とは学

「・・・とは」の哲学

『実伝・黒田官兵衛』火坂雅志

実伝 黒田官兵衛 (角川文庫)実伝 黒田官兵衛 (角川文庫)
(2013/05/25)
火坂 雅志

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私は歴史が好きです。テレビでも、歴史番組をよく見ています。とりわけ、参謀、懐刀、知恵袋といったナンバー2に当る人物に興味があります。今年の大河ドラマに決まった黒田官兵衛は、その代表的人物です。

戦国武将一の知将と言われる黒田官兵衛に関する本をとりあげるのは、「人使いの極意」に次いで2冊目となります。本書にも、興味深い記述が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・官兵衛の有名な言葉に「草履片々、木履片々」というものがある。片方は草履で片方は下駄、そんなちぐはぐな格好でも、走り出さなければならない時がある、という意味

・官兵衛は、普段は吝嗇家と言われていたが、盛大な活きた金の使い方もする。「金銀も用ふべき事に用ひずは、石瓦に同じ」というのが、官兵衛のモットーだった

・官兵衛に、「我れ人に媚ず、富貴を望まず」という言葉がある。確かに、官兵衛は、ゴマをすって人に取り入ろうとはしなかったし、贅沢な暮らしもしようとはしなかった。けれども、仙人のような清廉潔白さを貫いたわけでもない

・官兵衛は、戦が好きだった。それは勝って領地を拡大すること、勢力を拡大することが楽しいのではなく、自分が人より抜きん出た智謀・智略を巡らして勝つというプロセスが好きだったから、ということ

・秀吉や家康は「政治家」だったが、官兵衛は「芸術家」だった。芸術家というものは、自分の描いた絵をみんなに見てほしい、自分の作った音楽をみんなに聴いてほしい。自分が表現したいものを外に出していく。心の裡にあるものを押し隠すことはできない

・官兵衛の言葉「夏の火鉢、旱(ひでり)の傘」は、底冷えする冬になれば、火鉢は役に立ち、雨降りには、傘が役立つことを言っている。一方的に「あいつは使えない」と判断してはいけない。いいところを引き出してやるのが、上に立つ者の役目だ、ということ

・官兵衛の「相口、不相口」というのは、相性の合う人には、つい贔屓目になり、相性の合わない人には、話を聞く耳を傾けずに遠ざけてしまうし、ちょっとしたミスも気に障る。そういうものだから、私心が入り込んで目が曇らないように注意すること、という意味

・官兵衛の「将たる人は、威というものなくては、万人の押へ成りがたし」というのは、大将たる者には威厳がないと、人々の抑えがきかないが、威厳というものを誤解して、やたら威を振るってはいけない、という意味

・真のいくさ人とは、いかなるときも肚がすわっていなければならない。しかし、石田三成は目先の現象にとらわれ、大局を見ていなかった。「これがこの才子の限界であろう」、官兵衛は三成の人物を見切った

・秀吉は官兵衛の才知を恐れたが、「由々しき曲者」を利用することを忘れなかった。中国戦線以降も、官兵衛を脅かしながら使い続けたのは、人使い第一といわれた秀吉の狡さ

・官兵衛は、息子の恩人であり、また自分の進むべき道を示してくれた竹中半兵衛の志を、遺品の軍配・采配とともに受け継ぐ。官兵衛はこのとき、半兵衛が説いた「まことの軍師」になることを胸に誓った

・官兵衛は、その昔歌人を目指すほどの文学青年であり、それゆえどこか純粋な「ロマンチスト」な部分を生涯持ち続けていた。そこが、「リアリスト」竹中半兵衛との違い

・官兵衛は福岡城中に「異見会」を設けた。これは「月の上中下旬の三回開く」「場所は大広間」「誰が出席してもよい」「会議内容の秘密を保持し、低身分の者が上級者を批判しても、上級者はわだかまっても、人事で報復してはならない」という民主主義的な会議

・如水(官兵衛)は隠居した後、毎日歩いて、町の人々に声をかけ、意見も聞いて、息子に「こういうことを聞いたぞ」「このへんを直したらどうか」と、世論を受け入れた

・如水は、息子長政に「われひとりの功を好むは匹夫の勇にして大将たる道にあらず」と、武功を誉めることなく、逆にその行動を戒めた

・時を待った結果は、裏目に出た。筑前五十二万石が与えられただけ。天下無双の博打うちも無駄に終わった。あとは身を引く以外になかった。如水ではどうにも手をつけられないくらいに徳川政権は構成されていた。残されたのは、茶と歌とキリスト教だけだった

・如水は長政を呼び寄せ、「上天子より下百姓に至るまで、一日として食物がなくては世に永らう者はない。国を富まし士卒を強くすることが根本第一」と遺言した



黒田官兵衛は天下獲りを十分に狙えた人物です。最終的には、筑前の領主となりましたが、無念だったと思います。いつ、どこに生まれるか、誰を上司に選ぶか、決断するのはいつか、などによって人生はガラッと変わってしまいます。

まさに、運と実力に恵まれないと、勝者にはなれません。信長、秀吉、家康だけでなく、戦国武将たちの生き方は、我々に多くのものを教えてくれます。本書もその一助になるのではないでしょうか。


[ 2014/01/10 07:00 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)
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