とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『ドイツ流街づくり読本・ドイツの都市計画から日本の街づくりへ』水島信

ドイツ流街づくり読本 ドイツの都市計画から日本の街づくりへドイツ流街づくり読本 ドイツの都市計画から日本の街づくりへ
(2006/07/06)
水島 信

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なぜ、ヨーロッパの街並みがきれいなのか?日本は、なぜ汚くなっていくのだろうか?その原因を、表面的な問題ではなく、本質的な問題にまで遡って、言及しているのが本書です。

ドイツ在住40年、ドイツで建築家となった著者の発言には、感心させられることが多々あります。これらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・傾斜地にひな壇の造成をすれば土砂崩れが起きる。森林を伐採すれば鉄砲水が起きる。堤が堤防になれば川の水は再生能力を失う。自然の理に適わないことをすれば、必ずしっぺ返しに遭うという当たり前のことに気づかなくてはいけない

・住宅建設であれ、都市という環境をデザインすることであれ、環境の変化を生じさせる行為をする場合、その連鎖反応をできるだけ自然の摂理にあった形で収めることが重要である

・魅力のある町(伝統のある町)は、一朝一夕で出来上がらない。そこに住む人たちが日頃から街を愛する努力の積み重ねと、時代という貴重な時間をかけて出来上がったもの。街並みの魅力とは、目を凝らせば、時代の知恵や工夫が随所に発見できるところにある

・何が自分たちの今に必要なのかを常に見つめながら、いくつもの世代を生き抜いてきた「質」に、現在の自分たちの「質」を加え、次の世代へ引き継いでいこうとする行為。無意識のうちに行われ続けてきたその痕跡が、街の風格をつくりあげる

・都市環境の貧しい町が日本に多い原因は、都市や街並みを形成する単位である建物の、それも新しい建物の質の悪さにある。それと同時に、環境も含めた建設工法の経済効率のみを優先させた文化程度の低さに、その原因を見出すことができる

・住民の自分の街に対してのアイデンティティーにも問題が含まれている。街づくりの第一歩は自分の街を好きになること。そのためにはまず、正負を含めての自分の街の特質を知ることから始まる

・ドイツでは、自分の権利を主張するところは主張するが、共同体に住む義務の「公共の利益」では、個人の権利に限界があると認識されている。共同体の消滅は、その共同体に属する自分の存在の消滅を意味し、自由も権利も全く意味をなさないということになる

・日本においては、古いものを、建物でも自然のものでも、破壊することに抵抗がなく、「今まで流れてきた時間の積み重ねをその時点で切り捨ててしまう」という行為が、歴史的に鑑みて犯罪的であるとは誰も考えていない

・駅には終着駅型と通過駅型の二通りの形がある。終着駅型は、市街地の中心にまで入り込み、中心街には便利だが、発着用の線路が複数必要なため、市街地に楔を打ち込む形になり、中心地区周辺の発展にはマイナスの影響を与える

・道路を通せば街が活性化するといった前時代的教条は、逆の効果しかもたらさない。街の活性化は、机上で考える利便さにはなく、便利さを我慢しても生活環境が快適になり、街の表情にゆとりが生じること。その政策を行うべきことにヨーロッパは気づいている

・路は都市のストラクチャーを決定する大きな要素であるが、鉄路・水路・道路・空路は移動・輸送手段の機能の違いこそあれ、目的地までの前進運動の手段要素にすぎない

・そこに住んで楽しく生活できる環境をつくりあげてきた結果、美しい街並みが出来上がり、その結果、街に活気が戻り、街そのものが住民以外にも魅力的に生まれ変わることで観光客が集まる。自分が好きになれない街は、他人も好きになるはずがないことの証明

・水路は時によっては都市交通の障害になることもあるし、水害という生活そのものに被害を与えるリスクももちあわせている。しかし、活用の仕方によっては、都市核の個性化を引き出し、中心市街地の景観に特性を与える

・ドイツでは、まず、他人に批判されたくない「わが町の汚点」を調査、分析して、その改善策を考えるという過程を必ず踏む。そして、都市の中の弊害が取り除かれた時点で、新たなる計画を提案するという展開が通常である

・日本では、町の欠点を指摘して、改善策を提案しても、批判をした時点で、話を最後まで聞いてもらえない。ドイツの事例をもって提案すると、「理想はそうかもしれないが、現実は違う」という反応をたびたび受ける。しかし、その「違う」に明確な説明がない



10年ほど前、ドイツや北欧の市役所を訪問し、街づくりについて質問したことがあります。そのとき、役所の担当者が言われた印象的な言葉は、「住みやすい町は、景観・緑地・水・出会い」でした。(本書を読み、「歴史」も重要だと感じました)

そのとき気づいたのは、住民が快適に感じることを行ったら、環境によい都市になっていったということでした。生活者が住みよい環境を整えること、この視点がないまま、日本の都市計画がなされているように感じます。

本書は、日本に欠けているもの、日本が学ぶべきことを提言する貴重な本ではないでしょうか。


[ 2013/03/15 07:01 ] 海外の本 | TB(0) | CM(0)
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