とは学

「・・・とは」の哲学

『自己組織化で生まれる秩序: シロアリ・量子ドット・人間社会』荒川泰彦

自己組織化で生まれる秩序: シロアリ・量子ドット・人間社会自己組織化で生まれる秩序: シロアリ・量子ドット・人間社会
(2012/09/14)
荒川 泰彦、松本 忠夫 他

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本書は、生物学系、工学系、社会学系の4名の教授が、「自己組織化」をテーマに、知を競い合う内容になっています。

生物の社会と人間社会の類似点を探ることによって、ハッと気づかされることがあります。この本のテーマ「自己組織化」についても、考えさせられることが多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・自己組織化とは、システムの下位レベルを構成している多くの要素間の相互関係に基づいて、システム全体レベルにおけるパターンが創発する過程のこと

・成熟社会あるいは持続可能な社会は、一見して停滞的で活力がないように見えるが、こういう社会にこそ活力が必要

・「内破(インプロージョン)、つまり内から爆発していく力によって、自己組織化が行われる」(哲学者ベルグソン)。成熟社会は、変化を通じた持続であり、変化をしない持続ではない。変化を通じた持続が活性化しているときに創造的進化が起こる

・企業でも社会でも、環境変化に右往左往せずに、内から爆発する力を発揮する組織へ転換するのが、管理を超えたエンパワーメント。近代社会は、効率化して確実さを求めようという反応に陥りがち。しかし、新しい価値は不確実性に耐え抜いたとき創造される

・今では、人の行為原則がかなり変わってきている。それをうまく活かすには、「管理」ではなく「編集」という考え方が必要になる

・自己組織化の第一の要因は「ゆらぎ」。これは、物理学で言えば、平均値からの揺れ。社会学で言えば、変則的な行動

・自己組織化の第二の要因は「自己言及」。制御によるゆらぎつぶしにあえば、ゆらぎからの秩序形成は起こらない。ゆらぎの中から、次の可能性(新たな秩序の種)を増幅させていく役割を果たすのが自己言及

・自己言及性は、しばしばシナジー現象を誘発し、これによりゆらぎが自己強化されて、新たな秩序形成へ向かう現象が引き起こされる

・高度経済成長時代のように、経済が繁栄してイケイケどんどんのときには、抑えて抑えてという「秩序維持の力」が作用しないと、社会が解体してしまう危険がある。しかし、低成長期、安定成長の状況になったときに必要なことは「活力

・社会の安定が求められているときこそ、個々の要素が活力に満ちている必要がある。これがベルグソンの言う「持続とは変化なり」ということ

自己組織化を促す条件とは、「1.創造的な個の営みを優先させる」「2.ゆらぎを秩序の源泉とみなす」「3.不均衡ないし混沌を排除しない」「4.コントロール・センターを認めない」の四つ

・物質であれ、生物であれ、人間社会であれ、内在するエネルギーやメカニズムがある種の法則に従って作用した結果、私たちが目にする「雪の結晶」のような形のものが現れる。そういう意味で、雪の結晶は自己組織化を最もよく象徴するものの一つ

・管理なしで頑張っている企業は200人が限界。部課長制を廃止して、問題が起こる度に、皆で会議ばかりやっている200人規模の会社があるが、それでは時間を浪費するばかりだと思われるが、実際には、二十数年もの間、好業績を維持している

・「ゆらぎ」を歓迎することが大事。変則的なことを考える人を抱え込んでおくこと。その割合は5%くらいが適当。大きな組織であれば、それくらいの人が変わったことをやっても、大勢に影響はない

・結局はフェイズ(局面)の問題。日常的に活発に働くのではなく、厳しい局面に備えて待機すること。軍隊にしても、演習こそはしているが、あまり働いてはいない

・シロアリも人間も従属栄養物といって、植物がつくった有機物に依存して生きている。ところが、シロアリは、同じ植物でも、死んだものを餌にしている。それは、シロアリが共生生物と共に生きているからこそできる。人間は悲しいかな未だそれができていない

・ソビエト連邦が崩壊したのは、社会主義が負けたからではなくて、社会の運営をすべて管理できるという思い込みが間違っていたから。たくさんの人間をいちいち管理できるわけがない。その管理コストは、経済的な生産性を駆逐するほど高くつく



本書を読むと、波風立てずに、人の言われるとおりにするというのは「高度成長時代の考え方」。みんなが張り切ろうとするのが「安定成長時代の考え方」。一見逆に思えることが、組織の真実であるとわかります。

力には、自分で変わろうとする力と、外圧に対応して変わる力の二つがあり、自己組織化とは、自分で変わろうとする力です。現代を生きる我々日本人は、もう少し、波風立てて、自分の思い通りに生きてもいいのではないでしょうか。


[ 2013/06/19 07:00 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)
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