とは学

「・・・とは」の哲学

『水危機・ほんとうの話』沖大幹

水危機 ほんとうの話 (新潮選書)水危機 ほんとうの話 (新潮選書)
(2012/06/22)
沖 大幹

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著者の本を紹介するのは、「水ビジネスに挑む」に次ぎ、2冊目です。国の防衛で、食料とエネルギーの自給率がよく話題になりますが、日本は、水に恵まれているために、水の自給については話題になりません。

しかし、世界では「水危機」が叫ばれています。ということは、水を有利なカードにすることができるということです。水は立派な資源です。その認識に立って、水を考えるのに最適の書です。その一部を紹介させていただきます。



・水道料金は1t=1000ℓ当り全国平均で200円。さらに上水道使用量に応じて、下水道料金が徴収される。東京―大阪間をトラックで運べば、1t=1000ℓ当り輸送費が1万円かかる。1000ℓ200円の水道水の価格は50倍になってしまう

・水は基本原則として、流域を越えて運べない、貯めておけない。水はローカルな資源。ローカルな資源であるということは、一物一価の原則が成立しないということ。水の値段は地域によってばらばら

・飲み水は1日1人当たり2~3ℓ(飲料水1.2ℓ、食料水1ℓ、代謝水0.3ℓ)必要。この必要量は、毎日体から失われる水分の補給する分

・日本の家庭用水の使用量の内訳は、トイレ28%、風呂24%、炊事23%、洗濯16%、その他9%

・日本の1人当たり水道水使用量は、1965年に169ℓだったが、高度成長に伴って伸び続け、1995年に322ℓになったが、2000年以降減り始め、2008年には300ℓを割ってきている

・水も電気もピーク時の需要に応じて設備投資する必要があるので、ピーク時の使用量は減ったほうがありがたい。しかし、通常時の節水を呼びかけるのは、商品を買わないでくれ、と言われているに等しい

・地球上を循環している水資源の1割を人類は取水している(農業用水、工業用水含む)

・貧しい国々では、自然条件として、水が足りないのではない。必要な水を適切に利用可能にする水インフラが不足しているため、水が使えない

・地下水は、土地に付属する財だとみなされ、汲み上げポンプの電気代だけで入手可能。大量に汲み上げる企業側と周辺住民との間での争議が世界中で生じている

・比較的水が使える地域では米だが、乾燥地域は小麦。何を主食としているかは、どの程度水を得られるかによって決まってしまっている

・森を緑のダムと呼ぶならば、積雪は白いダム

・都市での水の自給自足は難しい。都市とは、食料、水、エネルギー、人材の供給を郊外に頼っている存在で、都市の問題は、周辺地域と一体となって解決していく必要がある

・木が生えていると豊富に水が使えるのではなく、水が豊富な場所に木が生える

・無降雨時の河川流量の多い少ないは、森林に覆われているかよりも、流域の地質によるところが大きい

・人のみならず、木が育つのにも水が必要。人と森林は水資源を奪い合う関係にある

・日本の河川では、洪水時には平常時のざっと100倍の水量が流れる

・川幅の拡幅や河床の浚渫など、河道を流れ得る水の量を増やす治水事業は、下流から順次整備していくのが常識

・産業がなくて困っている地域に資本が投下されるのは喜ぶべきこと。よほど資源略奪的な事業でない限り、外国資本による日本の山林買い占めに過剰反応するのは得策ではない

地下水の過剰汲み上げを規制してやめさせることにより、低下した地下水位が比較的速やかに回復しても、一旦沈下した地盤は元に戻らない

・欧米の大規模民間水道事業会社は、近年になって、採算の苦しい途上国から撤退傾向にある。やみくもに水事業に進出すればいいというものではない。水ビジネスは、収益率が地味な割に、投資規模が大きくならざるを得ず、資金回収も長期に渡る



水は単なる飲料水だけでなく、農業用水、工業用水として、重要な資源です。水が豊富にあるということは、農業や工業の輸出に不可欠です。しかも、水は重くてかさばるので、簡単に移動できません。

こういう視点で、日本の豊富な水をどう生かすかが、今後の国家戦略にとって重要になるのではないでしょうか。


[ 2013/08/15 07:00 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)
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