とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『世界の壁-この本を読めばだれでも議論したくなる』沓石卓太

世界の壁―この本を読めばだれでも議論したくなる世界の壁―この本を読めばだれでも議論したくなる
(2008/10)
沓石 卓太

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とても易しい哲学書です。とても不思議な哲学書です。どの言葉も短いですが、内容は非常に濃く感じられます。

サブタイトルに「この本を読めばだれでも議論したくなる」とありますが、その通りです。この簡潔な哲学書の中から、感銘した文章を選び、要約して紹介させていただきます。



・社会とは、「約束事は守られるという実績」の積み重ねの上に成り立つ概念

・戦いの形に限らず、勝つための一番大事な用件は、多数の人に支持されること

・民主的な手続きを経て成立した政権ならば、国民はもとより、周囲の国にとっても、安全な政権

・民主主義の制度は正しい。しかし、賢い大衆でなければならない

・人々の行動に干渉できる力を「権力」とすると、考え方に影響力を持つのが「権威」

・宗教は信じることが出発点。誰かが信じたことを他の誰かも信じるという連鎖で始まる

・宗教や既存の哲学に、世界の政治のあり方に答えを求めても、建設的な答えを得ることはできない。むしろ、宗教や既存の哲学は、議論の成立を阻む壁となる

・人間には、人間を取り巻く現象のすべてを理解する能力は備わっていない。また、その必要もない。知識を追究するにしても、究極に至ることを使命と考える必要がない

・私たちは、いろいろな人と接触する。そういうことが可能であるのも常識のおかげ。人はみな、常識という緩衝材を上手に使って暮らしている

・マスコミは、社会の欠陥を記事にするだけ。マスコミは大衆に受けなければならないが、マスコミの姿勢は大衆に影響を与える。豊かな社会の「合意の必要性」を理解してほしい

・大衆の価値観で動くのが民主主義。二本立ての価値観が日本の特徴。二本立ての元は、神道と仏教。どんなところにも、神社とお寺がある

・論理の目的は人を納得させること。論理は納得できるものでなければならない

・仏教は宗教であるが、同時に哲学としての内容も持つ。そこが日本人を熱中させた。仏教に哲学的な印象があるのは、永遠永久こそ最高の価値であるという考え方に由来する

・生きることの本質は、感じることにある。考える能力だけが、人間性ではない

・日本では、議論を避けて、ことを決めるのが半ば習慣になっている。正面切って議論するとうまくいかない。議論を避けて、ことを決する技術がなければ、人をまとめられない

・誰にとっても、世界の中心は自分。世界は、そういう存在である

・善悪は約束をすることで生じる。社会は、約束は守られるという前提で成り立っている。約束を破ることが、反社会的行動になるのは当然

・日本では、タテマエは仏教的価値観、ホンネは自分、になる。そして、この両者の折り合いがつかない。ホンネが通る雰囲気の中で、タテマエでいくと、「嘘つき」と非難され、タテマエが必要な中で、ホンネを出すと、「自分勝手な奴」と非難される

・欲望を否定しても、きれいな社会はできない。欲望を肯定してこそ、議論が可能となる

・民主主義は、無責任体制になりやすい。誰を恨むことができないのが民主主義

・民主主義を成功させるためには、政治の意味と、リーダーを選ぶことの難しさを十分認識しなければならない

・批判するだけがマスコミの仕事ではない。民主主義の政治は強い政治ではない。力で奪い取った権力とは違う。みんなで盛り上げみんなで守らなければならないのが権力

・日本では、議論することは、欲望を論じることに通じるので、はしたない行為と見られる。多数の人が、欲望は悪であるという考え方を持っていれば、議論は成立しない

・新しい構想が実現するまでは理想。計画通りにいかなくても、結果は新しい現実となる。それが、次の新しい理想を描く出発点となる



この本には、当たり前のことが書かれているように思います。しかし、この当たり前が、当たり前でなくなっているところが、日本社会の病理であるのかもしれません。

この病理を根絶していこうという意志が弱まったとき、社会が悪い方向に進むように感じます。意志を強めていくための一助として、本書の価値があるように思います。


[ 2013/02/22 07:01 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)
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