とは学

「・・・とは」の哲学

『生き心地の良い町・この自殺率の低さには理由(わけ)がある』岡檀

生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある
(2013/07/23)
岡 檀

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本書は、自殺率が日本で一番低い町(徳島県海部町)を丹念に取材した書です。数字上では表れない部分も、取材によって浮き彫りにされています。

自殺率が低いということは、「幸福円満」ではなくても、「不幸せではない」ということだけは間違いなさそうです。「不幸せではない」ヒントが満載の書です。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・自殺率の低い自治体ベスト10のうち、海部町以外はすべてが「島」。島の特殊な地勢を除けば、海部町だけが残る。しかも、海部町の両隣の町の自殺率が全国平均並み。地形や気候、産業構造、住民の年齢分布など類似点をもつ三町に、自殺率の差があるのは不思議

・海部町では赤い羽根募金が集まらない。募金を拒む人は「あん人はあん人。いくらでも好きに募金すりゃええが。わしは嫌いや」と言う。老人クラブも、役所の担当者が声をかけても、募金同様に集まらない。海部町町民は、「統制」や「均質」を避けようとする

・海部町で、現在も機能している「朋輩組」(江戸時代発祥の相互扶助組織)はユニーク。歴史ある組織でありながら、会則と呼べるものがないし、入退会の定めもない。よそ者、新参者でも希望すれば、いつでも入会(退会も)できるし、女性の加入も拒まない

・海部町では「歳が上がれば自動的に偉くなるとは限らない」。朋輩組でも、年長者が年少者に服従を強いることがない。年少者の意見でも、妥当と判断されれば即採用される。町の人事にも人物本位主義が反映される。現在の教育長は、教育経験のない41歳の男性

・海部町では主体的に政治に参画する人が多い。自分たちが暮らす世界を自分たちの手で良くしようという姿勢がある。行政に対する注文も多く、いわゆる「お上頼み」がない。こうした住民意識を反映してか、首長選挙が盛んで、海部町には長期政権の歴史がない

・海部町には「病、市に出せ」の格言がある。これには、やせ我慢すること、虚勢を張ることへの戒めが込められている。また、親や教師から「でけんことはでけんと、早う言いなさい。はたに迷惑かかるから」と、言われることが多い

・海部町は、江戸時代、材木の集積地だった。大坂夏の陣後の復興需要で、短期間に、一攫千金を狙っての労働者や職人、商人が町に流れ込み、やがて居を定めた。この成り立ちが、周辺の農村型コミュニティと大きく異なる

・海部町は、多くの移住者によって発展してきた、いわば地縁血縁の薄いコミュニティ。町では、今も「ゆるやかな絆」が維持されている

・海部町のコミュニティにおけるトラブル処理の方針は、評価を固定させないこと。「朋輩組」でも、「一度目はこらえたれ(許してやれ)」という言葉がよく聞かれた

・かつては地縁血縁の薄い共同体であった海部町が、自分たちの生活を脅かす危険をいかに回避するか、被害を最小限にとどめるか、住民が知恵を出し合って、試行錯誤して、行き着いた策が「弱音を吐かせる」というリスク管理術

・海部町の人々は、人間の「性(さが)」や「業(ごう)」をよく知る。性や業を無視して、金科玉条を掲げても、人々は容易に従わないし、それどころか強い反発を招きかねない。

・「傾斜度が自殺率に与える影響」調査によれば、傾斜が15度~25度と強くなれば、自殺影響度が急速に高まる。厳しい自然環境が住民の生活活動に支障をきたし、孤立が強められ、忍耐力が植え付けられる。そのことが誘因となり、うつ状態が生じる可能性がある

・海部町には、住民が気軽に立ち寄れる場所、時間を気にせず腰掛けていられる場所、行けば必ず隣人と会える場所、新鮮な情報を持ち込み広められる場所が数多く存在する。これら「サロン機能」が傾斜の弱い平坦な土地に、コンパクトかつ集中的に配置されている

・「幸福度に関する調査」では、海部町は、幸せな人が少なく、幸せでも不幸せでもない人が多い。「不幸でない」ことに、より重要な意味がある。海部町のコミュニティは「大変幸福というわけにはいかないが、決して不幸ではない」を心がけている

・「生きづらさ」の元となる要素を取り除き、生き心地のよいコミュニティを次世代に引き継いできたのは、先達の「損得勘定」。人間の業である損得勘定を基にしていたからこそ、長年にわたり、破綻することなく継承されてきたと

・海部町では、「野暮な奴だ」と言われることが最大の不名誉。個人の自由を侵し、なんらかの圧力を行使して従属させようとする行為をくい止めるためには、そうした行為に「野暮ラベル」を貼ること。野暮ラベルは、魔物を封印する御札



「幸福とは何か」。それは「不幸でないこと」。「不幸でない」ためには、どうすればいいか。そのヒントが、この海部町の事例が示しています。

しかも、江戸時代より続いてきた事例です。この事例を参考にすることが、息苦しい世の中から解放される一助になるのではないでしょうか。


[ 2013/09/19 07:00 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)
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