とは学

「・・・とは」の哲学

『スウェーデンのニッポン人―人がその地に求めたもの』

スウェーデンのニッポン人―人がその地に求めたものスウェーデンのニッポン人―人がその地に求めたもの
(2012/12)
ノルディック出版編集室

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北欧の本」を紹介するのは、23冊目です。スウェーデンの本を紹介するのは、9冊目です。今までに、さまざまな角度から、北欧の本をとりあげてきましたが、本書は、スウェーデン在住の一般の方22人にインタビューした書です。

したがって、良くも悪くも、スウェーデンのありのままの姿が描かれています。その人たちから発せられる意見は、浮ついたものではなく、地に足ついたものばかりです。その中から、参考になった考えを要約して、一部紹介させていただきます。



・スウェーデン人は少しシャイで、積極的に話しかけてはこない。しかし、こちらから話しかければ、親身になって最後まで話を聞いてくれる。家に積極的に招待されることもない。でも、遊びに行かせてと言えば、歓待してくれる。スウェーデン人は日本人に近い

・スウェーデンでは、日本のように新卒を雇って、社会人として鍛え上げるという親切な制度はない。そのため、若者たちは、不況の影響を強く受けてしまい、就職が難しい。しかし、いつも楽しそうにしている

・本当に人間らしくないのは、失業=不幸とか、失業する奴はダメという発想がある社会。そんな社会では、失業という恐怖におびえ、会社にしがみつかざるを得ない。定時に帰れるのに、付き合い残業をする。嫌な仕事も引き受けるしかなくなる

・スウェーデンでは「格差」を感じることはあまりない。低所得の人だろうが、外国人だろうが、住むエリアが偏っているわけではない。学校にも「格差」がない。高級デパートもなければ、高級レストランもない。この「格差」がないことが、幸福度を上げる要因

・スウェーデン社会では、「個人」がとても強く、人間関係はドライ。子供との関係も、老親との関係も、友人隣人と変わらないと思えるほどドライ。それは、「早く大人になること」が子供たちに期待されてきた結果だと考えられる

・多くの老人は、老人ホームや訪問サービスなどの形で福祉の恩恵を受けており、実子の手で介護されている数は少ない。この裏には、老人が「孤独や寂しさに耐える強さ」を求められているということがある

・多くのスウェーデン人は、他人にさほど関心を示さない。それは、障害者、老人、困っている人に対しても、である。よく言えば、それは「個人」としての自分を大事にするために、他人の「個人」も尊重するということ

・スウェーデン人は、「助けて!」と大声をあげて、「あなたに助けてほしい」と指名されて初めて、「私の助けが要るの?」と気づく。個々のスウェーデン人が不親切なわけではない。察してくれない、気を利かせてくれない、といった甘えが通じないだけ

・恋愛感情が消えれば、躊躇ない別れが訪れる。もともと「個人」と「個人」なのだから、離婚やシングルに戻ることは、恥でも負でもない

・「個人」が「全員働く」スウェーデン社会では、「働いている」ことが大切で。どのくらい熱心に働いているかは、さほど問題ではない。「全員が働く社会」は、働くには困難のある人、働く能力の劣る人、働く意欲の乏しい人にも、仕事を与えなくては成り立たない

・スウェーデンは労働者視点。日本は、この十年、消費者視点が強すぎる。サービスを受ける側の要望が優先されるべき、お金をもらっているなら職務に忠実であるべき、といった日本人の価値観を持ち込み、スウェーデン社会に期待すると、失望する

・昔から北欧の人は、スペインの島へ避寒旅行をしていた。最近では、冬の三カ月、南の暑い国へ行くのがステータス。スウェーデン社会は、冬の逃避行を習慣として大目に見る

・スウェーデンでは、今や国民の5人に1人が外国人。ストックホルムのような大都市では、スウェーデン人よりも外国人の方が多い。街のたたずまいも空気も昔と変わってきた

・日本人は、表に現れない内面世界を大事にする。スウェーデンでは、表に現れる外面世界がすべて。言いなさい、主張しなさい、それがあなたの現実の姿であるということ

・この世の諸悪の根源は、つまらないインテリジェンスと男の闘争本能。権力欲、独占欲所有欲と、その暴走。スウェーデンでは、男女平等が近づき、将来的に、女性天下が来る

・「哲学の部屋」というラジオ番組では、招待された哲学者が3~4人、普段の考えを出し合い、考え方のデモクラシーが狙いである。聴取者は、自分の不十分な点が明白に分かる

・スウェーデンでは、家族のルーツを研究している人が多い。趣味としてだが、かなり高い専門知識が要求されるだけに楽しみもある。テレビやラジオでも、その種のものがある



本書で、素顔のスウェーデンを知ると、ドライで合理的で、人情味がないと受け取る日本人も多いように思います。

でも、それは、お客様第一主義ではなく、労働者第一主義だからであり、全員が働き、自立を求められる社会だからです。どちらが、幸せかよく考えてみる必要があるように思います。


[ 2013/08/22 07:00 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)
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