とは学

「・・・とは」の哲学

『努力する人間になってはいけない・学校と仕事と社会の新人論』芦田宏直

努力する人間になってはいけない―学校と仕事と社会の新人論努力する人間になってはいけない―学校と仕事と社会の新人論
(2013/09/02)
芦田宏直

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校長である著者が、専門学校の入学式や卒業式の式辞などで述べたことを文書化したのが本書です。

エリートではない人が、社会に出て、どう戦っていくか、生きていくかが記されているように思います。本書の中で、気に入ったところを一部まとめてみました。



・「1.怠け者だけれども目標を達成する人」「2.頑張り屋で目標を達成する人」「3.頑張り屋で目標を達成できない人」「4.怠け者で目標を達成できない人」。有害な人材とは、3番目の人

・仕事の仕方を変えて目標を達成しようとせず、時間をさらにかけて達成しようとする。これが努力する人が目標を達成できない理由。努力が唯一の武器と思っている。努力は時間、努力すればするほど疲弊する、息苦しくなる、つらくなる。これでは仕事はできない

企業は時間を嫌う。時間をかけることが企業の美徳ではなく、いかに短時間で高度な目標を達成できるかが企業の見果てぬ夢。努力主義は、時間をかければ目標が達成できると思っているので、残業して(無理して)やり遂げようとするが、企業の考えとは全く逆

・努力主義は、自己のやり方を変えようとしないエゴイズム。努力する人は謙虚なように見えて、そうではない。むしろ自分に固執する偏狭な人

・努力しているのに評価してくれないときは、立ち止まって、深呼吸して、やり方を変える、自分のスタンスを変える、そのことに思いをはせること

・「努力する」の反対が、「考える」ということ。努力する人は、考えない人ということ

・「時間がない」と言ってはいけない。「お金(予算)がない」と言ってはいけない。まして「クライアントはケチだ」などと言ってはいけない。「お金と時間がない」ときにどうすればいいかという知恵こそが、勉強の実践的意義

・人間の本質は、若者に引き継がれている。人間性とは若者のこと

・「遠い」お客様を大切にすること。お客様は近所であっても、「遠い」ところから来ている人たちだと思うこと

・自立するというのは、自分が使いたくないものにお金を使うことを意味する。光熱費もアパート代もできればなしで済ませたい。しかし、社会人になるというのは、そういうものを担うこと。自宅通いでも、社会人になったら、家に月5万円以上入れるべき

・お金を借りるには、貸してくれる人を説得しなければならない。説得する過程で一所懸命プランを練らなければならない。そうやって、精度の高い、成功する確率の高いプランに成長していく

・コミュニケーションとは、無償のもの(=片方向のもの)。お互いが理解し合うなんて、最低の貧相なコミュニケーション。返ってこないから、無償の配慮が存在する

・いわゆる低偏差値の学生というのは、家庭、地域、クラスメート、担任の先生といった近親者との比較の中でしか、自分の位置を測ることができない子たち。若者が大人になる契機の一つは、対面人間関係(=親密圏を越えるとき

・日本の若者の大半は勉強していないけれども、消費者としての水準、サービス水準への要求は、どこの国の若者にも負けない

・日本の若者は、放っておいても顧客志向のエリートアジアのエリート学生を採用しても、スキルや学力は高いが、消費者水準が実感できない。そこに一番気づいていないのが、大学や専門学校の教育関係者

・アメリカは実力主義と言われるが、大学に入るには、ボランティア活動、親の推薦状、高校の先生の評価など「人間的なこと」を聞かれる。試験点数以外の家族主義的な履歴、長時間の評価を問う。それこそ差別主義。日本のマークシート方式こそウルトラ近代主義

・人間の観察を長いスパンで見る場合、その人間がどこで生まれたか、どんな親元で育ったかということに密接に関わってくる。「長い時間」の観察・評価というのは、ヒューマンな管理主義



著者は、文部科学省、経済産業省などで教育に関する委員を務めた方なので、独自の「教育論」を持っておられます。

人材とは何か、教育とは何か、極めて実践的な視点から発するその論評は、参考になる点が多いように感じました。


[ 2014/01/22 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)
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