とは学

「・・・とは」の哲学

『知られざるインテリジェンスの世界』吉田一彦

知られざるインテリジェンスの世界知られざるインテリジェンスの世界
(2008/11/18)
吉田 一彦

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インテリジェンスを日本語に翻訳すれば、古くは、忍者やスパイなどの諜報活動のことを指しますが、現在では、情報活動、情報収集、情報分析なども含めた意味になります。

嘘の情報を流したり、機密情報を入手したりすることの方が、実際の戦いよりも、優劣を決める場合が多いと言われています。それらを体系的に著したのが本書です。参考になる点が多々ありました。その一部を紹介させていただきます。



・情報活動は、「収集」「分析」「隠密作戦」「対敵情報活動」の四つに分類できる

・情報活動は、まず生のデータを集めるところから始まる。この生データを統合して分析することで、判断の基礎とする。情報の収集には、大別して、1.「人間による方法」2.「専門技術による方法」3.「公開されている資料による方法」の三つがある

・スパイのことを中国では「沈底魚」と呼ぶ。アメリカのような移民に寛容な国では、移住した後、子供に高等教育を受けさせ、軍事や科学の最先端を行く機関に就職させれば、必要な情報がとれる。正体を隠すのも容易

・陸軍の将校がドイツに留学すると、ホームヘルパーという現地妻があてがわれ、これで「日本軍人はたいていイカレちゃう」。ハニートラップ(蜜の罠)は、女性が男性に近づいて親密な関係になり、それをネタにして情報を得るのが定番

・情報をでっち上げ、想像力の限りを尽くして飾り立て、いかにも重要な機密情報であるかのようなお膳立てをして、法外な値段で売りつける。この種の偽物作りのことを、業界用語では「製紙工場」と呼ぶ。被害にあっても、騙される方が悪い

日本兵捕虜は、煙草をもらい、ご飯を食べ、休息をとった段階で、やっと心を開いて話し始める。まず家族のこと、健康、出身地や学校など軍隊と関係ないところから聞き始め、そしてだんだんと所属していた部隊、その隊長、指揮官は誰かの核心に迫る

捕虜文書の中には、日本軍の戦闘序列、地図、守備隊兵力、保有武器の種類とその数、周辺海域の水路図、防備状況に関するものが含まれていたから、以後のアメリカ軍の作戦に資するところが大であった

・湾岸戦争の時、GPSがなければ、多国籍軍の戦車は、広大なイラクの砂漠地帯で自由に行動できなかった。衛星利用によって、アメリカ軍主導の多国籍軍は、圧倒的優位を得た

・公開されている情報源には、新聞雑誌、テレビラジオ、ネット、地図、政府報告、要人演説、統計表などがある。アメリカでは、情報関連の予算で、公開情報収集に割り当てられる金額は全体の1%に過ぎないが、情報の生産量は全体の40%近くを占めている

・旧陸軍情報部が傍受したアメリカのラジオ放送で、アメリカ軍が南方地域で新しい作戦を起こす2、3カ月前に、必ず薬品会社と缶詰会社の株が急騰するという情報もあった

・旧陸軍では、作戦部が情報部を軽視して、作戦計画を策定していた。そのための不利な情報は無視された

・情報分析官にとって厄介な問題は、必ずしも理屈通りに動いてくれないこと。とてもありそうにないことを、可能性として上司に納得させることは容易ではない

・情報分析官の直面する問題点で最もよく知られているのは「狼少年症候群」。つまり、警告を発するのはよいが、空振りが連続すると、警告を受け取る側が慣れっこになる。そして往々にして、注意が払われなくなった時に恐れていた事態が発生する

・情報分析で重要なのは、将来の予測をすることだが、これがなかなか困難で、失敗すれば責任をとらされる恐れがある。これを回避するために、型にはまった安易な対応がなされる。このような報告書では、将来の見通しよりも、最近発生した事柄ばかり記載される

・情報機関は秘密を守らねばならないから、その情報にアクセスできる関係者の数を減らす必要がある。しかし、情報の見落としは、集まった情報量が少ない時に、よく発生する

・相手側のスパイ活動については、単にそれを阻止するだけでは物足りない。できることなら、相手の情報分析力に目標を定めて、ミスリードするような方策を思いつけば、相手をこちらの思う方向に誘導できる

・相手がそうするだろうと思っていること、あるいは、そうあってほしいと思っているところを衝けば、欺瞞作戦成功の確率は一気に高まる。相手の心理を読みとって、自己欺瞞に誘い込んでいけば、正確な情報が相手に届いても、自分で排除してくれる



戦わずして勝つこと、できるだけ少ない人数、少ないお金で勝つこと。そのためには、知恵比べが重要になってきます。

日本には、卑怯なことをするのを好まないという風潮がありますが、生きるか死ぬかの真剣勝負では、そんな悠長なことは言っておられません。本書には、できるだけお金をかけずに勝つ方法が詳しく載っています。参考になる点が多い本でした。


[ 2013/08/05 07:00 ] 戦いの本 | TB(0) | CM(0)
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