とは学

「・・・とは」の哲学

『非社交的社交性・大人になるということ』中島義道

非社交的社交性 大人になるということ (講談社現代新書)非社交的社交性 大人になるということ (講談社現代新書)
(2013/05/17)
中島 義道

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哲学者である著者の本を紹介するのは、「人生しょせん気晴らし」「善人ほど悪い奴はいない」「対話のない社会」などに次ぎ、5冊目です。

本書は、カントを考察しながら、「一人でいることもできないが、といって他人と一緒にいると不快だらけ」という現状に対するの著者の見解です。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・人間は「社会を形成しようとする性癖」と「自分を個別化する(孤立化する)性癖」の両面を持っている

・カントは普通の人間嫌いではない。むしろ、いかにして気に入った人のみ受け容れ、気に入らない人を遠ざけるか、という「わがままな」課題に取り組んだ

・古代中国の外交政策の言葉「遠交近攻」は、まさにカントの人間関係。彼は「近い人」を徹底的に警戒し、親戚や哲学者と親密な関係を結ばなかった。だが、あらゆる階層の人々と「分け隔てなく」交際した

・カントは家族を中心とする血縁関係を厭い、友人を中心とする信頼関係を拒否し、性愛を中心とする愛情関係を嫌悪した。これらは、相手を支配しようとし、相手から支配されようとし、人間から理性や魂の自律を奪うから

・他人を恐れる人は、決まって他人による自分の評価を恐れる人、他人に「よく思われたい」という要求が強い人。この要求を希薄化し、「どうせ」と自暴自棄にならないためには、自分を評価してくれる他人の存在が必要

・物欲や性欲や名誉欲からの自由は、それほど難しくない。「幸福でありたい」という欲望からの自由が一番難しい。その中心の、他人から愛されたい、評価されたい、信頼されたい、守られたい、という欲望が強いと、自分の信念を曲げ、他人に従ってしまう

・「心の弱い人」は、「幸福でありたい」欲望の強い人。幸福が実現されている間は安泰だが、一旦不幸に陥ると、あるいは、不幸の恐れがあると、途端に生きる気力を失う

・人生、なるべく孤立しないほうがいいが、全身でもたれかかる依存関係も危険

・われわれがある人や物事を執拗に非難する時は、それが「もう一人の自分」だから。最も遠ざけたいもの、それは最も親密なもの

・ヒトラーがあれほどユダヤ人を忌み嫌ったのは、自分の「うち」に(彼のイメージする)ユダヤ人と共通のものがあったから。それは、狡賢く、冷酷で、異様な忍耐力があり、しかも世界支配を夢見ている。眼を背けたくなるほど醜悪な「自己」

・未来は「ない」。なぜなら、予想・予期・予測することは、未来に起こることではなく、未来に起こるであろうこと、つまり、現在の心の状態にすぎないから。しかも、その根底に潜む方法は、過去を延ばしただけの帰納法なのだから

・結婚には、はっきりとした理由などなくていいのに、離婚にはそれが求められる。それは、原因や理由は「禍」を避けたい、という本能的態度に由来するから

・「要領よく、軽く、そつなく」生きることができない人たちは、「みんな」からズレていることを自覚しており、よって「生きにくい」ことを痛感している。なぜなら、「人生の意味」について、真面目に考えすぎているから

・ナマの他人とのコミュニケーションを遮断してしまった、典型的な「引きこもり」が、仕事によって自活しなければならない年齢に達したとき、世間はこうした(世間基準の)「欠陥人間」を見逃すことなく慎重に間引きする

・九九を、漢字を憶えなかった子が、それらを「あとで」取り戻すことが難しいように、自然な人間の喜怒哀楽に共感や反発する能力、それ以前の、他人の振舞いの「意味」がわかる能力を培ってこなかった青年が、「あとで」それを取り戻すのは大変困難

・現代日本の青年たちは、プライドが高く、たとえ自分に責任があるとわかっていても、みんなの前で指摘されたり、「無能」などの差別語に近い言葉を投げつけられた瞬間に、その行為をどうしても許せない。大変な屈辱を感じ、自分を棚に上げて、相手を責める

・現代日本の若者たちは、「人権思想」や「男女平等思想」や「弱者保護思想」が身体の芯にまで浸透し、それに対して疑ってみることをせず、思考が停止してしまっている。彼らは現代の精神風土に「調教」されている



本書は、若者だけでなく、大人に対しても、「大人になる」ということは、どういうことかを説いている書です。さらに、「良好な人間関係を築く」ことに関するさまざまな考察について説いています。

それらは、個人と集団をどこで線引きすべきなのかを問うものです。集団の強い日本では、なかなかその線が決まりそうにありません。まだまだ苦悩が続くのかもしれません。


[ 2013/10/02 07:00 ] 中島義道・本 | TB(0) | CM(0)
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