著者の本を紹介するのは、「
ゼニの幸福論」「
銭道実践編」などに次ぎ、5冊目です。本書は、漫画以外で、60冊ほどある作品の中で、2冊目の書(1995年出版)で、ベストセラーとなったものです。
自著である「ナニワ金融道」やドストエフスキーなどの作品を例に出しながら、わかりやすく「お金」と「人間」を解説しています。それらの中から、参考になった箇所を要約して、紹介させていただきます。
・金に困って、
借金をすれば、そこから人生の苦闘が始まる。金のことで悩み、困惑し、狼狽し、煩悶し、疲労し、やがては、犯罪、夜逃げ、自殺にまで発展していく。これは、何百年の昔から、人間が繰り返してきた永遠のドラマ
・この世の中は、金持ちほど
ラクして儲かる。ラクとは他人を働かせて、自分は働かないでも儲かるということ
・人間は、置かれた立場でコロリと変われる。どんな奴でも、経営者という立場に立てば、ある程度の度胸がつき、「今月の売上が足りない」と思えば、
押しが強くなれる・集金のつらさだけは、もう二度と味わいたくない。子分を養うための営業の苦労は、人間を磨いて度量をつけてくれるが、
集金の苦労は、人間性を荒廃させてしまう
・ゼニは金利を生む。ゼニが生き物だというのは、この意味から。カネを持っている人間は、ここのところがよくわかっている。不労所得を受け取る人間がいる裏では、誰かが必死に働いている。
得をする人間の裏側には、損をする人間がいるということ
・本当の金持ちなら、バブル期にビルを建てて賃貸にしようとは考えない。もっと昔からビルを持って、他人に貸しているから、わざわざ建築費の高騰しているときに、ビルを建てたりしない。バブル期にビルを建てて失敗したのは、
一発狙いのビンボー人・コマーシャルというものは、
ビンボー人からゼニを巻き上げるためにつくられたもの
・人間は欲に弱い。その欲が、理想的な自分をつくりあげる方面に向かうと、コロッとゼニを払ってしまう。
ビンボー人は甘い夢に弱い・学校で「
保証人にならないように」と教えないのは、資本主義の経済活動が停滞してしまうから
・カネを借りる人間は、自分に
力がないくせに見栄っ張り。弱みを見せたくないから、逆にカネのあるフリをする。これぐらいのことを見抜かないと、金融業はやっていけない
・金融業者が、相手の信用を判断するのは、小さな約束を守るかどうかという点。約束の時間を守り、最初の条件をきちんと履行するかどうか。人間の本質は、
約束を守るという基本的な生活態度にあらわれる。その部分で信用できない人間は、すべて信用できない
・カネ貸しは、自分より賢い奴にゼニは貸さない。もしあなたが、金融業者から借金したとすれば、金融業者に「
こいつ、俺よりアホやな」と判断されたということ
・金融業者は弁護士にはカネを貸さない。追い込みをかけようにも、頭のいい抜け道を使われたら、手に負えなくなる。だが、医者には貸す。医者はいくら頭がよくても、
世間の知識に疎い。学校の先生や警察官、公務員もこの類。金融業者にとっては、絶好のカモ
・「毎日ご飯がいただけるのはありがたい」と労働者が思ってくれれば、資本家はラクができる。つまり、資本家と宗教家は
利害が完全に一致している
・人間は欲望をエネルギーにして生きている。欲望があるから、未来に向かって努力できる。だから、その欲望を捨てるなんてことは、さらさら考える必要がない
・資本主義の基本原理は、極めて単純明快。「買ったものを売って、利潤を得る」だけ。経営者は、労働者から労働力を買って、商品をつくり、それを売って利潤を得る。同じ給料を払うなら、労働者にはたくさん働いてもらわなければ困る
・これまでの歴史で、人間は宗教的戦争と経済的戦争を繰り返してきた。
神とゼニが、すべての戦争の原因
・自分を軽蔑する人間は、未来に希望を抱かない。明るい未来、希望ある未来を想像し、自分の力で創造していけるのは、ある程度、生活に余裕のある人間
著者が亡くなられて10年近く経ちましたが、現在でも、「ナニワ金融道」は人気です。その理由は、著者のお金と人間の本質を見る眼が、正しいと認識されているからだと思います。
底辺のところを歩んでこられた著者の眼は、今後とも、不滅なのではないでしょうか。