とは学

「・・・とは」の哲学

『坂本龍馬の「贋金」製造計画』竹下倫一

坂本龍馬の「贋金」製造計画 (青春新書INTELLIGENCE)坂本龍馬の「贋金」製造計画 (青春新書INTELLIGENCE)
(2010/05/07)
竹下 倫一

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NHKのBS歴史館で坂本龍馬をテーマにした番組をやっていました。その中で、坂本龍馬が贋金をつくらせていたことが、ほぼ事実であることを知り驚きました。著者は、その番組にも登場されていた方です。

新しい日本の夜明けを生むのにも金が要ります。従来、龍馬の表の部分だけにスポットが当てられていましたが、本書には裏の部分に光を当てています。目的のためには手段を選ばない龍馬の生き方に感心しました。それらの一部を要約して紹介させていただきます。



・「贋金を製造する」「関門海峡を封鎖する」「奉行所の金庫を襲う」。これらは、坂本龍馬が真剣に計画し、実行しようとしていたこと。龍馬は、他の歴史上の偉人や、立志伝上の人物にはない「悪の魅力」を持っている

・「目的のためならば手段は柔軟に考える」「常識を超えた発想で現状を突破する」。それが龍馬の龍馬たる部分。だからこそ、「薩長同盟」や「大政奉還」という大事業をやり遂げた

・「商人が狡猾なのは当たり前。狡猾でないと利益を得ることはできない」(坂本龍馬)

・雄藩たちは、万延二分金による幕府の利益を横取りし、偽造品をつくって、その恩恵に与ろうとした。薩摩を初め、会津、久保田、仙台、二本松、加賀、郡山、佐土原、土佐、安芸、宇和島、筑前、久留米藩などでも、贋金を製造していたことが判明している

・岡内俊太郎の手紙に「薩摩でつくっている弐分金のニセ金貨を探して取ってきてくれ。薩摩藩と同じように土佐藩でもニセ金貨をつくっておかなければ、事が起こったときに困る」と言った龍馬の言葉が、公式資料として残されている

・龍馬の事業意欲と贋金製造計画は表裏一体。龍馬は「国を動かすにはまずカネがいる」ことを常に念頭に置いていた。経済的な裏付けを得るためには、なりふり構わなかった

・万延二分金は金の含有量が諸外国との間で明確に規定されていた。だから、規定量以下の貨幣をつくることは条約違反。ところが、幕府はそれを承知で秘密裏に金の含有量を減らした金貨をつくっていた。つまり万延二分金も幕府がつくった「贋金」ということ

・龍馬は大政奉還の直前、海援隊に「船には石炭を満載にしておけ」と命令していた。「戦いが始まれば、石炭が高騰する、だからその前に準備しておけ」ということ

・龍馬は1866年、薩摩藩士五代友厚、長州藩士広沢兵助との間にまとめた「商社示談箇条書」に「下関海峡を通過する船を停止させ、積荷をチェックする」というのがある。海運業者にとって、龍馬の商社は大きな脅威。龍馬は海の小さな王のような存在になった

・龍馬は土佐藩の後藤象二郎に「薩摩にはすでに100万両の偽造金貨がある。長州も同様。土佐が同じことをしても、三藩で300万両。驚くことはない。大政奉還は未曽有の大事業。300万両で新政府がぐらつくようなら、大政奉還は成功しない」と言った

・薩摩藩は幕府から、琉球の通貨不足を補うための「琉球通宝」鋳造許可を受けた。「琉球通宝」は「天保通宝」と形が同じ。薩摩藩が天保通宝を偽造しようとしたのは見え見え

・天保通宝で味をしめた薩摩藩は、二分金の偽造にも手を出した。二分金は、金よりも銀の含有量が多い「金貨」。つまり名目上は「金貨」だが、その実は金メッキをした銀貨

・土佐藩の大坂藩邸に贋金製造工場が置かれた。二分金の他に天保通宝の偽造も行われていた。この大坂の土佐藩邸は、後に岩崎弥太郎に買い取られ、三菱の前身である九十九商会が置かれた。元贋金製造工場が三菱の発祥の地ということになる

・龍馬は、新政府の財政官に招聘した由利公正に大政奉還の経緯を説明した。公正は「お金というのは、金銀に限ったものではなく、石でもいい。信用があれば、お金としての価値が生じる。朝廷の信用が確立すれば、お金に困ることはない」という意味の回答をした

・金メッキなどの製造コストが1枚につき900文かかったが、それを含めても原価の5~6倍になった。しかし、贋金は明治に入ってから、国際的な大問題となった

・龍馬が新政府の指針を示した「船中八策」は、国の骨格を論じたものなのに、八策目だけが、「金銀物貨宜シク外国ト平均ノ法ヲ設クベキ事」という「金銀の価値」の話が出てくる。ここに、龍馬の「国の礎は経済」という思想が織り込まれていると言える

・龍馬が後藤象二郎に送った手紙に「幕府が銀座を京都に移すなら、将軍職を残してもいい。そうすれば、将軍職の名はあっても実はないので、恐るるに足りない」とある。龍馬は、権力の源である経済力を絶つためには「貨幣鋳造権」を取り上げることと考えていた



本書は、龍馬のスケールの大きさを示す書です。大きな善をなすためには、悪を厭わずの精神は、龍馬が大人物の器たる証拠です。

明治新政府の前に、こういったお金の駆け引きややりとりがあったことを歴史的に知っておくことは重要です。本書は、裏の日本史として、非常に興味深い書ではないでしょうか。


[ 2013/10/08 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)
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