とは学

「・・・とは」の哲学

『商いの心くばり』伊藤雅俊

商いの心くばり (講談社文庫)商いの心くばり (講談社文庫)
(1987/03)
伊藤 雅俊

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イトーヨーカドー・グループ名誉会長である著者の本を紹介するのは、「商いの道」に次いで2冊目です。

本書は、著者が感じたことを社内配布の小冊子にまとめたものです。今から、25年以上前の本ですが、商売の基本に古きも新しきも関係ありません。勉強になることばかりです。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



人間は好みに滅ぶ。女好きの人は女で失敗するし、お金にばかり執着する人はお金で滅び、商売好きな人は、商売に気をつけなければならない

・とかく人間は、慣れてくると、態度がラフになりがち。そういう態度から失う信用は、操作上のミスよりも、はるかに始末が悪い

品質がよい、価格が妥当、サービスがよい、これらのことを忘れると、商売は基本的に狂ってくる。商売とは厳しいもの

・商品は売れないのが当たり前、お客様は来てくださらないのが当たり前。まず、ここから出発しなければならない

・会社が大きくなると、問題点がわからなくなる。商売をする人にとって一番大切な「利益よりも信用」という基本が、忘れられてしまう

・会社でも個人でも同じ。商売は自分の力だけで成り立っていると考えたら、必ず腐敗し、お客様や取引先を粗末にして、信用を失い、自ら滅んでいくに違いない

・誠実とは、「嘘のない行為であり、責任をもった行為」である

・広告宣伝に偽りがないから、お客様が信用してくださり、お客様が信用してくださるから、店が繁盛する。嘘のない仕事をするから、同僚、上司から仕事をまかされ、それに応えるから、ますますまかされ、昇進する。これが信頼関係

・新しい傾向を、いつ取り入れるのか、これがタイミング。「早すぎるバカ、遅すぎるバカ」で、早すぎてもだめ、遅すぎてもだめ

・変化に対応する戦略を考える上で大切なのは、やはり、店員自身がほしいと思う商品を揃えること。社員が自店の商品を本当にほしいと思って、買うようでなければだめ

・節約やコストダウンのことばかり考えていてはだめ。マネジメントというものは、会社の中の問題。けれども、利益というものは、必ず外部にある

・商売で成功している人には、意外に無器用な人が多い。利にさといとか才覚がある人は、かえって商売がうまくいかない。才覚のある人は、だいたい相場をやる。しかし、それに走ったら、商売がだめになる

・本田宗一郎さんが「お金など、そんなに難しいものではない。約束した日に支払えば、お金はいくらでも集まってくるものだ」と、うまいことをおっしゃっていた

・小売業は、案外、場所の悪いところでやっている人が成功する。いい場所にいる人は、おうおうにして道楽してしまう。その上、これまでいい場所にいた人は、どこかへ新しい店を出すのがこわくなる。恵まれた場所で豊かになると、保守的になってしまう

・小売業から商売を始めた人は、何をしてもうまくいく。これは、お客様から出発しているため。大企業の人が中小企業に来て育つことは少ない

・世の中でも、会社でもそうだが、自分で判断がつかなくなると、人に答えを求めるようになる。そういう時代に、英雄待望論が出てくる

人材とは何か。それは「責任を持つ人のこと」。言い換えれば、泥をかぶれる人のこと

他人様が持ってきてくれた仕事のほうが、自分の能力で考えた仕事より、はるかに大きい。だから、いろいろな人の引力に引っ張られて、自分が存在するのだと感じている

・官僚的になった人は、非常にうまい言葉でいろいろなことを言うが、一人称ではなく、三人称で言うのが特徴。三人称でものを言う人は不必要であり、一人称でものを言う人こそ、必要な人材である

・子供に限らず、人間は冒険心をもったときには、いきいきとしている。会社も、社員が冒険心をもったときには、いきいきとしている



会社が大きくなっていく過程では、技術力の向上よりも、社員の人間力の向上のほうが重要です。人間力の要素を、堂々と日々言えるリーダーがいるかどうかで、会社の将来が決まってくるようにも思います。

大企業では、著者のような言葉を直接聞くことは少ないのかもしれません。自分を奮い立たせる意味において、本書のような自叙伝は、その助けになるのではないでしょうか。


[ 2013/09/30 07:00 ] 商いの本 | TB(0) | CM(0)
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