とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『マインド・コントロール』岡田尊司

マインド・コントロールマインド・コントロール
(2012/12/06)
岡田 尊司

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著者は、精神科医であり、作家です。「社会脳・人生のカギをにぎるもの」に次ぎ、2冊目の紹介となります。

本書は、マインドコントロールを「個人の洗脳」と「集団の洗脳」(消費者・社員・有権者など)という二つの側面に分けて、考察しています。搾取されないためには何が必要かを知ることができます。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・個人レベルのマインドコントロールも、集団レベルのマインドコントロールも、使われ方一つで、人間を操り人形に変える非人道的搾取技術にもなれば、生活や人生のクオリティを高め、可能性の限界を広げる有用な手段にもなり得る。毒にも薬にもなる劇薬

・「トンネル」の仕掛けには、二つの要素がある。「外部の世界からの遮断」と「視野を小さな一点に集中」すること。トンネルの中を潜り抜けている間、外部の刺激を遮断されると同時に、出口という一点に向かって進んでいるうちに、いつのまにか視野狭窄に陥る

・小さな集団で暮らし、一つの考えだけを絶えず注ぎ込まれると、その考えは、その人自身の考えとなる。また、その小集団や仲間への愛着ゆえに、それを覆したり、期待と異なる行動ができなくなる。そこから逃げれば、仲間を裏切り、自分の存在を卑しめてしまう

・純粋な理想主義者が抱えやすい一つの危うさは、潔癖になり過ぎて、全か無かの二分法的思考に陥ること。自分たちと信条を同じくしない者は、すべて敵であり、悪だと見なされていく。離れていく者は、裏切り者であり、許せない存在となってしまう

・相手が騙されたと気づかずに相手を騙すことができれば、騙す側は、むしろ「味方」や「善意の第三者」に収まることができる。騙された人は、むしろ良いことを教えてくれたとか、助けてもらったとか、目を開かされたと感じ、感謝や尊敬を捧げる

・社会的動物は、群れで暮らすために、愛情や信頼関係を結ぶという特性を進化させてきた。ところが同時に、人類は高い知能を持ったがゆえに、信じる特性を悪用することを覚えた。親しみや愛情を利用して、信用させ、思い通りにコントロールする技を生み出した

・独裁者やカルトの狂信的指導者から、独善的な上司や配偶者、親、いじめに走る子供まで、本質的な共通項は、「1.閉鎖的集団の中で、優位な立場にいること」「2.弱者に対する思いやりや倫理観が欠如していること」「3.支配することが快楽になっていること」

被暗示性の高い人の特徴は、「1.人の言葉を真に受けやすい」「2.信心深く、迷信や超常現象を信じる」「3.大げさな話をしたり、虚言の傾向がある」

・幼いころ、安心できない環境で育った人は、不安が強い性格になりやすいだけでなく、人の顔色を気にする傾向や他人に依存する傾向が強まり、人から支配されやすくなる

・「私はできる」とか「それ(症状)が消える」といった言葉を唱えさせた「クーエの暗示療法」は非常に効果があったので、評判になった。それは、大人より子供に、都会人より田舎で暮らす人に、より顕著な効果を生んだ

・催眠中に与えた指示は、催眠後の覚醒状態でも、行動をコントロールし、その効果は長時間持続した。また、道徳的、信条的に望まない行為でも、巧みに操ることができた

・依存性パーソナリティの人は、むしろ強引な人押しの強い人を好む。命令や押し付けに逆らえず、相手の言いなりになりやすいだけでなく、そういう人に敬意を抱きさえする

・会社組織でも、独裁国家やカルトに通じる異様な状況が起こり得る。長時間のサービス残業が常態化した会社では、社員は、慢性的疲労を抱えるだけでなく、主体的な判断力や独創的な発想を持てなくなっていき、ノーと言えず、結局、使い潰されていく

・勉強のやらせすぎは、主体的な意欲がない子供を育てる。子供が「疲れている」状態は、絶対に避けること。余力を残しておくことが、子供を病まさず、可能性を伸ばしていく

・強力な暗示効果が奇跡を引き起こすことがある。優れた臨床家や教育者ほど、この原理を上手く使いこなす。「希望を約束する」ことで、実際にそれを現実にしてしまう

・人は心地よい体験をすると、それをもう一度求めるようになる。心地よい体験を与えてくれた者たちや場所に対して、愛着や親しみを覚え、それを肯定的に考えるようになる。自分をこんなに愛してくれる存在が、悪いはずがないと、理性より本能がそう思う

・カルト宗教は、大きく二つに分かれる。一つは、家族や愛といった絆を重視したもの。もう一つは、修行や祈祷により超常的パワーを手に入れるといった自己鍛錬に重きを置いたもの。前者は、大衆的、庶民的な宗教であり、後者は、エリート的な志向がみられる



日本の会社には、雇用者のような被雇用者が大勢います。すなわち、給料も安く、休みが少ないのに、懸命に働く人たちです。日本のホワイトカラーと呼ばれる人の多くは、これに属します。企業側のマインドコントロールのかけ方が上手ということかもしれません。

最近、マインドコントロールはいろんなところで使われています。マインドコントロールに引っかからず、搾取されない方法を身につけることが、人生にとって欠かせない技ではないでしょうか。


[ 2013/07/31 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)
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