とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『あのころの未来・星新一の預言』最相葉月

あのころの未来―星新一の預言 (新潮文庫)あのころの未来―星新一の預言 (新潮文庫)
(2005/08/28)
最相 葉月

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星新一に関する書を紹介するのは、「星新一の名言160選・スターワーズ」に続き、2冊目です。中学生の時(約40年前)、星新一のSF短編を数多く読んだこともあり、やはり気になってしまいます。

本書は、星新一が描いた未来が、現在、現実化しているのかを探っていくものです。預言者たるところを感じさせる箇所が幾つもありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・「やがて、人々は<人のあこがれる理想的な究極>を手に入れ、自分の遺伝子を復元したいなどという欲望を一切もたなくなる。人々が手にしたもの、それは『天国』。空間も時間も超越し、宇宙に意識を解き放つことだった」(神殿)

・「気の毒にな。ずっと生きつづけていなければならないとはな」(神殿)

・「『生きる意欲があります。わたしたちも、やりがいがありますね』男のからだの残された細胞をもとに臓器や筋肉や皮膚が再生中だった」(これからの出来事)

・「『自分たちのことを、人間とよんでいるわ。あたしたちの、ドレイの役をする生物よ。まじめによく働いてくれるわ』そして、いかに人間が自分たちのために一生懸命働いてくれるか、猫は語り始めるのだった」(ネコ)

・星新一の作品には、過剰な欲望を抱いた主人公に戒めを与えるという物語が多く、なかでも不老不死を願った者には、特段厳しい仕置きが用意されている

・星新一が描く物語の中では、未来を知った登場人物には必ずよくないことがふりかかる。未来を知った人はみな、それで得しようとばかり考えているから

・紙の本は絶対になくならないと信じている人が多い。だが、星新一は「ホンを求めて」の小説の中で、「ホンを失い、われわれは滅ぶ。意外に近い、あっという間の未来かもしれない」と警告している

・星新一は短編集「ありふれた手法」のあとがきで、「風俗描写を避けているうちに、だんだん民話に近づいてきた」とも、書いている。現実が民話を追い越すとよからぬことが起こる。それが民話の変らぬ教え

・超長寿時代の会社員の憂鬱を描いたのが「長い人生」。55歳で係長のエヌ氏は酒場で嘆く。「わが社では課長になるのは90歳。部長に昇進できるのが120歳。重役の平均年齢が160歳で、社長は200歳」。エヌ氏は、上司を失脚させて課長の座を射止めようとする

・人生が長くなったら、のんびり生きられるのかと思いきや、そうではない。終身雇用、年功序列は存続し、長くは勤められるが、上がつっかえて窮屈になり、出世争いは依然として続く。動かない人生、生きながらすでに死んでいる人生を、星新一は描く

・星新一は、高層マンションをたびたび物語の舞台にしている。その住人たちは普通でない生活を送っている。高層は欲望の象徴。不可解な物語がよく似合う

・星新一の「見物の人」で描いたのは、光ファイバーが張り巡らされた時代の相互監視社会。有線放送に映し出されるのは、刑務所の中、デパートの各階売場、寺の葬式など

・星新一の「健康の販売員」では、最近夫の様子がおかしいと思った女が「テレパシー剤」を購入する。販売員は、すぐさま夫の勤め先に電話をかけ、「テレパシー防止薬」を売る。ちなみに、個人情報保護法では、こうした医療情報を守ることはできない

・星新一の「かたきうち」という物語は、ひき逃げ事故で死んだ父親のかたきを討つために、息子が犯人を追い求め、二年後にようやく捕まえた犯人から臓器を取り出し、それを冷凍保存していた父親に移植して蘇らせるという「感動的な美談」

・星新一の「ナンバークラブ」の会員資格は35歳以上、記録情報は生年月日、学歴、家族構成、旅行、趣味、仕事。セキュリティ万全。コミュニケーションに苦労する人には、天の助けのシステム。だが、いったん入会したら、会員以外の人と話をするのが億劫になる

・星新一の「現象」で、地球上のあらゆる動物や植物が愛くるしく見えてしまう人間を描いている。牛もトマトも愛おしくて殺せない、食べられない。だが、それは人間という種が終わることを意味する

・星新一はスパイ物を多数発表している。人と人がいれば、そこに情報が生まれ、国と国が存在する限り、スパイの任務がなくならない。市民レベルの情報網が世界に張り巡らされている現在は、誰もがスパイになれる時代



星新一の未来は、再生技術、不老不死の長寿社会、情報監視、情報保護、会員システム、電子書籍のネット社会、ペット溺愛、動物保護の動物愛護社会、何でも自動化するロボット社会などを描いています。

40年前にも、その「兆し」はあったのかもしれません。星新一は、その「兆し」から、「なれの果て」を予測した人だったのではないでしょうか。


[ 2013/02/09 07:02 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)
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