欲望が生まれてくる。ここが他の欲求と「金銭欲」の違うところ(鈴木)

・通貨の発行量・流通量は慎重にコントロールされているから、実は有限に近い。その有限のお金をみんなで奪い合う。捕った人がいれば、奪われている人もいる(鈴木)

・規制って、簡単に言えば、福祉ということ。規制には、社会の害悪を防ぐための自由の制限と弱者救済のための強者の経済的自由の制限の二つがある。自由には内在的な制限や社会的責任が伴う。規制を緩和すれば、世の中がよくなるというものではない(鈴木)



社会における人々の紛争を解決する手段が法律です。その法律の有用性を高めるには、脳を知る必要性があります。

法律だけでなく、個人的な揉め事、言い争いなどの解決ルールにも、本書は役に立つのではないでしょうか。


[ 2014/02/05 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)
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