本の副題が、「世界を変える発明・創造性イノベーションはここから生まれる」です。15世紀イタリアのフィレンツェでは、
メディチ家が文化人や芸術家を保護し、彫刻家、画家、詩人、哲学者、科学者、金融業者、建築家など、さまざまな才能ある人が集結しました。
異なる分野、学問、文化が交差する場では、既存の概念を組み合わせて、新しい非凡なアイデアが数多く生まれ、創造性が爆発的に開花します。これを著者は、「メディチ・インパクト」と名付けました。
本書の主旨は「
アイデアの交差点」を指南するものです。アイデアをどう見出すかのヒントが満載の書です。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。
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交差的イノベーションには、「驚きや意外性に満ちる」「これまでにない新しい方向に飛躍する」「まったく新しい分野を拓く」「自由にできる空間が生まれる」「追随者を生む」「その後何十年に渡っての方向性を提供する」「世界に影響を及ぼす」といった特徴がある
・「人の移動」「科学の相互乗り入れ」「コンピュータの飛躍的進歩」によって、交差点はかつてない勢いで増え続けている
・連想のバリアを壊すことに成功した人には、「
さまざまな文化にふれた経験」「既存の教育にはない学び方」「思い込みを逆転する」「
違う視点に立って物事を見る」といった共通点がある
・文化はルールと伝統によって既定される。ルールと伝統は一定の思考と行動の様式をもたらす。ここに、文化的多様性が連想のバリアを壊すのに、大きな効果を発揮する理由がある。多様な文化的背景と経験を持つことで、物の見方から自由になることができる
・伝統的な文化とのつながりを断ち切られた人や、複数の文化に徹底してさらされた人は、
幅広い仮説について考慮できる強みをもち、創造的イノベーションを行う回数が多くなる
・イノベーションをやってのけるのは、
独学で専門知識を身につけた人が多い。自分で自分を徹底して鍛えてきたというタイプ
・アーサー・ケストラー(ハンガリーの思想家)は、「創造性のプロセスと
笑いのプロセスが似ている」ことを指摘した
・新たに結合する要素が互いに遠いものであればあるほど、そのプロセスや結果は、より創造的なものになる
・アイデアの質と最も強力な相関関係にあるのは、驚くなかれ、
アイデアの量である
・イノベーターは成功したから多くを生み出すのではなく、多くを生み出すから成功した。
量が質を生む・クラッシック音楽の作曲家が数多くの傑作を生み出した時期は、
たくさんの失敗作を生んだ時期でもある。ある人間が、画期的なアイデアを生み出したからといって、その人が同じことをやってのける確率が高まっているわけではない
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重度のプレッシャーがかかったときに、創造性は落ちる。それは、時間的なストレスがかかった日だけでなく、その影響は、翌日、翌々日、さらに次の日まで及ぶ
・浮かんだアイデアに早まった判断を下さないための最良の方法は、アイデアが浮かぶたびに、それを書き留めるか、図にしておくこと。そうすることで、今まで思いついたアイデアについて頻繁に考えることが可能になる
・アイデアを実行しないことこそ最大の失敗であり、罰の対象になることを周知徹底する。
失敗の数が少ないときには疑う必要があり、十分なリスクを負っていないか、失敗から学ぶのを嫌って、失敗を隠している可能性がある
・成功した新規事業の大部分は、最初のプランを実行に移し、何が市場でうまくいき、何がうまくいかないかを学んだ時点で、当初のビジネスプランを放棄している。正解を見つけるまで、
挑戦を繰り返すことのほうが、最初に戦略を予測するよりも、はるかに重要
・同じ価値観を共有する緊密なネットワークから抜け出さなければ、
成功のチャンスの最も大きい交差点に足を踏み入れることができない
・「事がうまく運んでいるからじっとしていよう」「長い間ここでやってきたから動かないほうが無難」「交差点のリスクを既存の視点から見る」といった
行動のワナを回避すること
・勇気とは
不安に抗うこと、
不安を克服することであって、不安がないことではない
創造性やイノベーションは、多様な人が集まる場所で生まれます。同類の人間が集まる場所では生まれません。
同じ価値観の人間同士で徒党を組むと、精神的に楽ですが、その誘惑を払しょくしなければ、大きな成功は望めないというのが、著者の結論ではなかったかと思います。