とは学

「・・・とは」の哲学

『植物の不思議な生き方』稲垣栄洋

植物の不思議な生き方 (朝日文庫)植物の不思議な生き方 (朝日文庫)
(2013/02/07)
稲垣栄洋

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本書には、植物の巧みな戦略が描かれています。外敵、競争、受粉、悪環境などに対して、植物たちは、どういう道を選んできたかがよくわかります。

植物たちの涙ぐましい努力は、われわれ人間社会にも参考になるところが多いように思います。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・アリストテレスは「植物は逆立ちした人間である」と評した。口に相当する「根」が一番下にあり、胴体に相当する「茎」がその上。生殖器に相当する「花」が、植物の一番上

・植物の葉の表面にはワックスの層でコーティングされている。これが城壁のように病原菌の侵入を防いでいる

・植物は活性酸素を除去するためのさまざまな抗酸化物質を持っている。ポリフェノールやビタミン類も植物が持つ抗酸化物質

葉を食い荒らす昆虫は、植物にとって実におそろしい敵。傍若無人に片っ端から葉をむしゃくしゃ食べまくる。病原菌に比べれば、体もすこぶる巨人で、まるで怪獣のよう

毒を盛るのは、戦わずして強靭な敵を殺す常套手段。力を持たない植物が強大な敵を倒すには、これほど有効な手立てはない。生き残るためには、卑怯などと言ってはいられない。かくして植物はありとあらゆる毒性物質を調合し、身を守る道を選んだ

・タバコの成分、ニコチンは害虫から身を守るための物質。野菜のえぐみも本来は防御のための物質。シソやネギやハーブの香り成分も、害虫を防ぐために植物が身につけたもの

・植物の毒を体内に蓄えて自らの身を守る昆虫は多い。それらの昆虫は、食べられるものなら食べてみろと、自らの体を毒々しく目立たせて、危険な毒を持つことをアピールする

・ボラタイル(SOS信号を出す揮発物質)を感知して、イモムシの天敵である寄生バチがトウモロコシを助けるべく駆けつける。寄生バチも、どこにいるかわからない餌のイモムシの存在を効率的に知ることができる。なんともうまくできた仕組みになっている

・人間を震い上がらせるアシナガバチやスズメバチでさえ、アリに襲われるのを恐れて、中空にぶら下がった巣をつくり、巣の付け根にアリの忌避物質を塗っている。アリの強さは他の昆虫に抜きん出ている。植物界には、そんなアリをボディガードに雇うものが多い

・リンゴ、桃、柿、みかん、ブドウなど木の上で熟した果実は、赤、橙、ピンク、紫色のように赤系統の色彩が多い。これは、鳥が赤色を最も認識するから

・葉のつき方は、5分の2や8分の3などのフィボナッチ数列の角度に従っている。植物は、黄金比に近似の5分の2(逆回り1.67)8分の3(逆回り1.6)を選んだ。それは、葉が重なりあわずに効率よく光を受けるためや、茎の強度を均一ににするため

・花びらは、ユリが3、桜が5、コスモス8、マリーゴールド13、マーガレット21、ヒナギク34。花びらの枚数もまた、フィナボッチ数列によって作り出されている

・「つる植物」は、「他人に頼れば苦労せずに大きくなれる」という図々しい生き方で、スピーディな成長をする。「絞め殺し植物」は、頼った相手を亡き者にして、財産を奪う

・花がここにある、ということを昆虫にアピールするため、花びらは「看板」がわり。昆虫に合わせて、早朝に店を開き、日中閉じるアサガオやツユクサの「営業時間」。植物にとって昆虫への「サービス品」が蜜。その蜜を一番奥に配置し、「案内板」を表に出している

・花が昆虫を呼び寄せるのは、蜜を食べてもらう代わりに、花粉を運んでほしいため。長居する困り者の昆虫に「いつまでいるのですか。そろそろ次の花へ行ってもらわないと困りますよ。こっちだって慈善事業でやっているわけじゃないんだから」と昆虫に仕向ける

・黄色い花が好みはアブ。白色好みはコガネムシ。紫が好みはミツバチ。赤色が好みは蝶々

・早春の花はアブ好みの黄色が多い。アブは移り気だから黄色の花は群生する。コガネムシは不器用だから白い花は平たく咲く。ハナバチは同じ花を識別できるので、紫の花は離れて咲く。蝶々は大量の花粉を遠くに運ぶので、赤色の花は大きく、大量の蜜を奮発する

・植物の果実は、実り熟すことが使命。実り熟すことは同時に老化を意味する。決心したようにエチレンを放出した果実は、自らを老いさせ、死出の旅を急ぐ

・ロゼット(タンポポなど)は冬の寒さに逃げることなく、冬の時と向き合って生きる道を選んだ。地面に張り着く葉は、光を受けながら寒さを避ける理想的な形



植物は、動かず、黙っているので、どうしても、見過ごされがちです。でも、この地球に、動物が棲みつく以前から、ずっと暮らしてきています。

その植物を観察すれば、人間社会の問題を解決するヒントがいっぱい詰まっているように感じました。本書は、その参考になる良書ではないでしょうか。


[ 2013/07/25 07:00 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)
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