とは学

「・・・とは」の哲学

『有閑階級の理論』T・ヴェブレン

有閑階級の理論 (岩波文庫)有閑階級の理論 (岩波文庫)
(1961/05/25)
T. ヴェブレン

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著者は、1857年生まれの経済学者です。しかし、経済学者なのか社会学者なのか、人類学者なのか民俗学者なのか、とらえどころのないところがあり、生きている間はあまり評価されませんでした。

近年ようやく評価され始め、人間の見栄や欲望が、いかなる消費を生み、どのような階級を形成していくのか、つまり、人間の愚かさと経済学を結びつけた理論が、人々の関心を惹くようになっています。本書の興味深い箇所を要約して、紹介させていただきます。



・上流階級は、慣習によって、産業的な職業から免除されて、名誉を伴う職業が約束されている。これらの免除されている一事が、彼らの卓越した地位の経済的表現である

・目に見える武勇の証拠(戦利品)は、生活の装飾品として不可欠。狩りや襲撃の戦利品である略奪品は、秀れた力の証拠として賞賛される。こうした略奪品が、成功した攻撃の自明の証拠として、役に立つ

・女に対する所有権は、低次の段階の野蛮文化の中で、女性捕虜の略奪とともに発生する。女を略奪したり、専有したりする本来の理由は、戦利品としての有用性である

・所有権は、成功した襲撃の戦利品として保有される略奪品であることをもって始まった。所有されている物や人の効用は、大部分、その所有者と、略奪対象であった敵との競争心にもとづく比較に由来する

・名声の根拠としての財産の強調は、富の蓄積の初期段階では不可欠である。労働を回避することは、富の証拠であり、社会的地位の刻印である。富の賞賛は、閑暇を導く

・洗練された趣味、行儀作法は、上品さの証拠。というのは、立派な教養を身につけるためには、時間と努力とお金が必要であり、時間とエネルギーを労働に吸い取られてしまっている人々には、達成し得ないものだから

・顕示的閑暇は、立ち居振る舞いの入念な修練や、どのような消費財が上品であり、それを消費する上品な方法はどんなものか、に関する鑑賞力識別力の教育へと発展していく

・食べ物や飲み物を巡る品質上の優秀さに関する儀式張った区別が発展すると、それは有閑紳士の訓練や知的活動にも影響を及ぼす。もはや、力と富と蛮勇を持つ男では不十分で、頭が足りないと思われないためには、眼識を養わなければならない

・有閑階級固有の職業になった仕事は、すべて高貴なものになる。すなわち、統治、戦闘、狩猟、武具や装具の世話等々。他方、産業階級固有の仕事、たとえば、手作業や他の生産的労働、使用人のサービス等々という仕事は、すべて下賤なものとなる

・立派な評判を得るための基礎は、金銭的な力に依存している。金銭的な力を示し、高名を獲得したり、維持したりする手段が、閑暇であり、財の顕示的消費である

・田舎の住民の間では、体面は、貯蓄や家族の快適な暮らし向きによって担われている。こうしたことは、隣近所の噂話を通じて広まる。消費が大きな要素を占めてくるのは、田舎より都市のこと

・美しさを規準に評価される財の効用は、財がどれだけ高価であるかに密接に依存している

・家庭の長のために、代行的な消費を行うことが、女の任務になり、女の衣服が、この目標を視野に入れて工夫された

・職業は、大別して、「金銭的な職業」と「産業的な職業」に分けられる。有閑階級の経済的利益は金銭的な職業(所有権や取得と関連する)にあり、労働者階級のそれは、産業的な職業(生産と関連する)にある。有閑階級への入口は、金銭的な職業を通じて開かれる

・ギャンブル好きな性向は、略奪的なタイプの人間性に属する特徴。ギャンブルを行う要素は、幸運を信じる心

暮らし向きのよい女性聖職者の日常生活は、平均的な男(産業的職業に従事している男)の日常生活に比べて、身分の要素をより含んでいる

・教育の要素とは、教育を受けていない人々を感銘させたり、彼らにつけこんだりしようという目的によって、きわめて魅力的で効果的なものである



著者が、100年前に指摘した、この構造は、根本的には変わっていません。

お金やモノを得た後に欲するのは、名誉や名声であり、資格の必要な職業、有名大学出身、文化や芸術に対する造詣の深さなど、一代では築けないもの、有閑階級にならないと、手に入らないものです。

著者は、その行為が、略奪行為の延長の愚かで卑しいものであると喝破しています。この構造は、人間の本能に根ざしたものである以上、今後とも大きく変わらず、続いていくのではないでしょうか。


[ 2013/08/12 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)
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