とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『希望のつくり方』玄田有史

希望のつくり方 (岩波新書)希望のつくり方 (岩波新書)
(2010/10/21)
玄田 有史

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著者の玄田有史さんは、希望の必要性を説き、希望学を提唱されています。「希望」と「」と「幸福」と「安心」を区分し、その上で「希望」とは何かを定義されています。

「希望」を知って、活用するために有効と思われるところが数多くありました。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・幸福な人は、この状態が続いてほしいと願う。幸福は「継続」を求めるもの。それに対して、希望は「変化」と密接な関係がある。夢と違って、希望には、苦しい現実の中から、少しでも、良い方向に改善したい、ラクになりたい、そんな思いが宿っている

・安心は、希望とは異なる。安心が注目されるときは、不安が広がっている。経済の不確実性が、安心を求める気持ちを強める。安心には、「確実」が欠かせない条件

・不安が大きい社会では、つい確実なものを求めがち。しかし、不安を招く、変化の激しい時代には、かつて確実と思っていたものが、あっという間に役に立たなくなったりする

・希望は四つの柱から成り立っている。「1.ウィッシュ」(気持ち、思い、願い)「2.サムシング」(こうあってほしいという具体的な何か)「3.カム・トゥルー」(どうすれば実現できるかの道筋を考えること)「4.アクション」(行動を起こすこと)

・「多様性」と「バラバラ」は、つねに紙一重の関係。みんながそれぞれ好き勝手にやりたいことをやって、全体が良い方向に進むことを誰も考えない状態は、バラバラでしかない

・日本で、希望をたずねると、圧倒的に多くの人たちが「仕事」にまつわる希望をあげる。日本では、仕事に希望を求めすぎる。「生きる」ことそのものが希望でなければならない

・日本の会社の多くは、「仕事」ではなく、「人」に給料を支払う。会社の中で就く仕事の中身が変わっても、その人の評価ランクは変わらない。働くことが自分自身の評価となるという考え方が、働くことに希望を感じやすい社会をつくってきた

・仕事は、日本人の多くにとって、今でも希望をかなえるための大切なもの。しかし、その希望が強すぎることで生まれる悲劇もある。仕事と自分の間に上手に一定の距離を置くことが、現代では大切

・収入が多いほうが希望を持ちやすいというのは、ある一定の年収水準まで。その境目となる年収の水準は300万円前後。だとすれば、希望を持てる社会に必要なのは、誰もが300万円以上の年収を確保できること

・希望をもたらす可能性を支える背景には、「年齢」「収入」「健康」と並んで、もう一つ「教育機会」という大きな要因がある

・日本では、「ウイーク・タイズ」(緩やかなつながり)の重要性が認識されていない。転職で必要なのは、資格や語学力よりも、友人との緩やかなつながり。転職時に有益な助言をしてくれた職場以外の友人知人がいた人ほど、転職後の満足度や給料が明らかに高い

・希望がないと当初思っていた人が、希望を見つけていく過程で、共通するものは、「物語」もしくは「ストーリー」。人は、自分の希望を真剣に語ろうとするときに、物語(ストーリー)に向かいあわずにはいられない

・就職後の挫折体験の割合は、「挫折しなかった人」(5割)、「挫折して乗り越えられなかった人」(1割)、「挫折しても乗り越えてきた人」(4割)。希望を持って仕事をしている割合が圧倒的に高かったのは「挫折しても乗り越えてきた人」

・挫折が希望に変わる瞬間には、人から人へ経験の伝播がある

・希望は、人々を物語の世界に引き込む魔力がある

・希望とアニマル・スピリット(曖昧さや不確実性に対峙するための新鮮なエネルギー)には、共通する要素がある

・どうすればみんなが今よりハッピーに暮らすことができるか。そんな社会をどうすればつくれるか。そんなことを真剣に考えるのが、経済学

・地域再生の条件としての第一が、対話による「希望の共有」だが、もう一つは、「ローカル・アイデンティティ」(地域の個性・らしさ強み)の再構築

・地域の再生には、「よそ者」「若者」「馬鹿者」が大切。常識を覆す新しい力が、地域再生のきっかけとなる



希望学は、世界的に注目されているそうです。幸福な社会、安心な社会の前に、希望の持てる社会をどう構築していくかが、問われているのかもしれません。

幸福な社会、安心な社会を追いかけすぎるあまりに、希望の持てる社会をないがしろにしているとしたら、それは本末転倒です。「希望」こそが、人間にとって、一番必要なものではないでしょうか。


[ 2013/02/07 07:01 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)
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