とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『引きだす力―奉仕型リーダーが才能を伸ばす』宮本亜門

引きだす力―奉仕型リーダーが才能を伸ばす (NHK出版新書 389)引きだす力―奉仕型リーダーが才能を伸ばす (NHK出版新書 389)
(2012/10/05)
宮本 亜門

商品詳細を見る

宮本亜門さんは、ネスカフェのCMに出ていた20年前ごろから全く変わっていないように感じます。実績を積むと、人間は知らず知らずのうちに、偉そうになっていくものですが、低姿勢のままです。不思議だったので、その秘密を探るべく、本書を読みました。

本書には、宮本亜門流リーダー論が記されています。それは、自立した専門家集団を束ねるのに、最適なものです。奉仕型のリーダーは、今の時代に求められています。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・僕の役目は、舞台初日に向けて、役者やスタッフの良さを引き出す舵取り。関わる人が、力を最大限発揮し得る環境を作り、ワクワクした創作現場にすること

・役者という肩書よりも大切なのは、生の人間がライブで存在することで、お客さんに直接伝わる感動。それは解放されたエネルギーから発せられる。そこに人は魅せられる

・自分の人生しか踏んでいない父親が、「自分の生き方こそ正しい。だからこうするべき、こうしてはいけない」と、子供を一つの枠組みに無理にはめ込むのがよくないのと同じで、リーダーは、みんな違う人間と認めて、個性や才能を引き上げ、共に成長するのがいい

・「演出家という職業になるのが目的」ではなく、演出家という職業を使って、「観客に感動を与え新しい考えを伝えていくことが目的」

・「いいよ」は、「ダメ出し」ではない「いいこと出し」。いいよが、人をもっとよくする

気づいたことを提案する時は、「ダメ出し」ではなく、「ノートにとったこと(気づいたこと)を言わせてもらう」という言い方に変えている

・親鳥のえさを待っているような甘えた行動の奥には、誰かが自分の道を切り拓いてくれるという他力本願な思いが渦巻いている。そういう姿が見えた時には、「やりたくて選んだ仕事だよね。自分の責任として、自由に自分で判断してほしい」と言うことにしている

・リーダーは、周りから一目置かれがち。その距離を縮めるべく、あえて自分から、できる限りさらけ出すことから始める

・子供のころから学んだ「ちゃんとする」教育のせいで、オーディション会場で、緊張が邪魔をし、その人の魅力が出ない。嫌な人と思われたくない、申し訳なくて言えないといった世間体や気遣いが入る。和を尊ぶことが、深層心理に植えつけられているのは問題

・意見を出し交換し合えると、共に創る実感が得られる。ブレーンストーミングのメリットは、参加した人がその議題にコミットしたことで、全体の中での自分の役割をよりはっきり認識できるようになり、自分のこととして、実行に移していけること

・凝り固まった考えは、その人の可能性を潰し、将来の希望を失わせ、段々と無気力にさせるだけ。役者でも伸びる人は、どんどん固定観念を壊そうとする

・褒められることに慣れていない役者には、躊躇なく、しつこく褒め殺す。相手に嘘だと言われても、あきれられても大丈夫。何も悪いことをしているわけではない

・人にはない輝きを放てる才能を持った人は必ずいる。それなのに、リーダーが、今までの歴史や実績を意識し、会社や自分の過去に囚われて、新しい試みができなくなるのはもったいない。組織は、新鮮な風が入ってくることで、これまでにない可能性が広がる

・もの作りをする上で、気をつけているのは「観客の想像力にゆだねる」ということ

・予算はどんなことにも関わってくるが、お金の話の振り方、持っていき方によっては、周りのメンバーのやる気をなくさせてしまうことを、リーダーは知っておくべき

・いくらやりたい仕事でも、忙しすぎて時間がなくなると、心の余裕がなくなり、楽しさは消えてしまう。そして、いつの間にか文句が多くなり、仕事が進まないことを、人のせいにするようになる

・シェークスピアの言葉通り、どんな方法であれ、まるで舞台に立つ一人の役者を見るかのように、自分を俯瞰で見ることができた時、はじめて自身の立ち位置を確認できる

・本や雑誌を作っている人で、紙や印刷のインクが好きだから、この仕事を選んだ人はそういない。それより「人に何かを伝えたい」の思いこそが目的、すなわち北極星のはず

俯瞰して見ることは、自分らしさが自分勝手なものになったり、自分だけの凝り固まった「幸福の物差し」で他人を計ってしまうことを抑制してくれる



目的を一つ上に置くこと、自分を俯瞰して見ること、この、高い頂に飛んでいく感じが、宮本亜門さんの、ふわっとした雰囲気の要因かもしれません。

とにもかくにも、リーダー自身が、「一歩先」にいて、「一段上」にいれば、メンバーに対して、いくらでも低姿勢になれるのかもしれません。奉仕型リーダーについて考えるのに、最適かつ有益な書ではないでしょうか。


[ 2012/12/05 07:03 ] 育成の本 | TB(0) | CM(1)
参考にしました。
詳細な記事をありがとうございます。本書読解の参考にしました。
[ 2016/10/02 13:04 ] [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL