著者の本を紹介するのは、「
田舎暮らしに殺されない法」「
人生なんてくそくらえ」などに次いで4冊目です。本書は、エッセイとしては比較的古い2005年の作品です。著者の思想のもとが詰まっているように思います。
「生きる」「時間」「才能」「学校」「仕事」「親」「友人」「戦争」「不安」「健康」「死」の章ごとに、著者の容赦ない意見がさく裂しています。厳しい現実に対峙させてくれる文章の中から、一部を要約して、紹介させていただきます。
・九割以上の人間は、誕生と同時に、他者に食われ、
他人に支配される側に放り出される
・他者を支配し、他人を食い物にして生きる連中にとって、彼らが築き上げた
権威や価値観を認めない人間は、邪魔者でしかない。なりふり構わない手段に訴えて、排除にかかる
・楽天的な、どこまでも他律的な生き方を選んで、のうのうと暮らしている隙に、他人を支配し、他人を食い物にしたがる、人一倍強い本能の持ち主である
策略家たちは、みるみる幅を利かせ、権力の大半を乗っ取り、国家そのものを乗っ取ってしまう
・本能や欲望と呼ばれる強烈な力の前では、理想も、知性も、精神も、人間愛も、まったく無力で、ひとたまりもない
・他人の時間の中で生きることは、己を自ら
蔑にすること。時間をわが物にすることは、しっかりとした目的を持つこと。その目的に向かって突き進むことは、自立へ迫ること
・自分自身との闘いに勝利するには、
時間を味方につけるしかない。工夫して時間をこつこつと盗み、最終的に時間のすべてを堂々と自分の物にできる立場をつかむこと。人生の醍醐味と窮極の目的は、その辺に秘められている
・自分は凡人に過ぎないと、肩肘張らずに気楽に構え、のんべんだらりと生き、親と似たありふれた人生を歩み、無理をせず、その日その日のささやかな楽しみを見つけ、不満を述べ、愚痴をこぼしながら、
怠け者の道を歩んでいくうちに、本当の凡人へと成り下がる
・夢とは、そんなに軽くて美しいものではない。
本物の夢は、重くて、しかも暗い。重さと暗さが伴っているかどうかによって、夢の真贋と価値とが決定する
・良き労働者とは、国家を牛耳る特定少数者に協力的で従順な人。そうした
羊のような人間を好ましい国民とみなし、その枠からはみ出た人間をあるまじき国民として忌み嫌う
・あなたのことをあなたより思ってくれる人がいたら、それは要注意人物。ろくでもない下心を持った、危険人物。そいつは、あなたの何かを狙っている悪党。親から受け継ぐ
財産、性の対象としての
肉体でなければ、あなたの
魂に狙いをつけている
・自分が今、誰に
騙され、何者に
操られ、どんな飴に
釣られ、いかなるムチに怯えて進むべき道を外したのか、理解しているのとしていないのでは雲泥の差がある
・
安定は人の潜在能力をどんどん腐らせていく。魂をどんどん萎ませていく
・多くの親は、ほとんど何の考えもなしに、
漠然と親になったというだけの親でしかない。だから、親子の絆を過大評価する必要や血の繋がりを大げさに受け止めることはない
・真の友人とは、生きる目標をしっかりと定め、孤独と闘いながら
自立の道を着実に歩んでいる人間の中にしか存在しない。その前に自分がそうした人間にならない限り、彼らと出会うことも絶対にあり得ない
・出会いとか、触れ合いとかの、軽くて美しい言葉を頻繁に口にする連中には魂胆がある。他人を束ねることで、そこから生まれる利益を当てにする。
笑みを絶やさない連中が、笑顔を保つのは、腹黒さを隠し、相手を油断させるため。さもなければ、極端な小心者
・真に自立した者は、けっして
騙さず、また、けっして
騙されない・残念なことに、小さな妥協と、目先の欲と、服従の心地よさに負けてしまう国民が多すぎる。そんな彼らには、民主主義を唱える資格もなければ、平和を切望する資格もない
・富める特定少数者が求めてやまないのは、自分たちの特権的立場を守ってくれる
番犬。国家の戦争というのは、大抵の場合、特定少数の支配者たちの利害のための戦争
・でぶでぶと太った
医者が病気を語り、体脂肪50%の
高僧が真の生き方を説き、ぶよぶよの体つきの
評論家が精神の在り方を声高に唱えても、説得力のなさに呆れ返るふだけ。傾注に値する真の言葉は、
甘やかされていない肉体からしか出てこない
著者は、誰の支配も受けないこと、時間を自分の思い通りに使うこと、安定を求めないこと、魂を売り渡さないこと、孤独と闘うこと、を一貫して述べています。
つまり、自立せよ、ということです。生きるということは、自立することに他ならないのではないでしょうか。
読み通すには一頑張りが必要かも。
読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
晴耕雨読にどうぞ。
ネット小説も宜しく。