とは学

「・・・とは」の哲学

『万能人とメディチ家の世紀―ルネサンス再考』池上俊一

万能人とメディチ家の世紀―ルネサンス再考 (講談社選書メチエ)万能人とメディチ家の世紀―ルネサンス再考 (講談社選書メチエ)
(2000/09)
池上 俊一

商品詳細を見る

15世紀イタリアに花開いたルネサンスとは何だったのか?そのルネサンスを支援したメディチ家とは、何者だったのか?以前から興味がありました。

本書は、建築家、自然科学者、音楽家、画家、詩人、哲学者など万能人であったフィレンツェのアルベルティの著者をもとに、ルネサンスをひも解こうというものです。

閉塞感漂う状況から活気に満ちた状況へと劇的な変化をもたらしたルネサンスに学ぶことは、今の日本において大切だと思います。そのヒントが本書に多く載っていました。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・メディチ家が、巧みな制度の操作で権力の頂点に昇りつめたのは、この時代のフィレンツェに都市のイデオロギーが市民の心にあったから。14~15世紀のイタリア各都市の市民の胸には、ユートピアの都市イメージが、大きく成長していた

・由緒正しき都市の来歴、公共建築物の美しさ、市民の豊かさと慈悲深さと高貴さ、などを称える都市賛美の精神は、市民たちに共有され、戦時や危機の際には、ひときわ高揚した。公共の福利より私利を重んじる者を断罪する、市民的愛郷心もあった

・政体が目まぐるしく替わっても、それとは無関係に、都市は法と正義と秩序が支配すべきだとの観念は健在で、市民は、公共建築(道路、広場、教会、市庁舎、ギルトホール、市壁、橋、泉など)の美化・強化には熱誠を示し、しばしば無償の奉仕をした

・メディチ家やメディチ派は、こうした市民に広く流布した祖国愛を逆なでせず、温存・促進しようと政治的に努めた。公共領域への関心は、指導階層のみならず、団体、階級、党派を超えて市民を一体化する「都市のイデオロギー」になっていた

・メディチ家の下には、中小パトロン(上層市民、教会・修道院、ギルドなど)が無数にいた。パトロンが絵や彫刻を依頼するに当たり、画家や彫刻家との契約には、金銭支払い、期限などのほか、テーマや構図、色や絵具の材質など細密な指示がなされていた

・15世紀には、多くの芸術家や作家が、イタリア諸国の支配者層や高位聖職者に絵画や彫刻、書物を捧げ、かわりに、贈り物お金、ときには閑職年金まで手に入れた

・北方のヴェネチアやジェノヴァは地中海貿易に奮励し、イスラム商人とも取引して、奢侈品貿易と奴隷貿易で利益を上げた。内陸にあるフィレンツェは毛織物業で世界に雄飛した。こうした商業による大きな収入が、都市の富を増大させ、ルネサンス文化を支えた

・商人たちは、お金を大切にするよう息子たちに説き、また、お金があれば、妻も友人も名誉も、真実さえも手に入るのだと説き、貨幣経済を賛美した

・13世紀に誕生していた為替手形に加え、14世紀後半に貸借の決済が、銀行預金者の間で、振替、銀行小切手など、現金を動かすことなく行われるにおよび、近代的銀行が誕生した。15世紀には、フィレンツェで一種の為替市場(取引市場)センターが産声をあげる

・複式簿記の導入により、正確迅速な収支決算がつくれるようになった。この抽象的でテクニカルな制度が、数学、法律、言語、地理、経済を学び、ローマ古典を愛読する知的商人の登場をもたらした

・商人にとっては、神への信仰は金儲けに無関係ではなく、善行(喜捨、祈り、ミサ)とあの世での報いは正確に対応する勘定高い一種の契約だった

・イタリアで急速に印刷術が普及したのは、ものを欠く学者、作家が多く、字の読める層が広範にいて、学校、個人的勉学、仕事、趣味などで大量の需要があったから

・「建築論」でアルベルティは、「量の調和」「線の調和」「位置の関係」を通じて、美を「均整」と「自然」に関連させた。建築は、均整を可能な限り追求し、威厳と優美と権威を獲得し、評価されるとした

・贅沢品の嗜好が、一握りの富裕者の独占ではなかった。市民の多くが、家の内部を飾るために、美術品や工芸品の購買熱に浮かされた

・女性の役割は、「家を継続させる(子を産み育てる)」「有利な姻戚関係を築く駒になる」「結婚持参金を持ってくる」こと。女性が自己実現できる場は、おしゃれを誇示して、宗教の場などに出向くだけであった

・15世紀のフィレンツェでは、貴族や上層市民たちが、競って、郊外にヴィラ(自給自足的な農園付き別荘)を所有し、サロンとして活用された。夏の避暑地としても利用された



都市の名誉をかけて、各都市が、街の美観、芸術の振興などに競い合ったことがルネサンスのもとになっています。

競い合う過程で、権力者たちが、私利私欲に走らず、市民が夢見る都市の名誉にお金をふんだんに使ったことで、ルネサンスがより大きく花開いたように思います。

各都市が、一丸となって、真善美を競い合った結果、イタリア全体も活況を呈することになりました。今の日本に必要な政策が、ここにあるような気がします。


[ 2013/08/18 07:00 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL