とは学

「・・・とは」の哲学

『俺の後ろに立つな-さいとう・たかを劇画一代』さいとうたかを

俺の後ろに立つな―さいとう・たかを劇画一代俺の後ろに立つな―さいとう・たかを劇画一代
(2010/06)
さいとう たかを

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著者は、言わずと知れた、「ゴルゴ13」の作者です。45年もの長きに渡り、連載されています。他にも数々の代表作があります。

本書には、著者の劇画論、映画論、人生論などが展開されています。著者の作品が、長い人気を博している理由を知ることができます。読み応えのある一冊の一部をまとめてみました。



映画は娯楽であるという認識から始めなければならない。そこで多くの映画ファンを獲得したら、娯楽だけではないさまざまな映画を製作すればいい。娯楽映画は文芸作品より劣る、そうした価値規準が映画人の意識下にある限り、日本映画の復興はありえない

・アメリカ映画はハッピーエンドや、善玉と悪玉がはっきりし過ぎて面白くないという人もいるが、難解で不可解を覚える映画よりは、はるかにいい。不可解を覚える映画とは、テクニックが稚拙であり、観客の心理を無視した作り手側の独りよがりにすぎない

贅沢な生活を手に入れたとしても、それを羨ましがる者とは生活レベルが違ってしまい、むしろ眼につくのは、自分より贅沢三昧に生きる人。つまり、昇っても昇ってもきりがなく、半永久的に幸福感を得られない

・そもそも、無償の愛など、親が子供に対する本能の愛以外にはあり得ない。それを赤の他人に求めるのはお門違い

・あるコーヒーを飲んで、美味いと満足するか、またはもっとおいしいコーヒーがあるのではないかと考えるかによって、その人の幸福感は違ってくる。ここにヒントが隠されている。幸福になるためには、そのコーヒーで満足できればいい

・精神的にも肉体的にも心地よさを感じるか否かで幸福かどうかが決まる。それを実践するためには自分自身の価値観をもつことが必要。テレビや本、雑誌、人の考え方に左右されない自分だけの価値観がなければ、いつまでたっても幸福を味わうことはできない

・子供は、血肉を分けた母親の動物本能的な愛情と、ちょっと距離を置いた父親の人間愛(打算のない純粋な愛情)の間で、うまい具合に育っていく仕組みになっている

・父親というのは、たとえ娘に嫌われても構わないという覚悟を決めて、娘に対峙している。それこそまさしく人間愛の成せる業

・男が強いなんてイメージは母親が作ったもの。つまりメスから「男は強くなければならない」と子供のことから教育され続け、男は家族を守るものと錯覚しているだけ

・自分自身の価値観で獲得したものに囲まれているのが一番心地よい。権威や権力とは無縁のところに身を置き、自分自身に忠実に生きている人は、実に気楽に、快適に人生を謳歌できる

・地位を確保した人間はやたらと自分のやり方に固執する傾向がある。「これはこうするものだ」式のマニュアル人間に成り下がる。傍から見ればマニュアルどおりなのに、「これが私の個性」と言い張る。こういう手合いは、若い人の斬新なアイデアを生かせない

・勉強というのは、自分が見聞きし、身体全体で学ぶもの。それなのに、今の学校はただ単に便宜方法を教えるだけの場所と化している。歴史でも、なぜ権力は入れ替わるのか、時代はどのように移り変わってきたのかという根本ではなく、表層ばかり教えている

・権力は、高圧的で強制力を発揮し、個を傷つけたりする。一つの権力が生まれれば、それに群がる者もいれば、アンチテーゼの狼煙を上げる者もいる。したがって、権力を維持するためには、それを守る組織が誕生する

・権力は必ず、力と力がぶつかって生まれてきたが、どんな権力もいつかは必ず滅びるときを迎え、新しい権力にとって替わられる。まさに諸行無常の響きあり

・地球規模で対立してきた一方の権力が敗れたからといって、地球が一つの権力のもとで平和になるはずがない。必ず相反する権力が登場する。権力闘争に終わりはない

利権に群がる輩は相変わらず権力の周辺をうろつき、それが国家を蝕む。それを是正するには、これからも先、手を焼く。なぜなら、それを一掃するのも権力だから

・「出たい人よりも出したい人を」というのは、実にナンセンス。選挙に出て政治を行うのだから、「出たい人」でいい。「出したい人」を何のために出したいのか、きっと、出す側に利益があるから



本書を読み、さいとうたかを氏の作品の人気の秘密は、自身が培ってきた価値観にあるように思いました。

仕事に関する価値観だけでなく、政治、文化、教育、人生など実にさまざまな価値観を有しておられます。それが作品に滲んでくるのではないでしょうか。本書は、著者の価値観を発表する場であったのかもしれません。


[ 2014/01/17 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)
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