とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『鈴木大拙随聞記』志村武

鈴木大拙随聞記 (1967年)鈴木大拙随聞記 (1967年)
(1967)
志村 武

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この本は、87歳になる父親の書棚にあったもので、昭和42年に出版された書です。

鈴木大拙(宗教家・東洋思想家、昭和41年95歳で没)の書は難解で、このブログにとり上げるのをためらっていました。本書は、著者が鈴木大拙の側に寄り添い、その言葉を聞き出したものなので、比較的容易です。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・世間的に評判が立つのは、その時その時の時代的条件の組み合わせ次第であって、その人の人間としての価値にはよらない。田舎のお寺の墓場に名も知れず眠る人々も決して「凡人」ではない。周囲の事情の組み合わせ次第で、社会の表面に祭り上げられなかっただけ

・望みが大きくても、その中から純粋なものが出てこなければ、それはアンビシャスではない。人を傷めない人のためになる、といった社会性のあるアンビシャスであること

・向こうの力がどのくらいあるのかを見ないで、むちゃくちゃをやるというのは、人間として極めて低い考え。もう少し自分を尊敬すべき。自分を動物のように見てはいけない

・心なきところに見える働きが、大拙先生が日ごろ最も重んじた「おのずから」ということ。その無功用行(報いを考えの中にまったく入れない行為)が、大拙を大拙たらしめた

・中国も、百年経てば、きっと元の姿に戻っていく。われわれは、過去から現在までに得たものを捨ててはならない。得たものを利用して、昔の系統を続けていくのがよい

・仏教には「あなたはあなたのよろしいように」(良寛和尚)といったようなところがある

・「道はおのずから道なるなり」の「おのずから」が大切。「さとり」とは、「おのずから」に徹すること

・「さとり」とは、「かぎりなく素直な心になること」であるとともに、「その素直な心を決して意識しないで行動できること」である

・誠というものには限りがない。真剣になって誠を尽くそうとすればするだけ、尽しきれない面がマイナスになって跳ね返ってくる。そのマイナスに立ち向かう気力が必要

・自分を知ることぐらい大切なことはない。自分を知る人々は、自分の益となるものがわかり、自分にできることを見分けられる。そして、自分の知ることを実行し、必要なものを手に入れて豊かに暮らし、知らないことは避けて、功なり名をとげて、尊敬を受ける

・聖徳太子の中には、日本的なるもののすべてがある。太子のころの日本を研究し、太子の思想を学ぶことによって、日本的なるものの精髄をつかむことができる

・日本が、日本がと、言っても、日本というものは、世界あっての日本で、日本は世界に包まれているが、日本もまた世界を包んでいる。日本は世界のうちの一つである

・日常的な意識が、宗教的な意識に切り替わると、指一本の中にすべてのものがあるということに、はっきり気がつく

・生まれながらの素質がどれほど優れていても、人間は生育の環境とは無縁ではない。「宮殿の中では、人は小屋の中と違った考え方をする」(フォイエルバッハ)、「人間はすべて平等な素質を持っているが、ただ境遇が差別を設けている」(リヒテンベルク)

・他力を頼んで、他人に依存して、自分からは何もしない、ではいけない。絶対の他力は絶対の自力と同じこと。つまり、自分は苦しんでいても人を助けたいという能動性が、おのずから出てこなければならない

・幸福は苦しみを超越したところにあり、幸福は因果応報を出たところにある。それを出るということは、因果を離れて因果を見るのではなく、因果の中に入っていながら、それが楽しみのものになるということ

・他のために自分の労を惜しまずに、手足を動かしていると、自分のことが自然に気にかからなくなり、自分のことのみを考える癖が少なくなり、「誠」が養われてくる

・詩があると、ゆとりが出てくる。限りあるものが限りないものに変わる。無限の世界が出てくる。詩は創造力。これを持たないといけない

・「願わくば一切の人に極楽へ行ってもらいたいが、私だけはいつまでも苦海にいたいもの」(趙州禅師)。この大悲心こそ、今日の人間を救い、今後の世界を救うものだと、大拙先生は確信していた


鈴木大拙は、明治時代に、欧米で仏教に関する講演や講義をされてきた方です。仏教、東洋思想を世界中の人に伝えることに奔走してきた人でもあります。禅を世界に広めたことでも有名です。

本書は、西田幾多郎と並ぶ、知の巨人である鈴木大拙の素顔が、間近に見えてくる貴重な書ではないでしょうか。


[ 2013/11/10 07:00 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)
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