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「・・・とは」の哲学

『唯識わが心の構造「唯識三十頌」に学ぶ(新・興福寺仏教文化講座)』横山紘一

唯識 わが心の構造―『唯識三十頌』に学ぶ (新・興福寺仏教文化講座)唯識 わが心の構造―『唯識三十頌』に学ぶ (新・興福寺仏教文化講座)
(2001/09)
横山 紘一

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唯識観とは、自己と世界の真のありようを見究める観察方法です。その観法の根拠となるのが「唯識思想」です。その唯識思想について、著者が興福寺仏教文化講座で講義した内容をまとめたものです。

仏教というよりか、「仏道」(仏に成る道)について詳しく述べられている書です。勉強になった箇所が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・「心の中に一切を還元して観察する」ということは、具体的には「対象に成りきる」ということ。対象に成りきってしまう。これが唯識観の本質。その成りきった対象をもう一度心の外に投げ返し、そこに日常生活を送るなら、今までと違った世界が展開してくる

・「眼識」「耳識」「鼻識」「舌識」「身識」は前五識、視覚~触覚の五感覚。「意識」は第六意識。この心の意識の運用によって、人間は善にも悪にもなる。以上が表層の心理。唯識ではさらに深層心理の「末那識」(自我執着心)と「阿頼耶識」(根本心)がある

・阿頼耶識に蓄えられた種子から眼識~末那識が生じ、肉体が生じ、さらに自然界が生じる。すなわち、阿頼耶識に所蔵される種子とは、「あらゆるものを生ぜしめる可能力

・私たちは生まれたからには、社会に役立ちたいと思っているが、それは表層心理で理性的にそう考えるのであって、決して全体としてそうではない。私たちは何をするにしても自己中心的。末那識が表層心理にかかわらず、常にドロドロと自己中心的に働いている

・白隠禅師の「坐禅和讃」の中に、「坐の功を為す人は、積みし無量の罪滅ぶ」という一句がある。「わずか三十分坐っても、その行為が深層に積もり積もった煩悩を焼いてくれる」という意味。「自己の心の汚れは、自己の心によってしか除くことはできない」

・極楽往生を願うという往相は、再びこの世にもどって人々を救いたいという還相の願いがあって初めて許されるもの

・日本の仏教は現世利益志向が強いため低く評価されるが、現世利益は一概に悪くない。なぜなら、花が咲いて実がなるように、現世利益を経ないと、出世利益にならないから

・阿頼耶識は善でも悪でもない無記。そもそも、善悪は人間が自分のエゴによって考え出したもの。そういった意味で、あらゆる存在は無記という主張は、重い意味を持っている

・私たちの根底をなす阿頼耶識が善でも悪でもなく無記であるからこそ、私たちは悪から善へと変化していくことができる

・私たちは、日常生活において、物質的なものだけでなく、知識を増やしたいといった精神的なものも蓄積する。しかし、それらが蓄えると、ますます執着心が増していく

・阿頼耶識は、業すなわち行為の結果を貯蔵するはたらきがある。行為の結果を種子あるいは習気という。習気の「習」は繰り返すという意味。繰り返し繰り返し行う表層の行為の結果がどんどん薫習されていく場所、それが深層心理の阿頼耶識

継続的な向上努力を、仏教では「精進」という。そうした精進によって、すばらしい業を積み重ね、阿頼耶識(自己の根源的な心)から煩悩を払拭して、それを清らかなものに戻していくことが、私たちにとっての生きる目的

・「言葉が現象を生み出していく」という事実認識から名言種子という考えができてきた

・私たちは、地球上に発生した命の大きな流れの一滴にしかすぎないのに、それを忘れて自分自身と「自己存在」に捉われ執着し、苦しみ悩み対立しているところに問題がある

・自我執着心をなくせばなくすほど、自己は鏡のように光り輝き清らかなものになっていく。そこが空性を悟るということになる。そのように空性に達することが、菩提を獲得するということ

・「自己を習ふといふは、自己を忘るるなり。自己を忘るるといふは、万法に証せらるるなり」(道元禅師)の「万法に証さらるる」というのは、自分が悟るのではなく、一切のものが自分を悟るということ

・「この身を度する」のが「上求菩提・下化衆生」という誓願を持って生きる菩薩の生き方。このうち「上求菩提」が自利行で、宇宙の真理を悟ること。「下化衆生」が利他行で、人々を苦しみから救うこと。そういう願いを持って生き抜けば、すばらしい一生が送れる

・一体この世は何なのかというと、唯だ自然があるだけ、唯だ他人がいるだけ、唯だ心があるだけ。とにかく、対象に成りきったとき、そこに現成してくることしかない



本書は、350ページに及ぶ大作です。仏道を本格的に学ぶための専門書です。今回は、その中で、やさしいと思われる箇所だけを抜粋して、紹介させていただきました。

仏道と真剣に向き合いたい方、人間の心の構造をもっと知りたい方には、最高で最上の書になるのではないでしょうか。


[ 2013/08/23 07:00 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)
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