とは学

「・・・とは」の哲学

『映画はやくざなり』笠原和夫

映画はやくざなり映画はやくざなり
(2003/06)
笠原 和夫

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著者は10年前に亡くなられましたが、「仁義なき戦い」など、東映任侠映画の脚本を書かれていた花形ライターです。本書は、亡くなられる少し前に、「ヒットするシナリオ」について、その秘伝の技法(骨法)を惜しみなく公開されたものです。

ストーリーを描くことが、ビジネスでも、ますます重要になってきています。本書には、そのノウハウが満載されています。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・脚本には、「1.コンセプトの検討」「2.テーマの設定」「3.取材と資料蒐集」「4.キャラクターの創造」「5.人物関係表」「6.事件の配列」「7.ストーリー作り」の工程がある

・いきなりストーリー作りに入らずに、回り道をすること。回り道というのは、コンセプトやテーマを何度も話し合い、資料を読み、背景に使う土地に出かけ、人に会ったりするという、地味でオーソドックスな道。急いで片づけようとした瞬間から迷路にはまる

・コンセプト(戦略)というのは、映画の有り様を考えること。映画を取り巻く様々な状況、時世時節の流れを踏まえ、その中で、どのように映画を成功に導くのか。このグランドプランを設定するのが、脚本の最初の作業

・ヒットする映画とは、コンセプト(戦略)が発揮した場合であって、決して目新しいストーリーのせいではない。ストーリーは、考えられ得るものはすべて出尽くしている。コンセプトこそが映画のキモ。それを考案する脚本家は、いわば戦争における「作戦参謀

・事件の配列は、「山あり、谷あり」のリズムを心がける。細かく言えば、「起承転結」の4区分に分けて取り組み、それぞれの区分の中で、ヤマ場危機のリズムを刻んでいくこと。そして、次第に「結」、つまりラストに向かってテンションが高揚するように運ぶこと

・骨法その1「コロガリ」。引っ張られた糸が、もつれほぐれ絡んで、最後は初めの糸に収斂され、大空高く凧が舞い上がる、という展開の妙。コロガリ過ぎはだめ。「コロガリ」は、観客と適当に駆け引きをしながら、意表を突くカードを次々に見せていくのを最良とする

・骨法その2「カセ」。主人公に背負わされた運命、宿命。カセはマイナスに作用するファクターとなる。カセが設定され、アヤ(カセから生ずる波乱)が効いたドラマは、文句なしに面白い。しかし、カセが凡庸だと、アヤもちゃちなパターンドラマに終わってしまう

・骨法その3「オタカラ」。主人公にとって、何ものにも代え難く守るべき物(獲得すべき物)であり、主人公に対抗する側は、そうさせじとする具体的な核のこと。サッカーのボールのように、絶えず取ったり奪われたりすることで、ドラマの核心が観客に理解される

・骨法その4「カタキ」。敵役のことで、「オタカラ」を奪おうとする者。ただし、一目見てすぐ「悪」だとわかるような「カタキ」は、現代劇では浮いてしまう。内面的なこと、トラウマや劣等感など、内部から主人公の心を侵害しても「カタキ」になれる

・骨法その5「サンボウ」。進退ギリギリの瀬戸際に立った主人公が、その性根を見せて、運命(宿命)に立ち向かう決意を示す地点。これがないと、そこから先のドラマは視界ゼロとなって、どこに着くやら観客は見当がつかなくなってしまう

・骨法その6「ヤブレ」。破、乱調のこと。どんなスーパーマンでも、一度は失敗や危機、落ち目に出くわさないと、存在感が稀薄になる。失意の主人公がボロボロになって、酒に溺れたり暴れたりする芝居は、役者にとっても、見せ場となる

・骨法その7「オリン」。ヴァイオリンのこと。母と子の別れの場面には、ヴァイオリンを弾き鳴らして観客の涙を誘ったことから、感動的な場面のことを「オリンをこする」と呼ぶようになった。「オリン」の設定は、「ヤブレ」のあと、次の「ヤマ」の一歩前が最適

・骨法その8「ヤマ」。俗に言うヤマ場、見せ場、クライマックスのこと。「ヤマ」は、観客が抑制してきたものを、ここぞとばかりに一気に解き放つもので、何より作者自身がまず感動し、我を忘れるようなボルテージの高い場面にしなくてはならない

・骨法その9「オチ」。締めくくり、ラストシーンのこと。ラストシーンは、そのドラマが装う衣装の中で、最も華やかで美しく、高貴な香りを湛えた衣装でなくてはならない。作者は、ここで思い切り楽しみつつ、細心の気遣いをもって、書き上げなくてはならない

・骨法その10「オダイモク」。お題目、つまりテーマのこと。脚本を書き上げたところで、さて、自分が観客に伝えようとしたテーマは充分に示されたかどうか、もう一度オダイモクを唱え直して検証することが肝要



本書は、物語の作り方のノウハウを目にできる貴重な書です。世の中は、キャラクターブームですが、いくら出来栄えのいいキャラクターでも、物語性のないものは、人気がありません。

商品についても、人間についても、その物語性を作り上げることが、共感を得る第一歩です。共感を得るという点で、物語性は避けて通れないのではないでしょうか。


[ 2013/09/08 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)
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