とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『木村伊兵衛と土門拳・写真とその生涯』三島靖

木村伊兵衛と土門拳 写真とその生涯 (平凡社ライブラリー)木村伊兵衛と土門拳 写真とその生涯 (平凡社ライブラリー)
(2004/01/25)
三島 靖

商品詳細を見る

木村伊兵衛と土門拳、二人の画風、作風は違いますが、戦後を代表する写真家です。

本書は、二人の発言をもとに、その思想や哲学を探ろうとするものです。写真家の神髄や崇高な魂を感じる部分が多々ありました。それらを一部ですが、紹介させていただきます。



・「自分の作品の前に立たされるのは、ぼくが裸にされて、みんなに見られるようなもの」(土門拳)

・「土門拳はぶきみである。土門拳のレンズは人や物を底まであばく。レンズの非情性と、土門拳そのものの激情性とが、実によく同盟して、被写体を襲撃する」(詩人・高村光太郎)

・カメラの軽さで写真を楽しんだ木村伊兵衛、カメラの重さで写真と対決した土門拳

・「当時(1920年代)、絵画とは異なった『空間と時間性』という写真の持つ独自の世界のあることを理解していたので、この流派(叙情的な風景写真の愛好家)から遠ざかっていた」(木村伊兵衛)

・「読者に強く訴える写真は、まず第一に、それが大きな感じを持つこと。それは何かと疑問を持たせること。模様風な構図をもっていることだ」(木村伊兵衛)

・「モチーフが叫ぶ声に耳を傾け、その指示するがままにカメラを操作すればよい。その指示のままにカメラが操作される時、カメラとモチーフが現前する。その結果としての作品は、この世の美しきもの、真実なるものの化身」(土門拳)

・「何も撮った写真を新聞や雑誌や展覧会に発表するものと決めてかかる必要はない。ぼくらは見たり考えたりしたことを、まず妻や子供や友達に語るではないか。語らずにはいられないではないか。その辺から始まると思えばいい」(土門拳)

・「写真の真実性とリアリズムというものを、はっきり分けないといけない。真実性というのは、誰が写しても写真が持っている真実。リアリズムは、作家の心の中の真実を表現しようというものが加わらなければいけない」(木村伊兵衛)

・「いやに大人になっちゃった。あの人(土門拳)は、大人になったらいけないんですよ」(木村伊兵衛)

・作品における体臭過剰の危険性を避けるために、「木村伊兵衛」を後退させて、カメラのメカニズムに、その表現を託そうとした

・「つとめて主観を排して、実物通り、正確に撮ることを信条としているのだが、その実物通りというやつが御婦人方には禁物らしい」(土門拳)

・「写真家の女の写真というのは、女を撮れていない。ただ美しいだけで、まるで人形。あれじゃ、便所へ行ってもションベンしませんよ。やっぱり、ションベンをする女を撮ろうと思った」(木村伊兵衛)

・「見れる条件のある人、見るだけの機運にある人が見てくれればいい。あとは、その人自身の気持の中で、その人自身の口を通じて、何となく伝播していく」(土門拳)

・「いい写真というものは、写したのではなく、写ったのである。計算を踏みはずした時にだけ、いい写真が出来る。僕はそれを、鬼が手伝った写真と言っている」(土門拳)

・「報道写真家として今日ただ今の社会的現実に取り組むのも、奈良や京都の古典文化や伝統に取り組むのも、日本民族の怒り、悲しみ、喜び、大きく言えば、民族の運命に関わる接点を追求する点で、同じことに思える」(土門拳)

・「長い間、中国仏教文化の影響下にあった日本仏教文化が、日本的なものを志向して自己変革を企てはじめた(時代の仏像は)日本民族の自主独立の矜持とヴァイタリティを探る(素材)」(土門拳)

・「千年以前創建の古寺を訪れても、古寺を訪れていると思ったことはない。現代の時点での接点を探究し、意義を追求しているのであって、古寺としての情緒や懐古に耽るためではない」(土門拳)

・「私の写真は、みんなの生活の延長線上にあるものです。みんなが見て、喜んでもらえればそれでいい。だから、高い値段はつけたくないんです。現像所へ出せば300円だから1000円でも大変な儲けですよ」(木村伊兵衛)



写真の可能性を信じた写真家として、よきライバルであり、天才であった、木村伊兵衛と土門拳の二人。同時代を生き抜き、出発点はさほど変わらなかったのに、見たもの、感じたもの、写したものは、好対照になっていきました。

この二人の天才を通じて感じるのは、天才とは、「自分の考え、哲学、思想を固め、それを信じて、邁進していく者」ということです。どの分野でも、同じなのかもしれません。


[ 2013/02/23 07:15 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL