とは学

「・・・とは」の哲学

『日本の景気は賃金が決める』吉本佳生

日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)
(2013/04/18)
吉本 佳生

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日本人は、賃金の高い人ほど、お金をあまり使わずに貯金します。一方、賃金の低い人ほど、見栄を張って、お金を目一杯使いたがります。したがって、賃金の低い人の給料を上げたほうが、景気がよくなります。

日本の銀行員はサラリーマン体質なので、土地を担保に金を貸したがります。値上がりしそうな土地の持ち主なら、さらに簡単に金を貸します。ということは、土地の値段が上がったほうが、世の中にお金が大量に回り、景気がよくなります。

本書には、このような日本人の体質に合った「景気対策」が載っています。著者の景気対策論は、日本人というものをよく理解しているので、実践的かつ有効的だと感じました。これらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・日本銀行がデフレ脱出まで、どんどん供給すると決めたおカネを「賃金格差(所得格差)」と「バブル」の二つを意識して、回すことが景気回復の成否につながる

・「男性で、大企業に就職して、正規雇用のかたちで、長年働いている人」は、高い賃金を得る。ところが、この「男・大・正・長」のどれかの条件が外れると、いきなり、主要先進国中で一番落差が大きな(ワースト)賃金格差に直面する

・モノやサービスのデフレ(物価の継続的下落)だけを考えると、デフレは日本経済にとって一番の問題ではない。もっと重大な問題は「賃金デフレ」。賃金デフレが賃金格差をさらに拡大した

・「平均消費性向=景気回復への貢献能力」は、高所得世帯ほど下がる。上位2割の世帯は、可処分所得の7割弱しか消費しない。下位2割の世帯は、8割強を消費に回す。1998年以降、景気回復貢献度の高い世帯に回るおカネの総額が激しく減った

・日本は、子育て世帯を大切にしないという点でも、先進国で最悪の国。日本政府は、少子化を防ぐ努力をしてきたとはとても言えず、むしろ、少子化を促進してきた

・失業などの雇用面で不遇が続く人は、結婚して子供をつくることが難しいので、少子化がより一層進展する。失業問題を放置すれば、日本経済は長期的にどんどん衰退する。その対策を行う気がない政府なら、もっと小さな規模で十分

・中小企業の9割超が、資源価格高騰によるコスト増加の半分でさえ、モノやサービスの価格に転嫁できていない。国内物価が資源価格高騰の影響を受けないのは、そのため。他方、中小企業の付加価値の8割が人件費。価格転嫁できなければ、人件費を削るしかない

・高所得者は不況を深刻にするが、低所得者は不況を退治できる。年収300万円未満の勤労者世帯は、追加の所得の85%を消費に回す(15%を貯蓄に回す)が、年収1000万円以上の勤労者世帯は、追加の所得の52%しか消費に回さない(48%を貯蓄に回す

・日本は、企業規模による賃金格差が大きい。社員規模29人以下の企業の社員は、1000人以上の大企業の社員の約5割しか賃金がもらえない。企業規模が大きいほど賃金が高いという関係は、世界のどの国でも通用する法則ではない

・世帯主の勤め先産業別消費性向が75%より高いのは、宿泊・飲食サービス、他のサービス、教育・学習支援、建設、卸・小売。これら業種の所得が増えれば、消費が増えて景気がよくなる。消費性向が低い、公務、金融・保険の所得が増えても、景気はよくならない

・財務分析をきちんとやって、おカネを貸すかどうか決めるのが、本来の融資の基本。しかし、日本では「値上がりしそうな土地」に優る担保はない

・サービス業では「稼働率」が大切。人が密集すれば、サービス業の稼働率は高まる。人口密度が高まることで、第3次産業が発展し、国内需要が主導する経済成長スピードが高く維持できる

都市部に人口が集まることは、経済成長を高めるための基本中の基本。とにかく都市部に人口を集め、人口密度を高めればいい。そうすれば、民間企業がいろいろ考え、起業する個人も増えて、バラエティに富んだ新しいビジネスが発生・発展する

・学歴別の賃金格差は世襲されやすい。だからこそ、「男・大・正・長」と「女・小・非・短」の賃金格差があることが問題になる

・消費者物価がじわじわと下がるデフレ現象の中でも、教育関係の費用はどんどん値上がりしていた。1997年を100とした場合、2012年の総合消費者物価指数は97だが、私立大学授業料は112、補習教育は108であった



海外の経済理論は、高所得者を優遇すれば、おカネをいっぱい使い、そのおカネが回り、低所得者も潤うというものです。日本もそれを真似して、高所得者の所得税率を下げましたが、逆にデフレが進んでしまいました。

日本は、世間体を気にし、横並びを良しとする社会です。どうも、海外の経済理論は当てはまらないみたいです。本書には、それを裏付けるデータや資料が満載です。日本独自のデフレ脱却論が記されているように思います。


[ 2013/10/22 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)
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