とは学

「・・・とは」の哲学

『縮む世界でどう生き延びるか?』長谷川英祐

縮む世界でどう生き延びるか? (メディアファクトリー新書)縮む世界でどう生き延びるか? (メディアファクトリー新書)
(2013/02/28)
長谷川英祐

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生物学者である著者の本を紹介するのは、「働かないアリに意義がある」に次ぎ2冊目です。

本書は、生物学者の考える、社会論、経済論、文明論です。縮みいく日本(人口減、デフレ)における最適行動とは何か。それらを明示してくれています。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・「草食系」がモノを欲しがらないのは、収入が減った上に、将来安定的に収入が得られる見込みが低い若者たちの文化的適応

・「貨幣と貯蓄」が人間を決定的に変えた。貯蓄が可能になり、個人が生きていくのに必要な量より大きな財産を持つ人間が現れた。裕福な人が余った貨幣を貸し、新たな商売が生じ、ますます人が増え、経済が大きくなるという、近代社会の道筋が築かれていった

・人間集団につながるルートには、(個人→地域集団→国家)と(個人→企業→経済社会)の階層がある。「経済階層」は、「国家階層」とは異なり、貯蓄と貨幣が現れた後に現れた

・最近(昭和の中頃)まで、個々の企業は国の中で活動していた。したがって、(個人→地域集団→国家)の階層と(個人→企業→経済集団)の最上位階層の範囲は一致していた。企業の利益=国家の利益だったから、矛盾が表に現れることはなかった

資源供給空間的な環境は、いつも潤沢に存在しているわけではなく、生物の増殖によって影響を受け、その結果が生き物自身に跳ね返ってくるもの

・不安定な環境に住むものが全滅のリスクを回避するために探るやり方は、ベット・ヘッジング(両賭け)と呼ばれる。ルーレットなら、チップがなくならないように、赤と青の両方に賭けておくやり方

・進化生態学には、「大卵少産小卵多産か」という問題が昔からあり、卵を少ししか産まないものは大きな卵を産み、多く産むものは小さな卵を産む。これは、どのような環境で有利になるかを考えての繁殖戦略

・不安定な環境とは、「時間的に持続せず、その出現が予測困難であるような環境」と定義できる。さらには、出現したときの持続期間がどのくらいかが予測困難なら、ますます不安定

・不安定な環境で増殖競争を強いられるものの特徴は、「早い成長」「逆境を耐え抜ける形態と適応力(移動力)」

・「短期的な効率を上げる性質」と「長期的な存続性を確保する性質」は両立しない。短期的には有利でも、長期的に存続できないものは生き残ることができないので、重要なのは、長期的存続

・すべての生き物は、現在まで生き抜いてきたからこそ、この世に存在する。長期的存続がどのように実現されてきたかを考えることは、生き物や企業を考える上でも重要

・低成長な飽和した安定環境では、大規模化して維持コストが大きくなると、たちまち苦しい状況に陥ってしまう。ほんの少量だけコンスタントに現れる資源を効率的に利用して生きるためには、小さな規模でなければならない

・共産主義亡き後、資本主義は唯一の勝者として現在に至っているが、そのテーゼともいうべき効率化、大規模化、大量生産が、勝利をもたらしたのは、産業革命以降の世界が「拡大する世界」だったから

・今までの経済学はすべて、成長する経済世界のことしか考えていない。成長しない世界がやってくるなら、その世界で「大きいこと」「強いこと」は最適解ではない

・生物は常に努力して(させられて)いるので、競争を生き延びることができる。「努力さえすれば報われるとは限らないが、努力しないものが報われることはない」。これは生物の世界のルール

・縮む世界で「幸せ」に生きるには、「個として小規模であること」「小さな利益を確実に確保できるようにすること」「利益が出た場合、それを生産増大や消費に費やさず、個の耐久性を高めるように使うこと」

・経済的なバックボーンなしに高い満足感を得るのは簡単。「欲望のレベルを下げる」「お金をかけないでできることで満足する」「多くを望まない」「ささやかなことで幸福を得る」こと。これらは「草食系」と呼ばれる現在の若者たちの行動パターンと一致する



「縮む世界でどう生き延びるか」は、まるで、京都の老舗の経営法のようでした。事業の拡大よりも、事業の永続性に重きを置く経営法は、今まで見過ごされてきたように思います。

縮む世界では、それに合った生き方が必要です。それが嫌なら、拡がる世界を探し歩かなければなりません。環境と自分をどう適合させるかは、永遠のテーマではないでしょうか。


[ 2013/10/24 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)
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