とは学

「・・・とは」の哲学

『小さな暮らしのすすめ』月刊「望星」編集部

小さな暮らしのすすめ小さな暮らしのすすめ
(2012/03)
月刊『望星』編集部

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あまり広くは知られていませんが、月刊望星は、東海大学の創立者である松前重義が、敗戦直後の混乱した世の中に、「星に望みをつないで明日を生きよう」と訴えかけて、創った雑誌です。

その月刊誌に載せられた記事を編集したのが本書です。堅実な、小さな暮らしを営むことで得られる「幸せ」とは何かが、本書のテーマです。共感できたところが、数多くありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・面倒くさいことはしない、自分が嫌いなことはしないと、嫌なことを身の回りから消していった結果、人間同士のつながりが希薄になってしまった(小泉和子)

・日本文化は貧乏を洗練させてきた文化。茶の湯はその代表。茶室は粗末な農家のようだが、よく見れば非常に洗練されていて美しい。俳句もそう。日常のささやかなものの中から面白さを発見するという文化を育んできた(小泉和子)

・「未成熟な人間の特徴は、理想のために高貴な死を選ぼうとする点にある。これに反して、成熟した人間の特徴は、理想のために卑小な生を選ぼうとする点にある」(サリンジャー)

・林住期の「林に住む」というのは、「林で一人で瞑想にふける」ことを意味する。インド人が林住期を設定したのは、「聖」と「俗」の間を行ったり来たりしているところに、人間本来の自由を見出そうとしたから。これは、人間の普遍的な願望かもしれない(山折哲雄)

モノを持たないためには知恵がいる。工夫がいる。我慢がいる。今の世の中は、人を引きまわして、できるだけモノを持たせるようにできている。これだけモノがあふれ返った時代には、モノを持たないことこそ、最高の贅沢というもの(池内紀)

・とにかく効率的で便利で儲かるものをよしとする男的価値観と、心地よく美しいものをよしとする女的価値観がある。男的価値観は、経済社会の中では、持たざるをえない価値観(下重暁子)

・良寛は、何も持たず、世俗の栄達を望まず、そのかわり、この上ない自由を手にした人。自由を手に入れるためには、世間と戦い、自分との欲望とも戦わなくてはいけない。物に惑わされているうちは、自由な心になれないし、欲望の奴隷から抜け出せない(下重暁子)

・小さい変化は最終的に全体に対する影響力を持っていて、それによって全体が変わることがある。全体が変わり、一つの形が出来上がると、今度は個に強要するようになる。自然の仕組みはそういう相関関係がある(遠藤ケイ)

・自分に忠実に、個としてどう生きるのかということが大切。人に影響されたくないし、人に影響を与えたくもない。ただ自分が興味を持ってやりたいことをそれなりにやってきただけ(遠藤ケイ)

・田舎の豊かさとは、「食べ物」と「時間」、つまるところ最大の豊かさは「自然」(樺島弘文)

・過剰な消費に走らないためには、欲求を満たす別のものがあればいい。それが土に立つ文化、そこにある精神性、そんなものに馴染むことで内面が満たされることが、一番いい(金子兜太)

・消費に便乗する生活でなくて、自分が生産する生活表現する生活、それは小さな世界でいいから、積極的に自分を満たせる世界を持つといい(金子兜太)

・世の中との距離感、物との付き合い方で、腹を固めることが大事。腹を固めれば、新しい物や情報が氾濫しようが、しょせん自分は自分でしかないという立場に身を置けるから、そうブレたりはしない(金子兜太)

・「小さな生活」の土台は「勤倹貯蓄」だった。昔の人の価値観では、消費ははしたないことだった。少なくとも、人生の目標とするものではなかった。ところが、「消費の楽しみ」は戦後になって、庶民の誰もが獲得すべき「人権」の一部になった(犬田充)

・相互監視の強い日本では、自由に振る舞えない。絶えず他人に気を配り、気兼ねしながら不自由に耐えて生きていかねばならない。この社会では、放っておかれる自由がない。他人にオセッカイやチョッカイを出すのを躊躇しない人が人情家とされる(犬田充)

・日本社会で、自由な生き方をするためには、「世間」からいったん離脱しなければならない。例えば、「ヤクザもの」「世捨て人」「出家」「浪人」と呼ばれることに甘んじて生きるのも選択の一つ。「反骨の人」として、世間から距離を置くこともできる(犬田充)



欲にまみれて、世間を気にして、「大きな暮らし」をするほうが、よっぽど楽なように思います。

「小さな暮らし」をするには、自分をしっかりと築くことから始めなければいけません。ということは、忍耐とと時間がかかります。しかし、それに挑戦することが有意義であると、そっと教えてくれるのが本書ではないでしょうか。


[ 2013/06/23 07:00 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)
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