とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『法然・愚に還る喜び―死を超えて生きる』町田宗鳳

法然・愚に還る喜び―死を超えて生きる (NHKブックス No.1168)法然・愚に還る喜び―死を超えて生きる (NHKブックス No.1168)
(2010/11/25)
町田 宗鳳

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町田宗鳳氏の著書を紹介するのは、「法然対明恵」「野性哲学」に次ぎ、3冊目です。「法然対明恵」は、明恵上人のことを知るために読みました。そこで、法然上人にも興味を覚え、本書を読みたくなりました。

法然上人は、鎌倉仏教の創始者とも言うべき存在です。もし、法然上人がいなければ、今の日本の仏教は、全く違った道を辿っていたかもしれません。興味深い箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・現実社会は不公平そのものだが、「いのち」の存在を見つめるなら、過去も現在も未来も、人間は見事に公平な世界を生きている。法然のキーワードである「往生」を「幸福」に置き換えてみると、現代人の心にもグッと近づいてくる

・念仏や真言の直接的な目的は、それを称える者の意識の浄化であり、カルマ(業)の消滅。法然は、念仏に贖罪の働きがあることを実感し、不断の念仏を強く薦めたのは、人々の心の奥に潜む「否定的記憶」を消すのに、不可欠であることを知っていたから

・私たち自身の無意識が目の前の現象を呼び寄せている。無意識から出てくる心的エネルギーがプラスかマイナスかで、生きる世界が変わってくる

・13世紀に入って、「思想の革命家」法然が、戦いの狼煙をあげると、その後、親鸞、道元、日蓮、一遍など、個性的な思想家たちが輩出し、新たな仏教の流れを生みだした

・高いエネルギーをもつ宗教は、優れた芸術を生みだす。現代宗教が、元気を失っている証拠の一つとして、現代の芸術家が宗教と無縁のところで活躍している事実がある

・怨霊や地獄などの思想が広がるにつれ、民衆の神仏への帰依心が深まると同時に、僧侶への依存心も強まっていった。個体の生物学的な死に、思想的な意味づけをして、民衆の宗教への依存心を高めるのに熱心だったのは、洋の東西を問わず、僧侶たち

・法然がどれだけ深い宗教体験を味わったとしても、もし比叡山を下りなかったら、彼は「思想の革命家」とはなりえなかった。都大路に降り立った瞬間、法然はもはや求道者ではなく、救済者として生まれ変わった

・法然の口称念仏にも自己催眠術的な要素があり、それによってさまざまなビジョンを眼にする。定善観にせよ、前世療法にせよ、そこで浮かび上がってくるイメージの世界が、それを体験する者の人生の意味を根本から覆すほどの力をもっているということ

ナムアミダブツを称える者の自覚ひとつで、世界の中心に屹立する宇宙樹となって、穢土と浄土を一気に結びつけたわけだから、真の念仏は他力のようであって、他力ではない。自力と他力の区別がつかないところに、法然のナミアミダブツがある

・法然の真価は、人間の救いは「物知りの知識」にあるのではなく、「計らいのない愚者の知恵」にこそあることを突き止めた。「愚に還る喜び」という考え方は、小賢しいエゴを捨て、バカにならないと往生できない。つまり、幸福になりえないというもの

・法然の思想的斬新性は、怨霊・地獄・末法という三つの暗黒色で塗り込められていた死のイメージが、金色に輝く阿弥陀仏の姿に一気に塗り替えたこと

・仏道を行ずる上で、最大の障害は自我意識。本質を見抜いていた法然は、深い懺悔の中で真剣に称えられる念仏こそ、いかなる修行よりも尊いと判断した

・「極重悪人」という自覚がある人は、懺悔ができている人。宗教というのは、痛々しいほど反省が深まらないと始まらない

・法然の専修念仏は、日本宗教上初めて、伝統的仏教教団と朝廷の双方から組織的弾圧があった。それが、いかに革新的思想であり、社会的影響力が大きかったかを物語っている

・庶民という言葉には、「権力者に抑圧された弱者」というニュアンスがある。実際は、小心な欲望集団のことでもあり、法のスキを狙って、非倫理的行為に走る者が少なくない

・法然は、恐るべき権力をもつ尼将軍(北条政子)にも、権力の乱用という過ちを犯さないように遠慮なく忠告している。相手が遊女だろうが、最高権力者だろうが、どのような社会的階層の人とも誠実に接したことが、法然の魅力

・唐の臨済禅師が「仏に逢っては仏を殺し、祖に逢っては祖を殺せ」と言ったように、法然をもっとも誠実に、かつ真摯に学ぶということは、「法然を殺す」こと。そのときこそ、「法然を超えた」ことになる。特定宗教の絶対化ほど、人類の進化を妨げるものはない



「南無阿弥陀仏」の念仏が、カルマ(業)を消滅し、心の奥に潜む「否定的記憶」を消し、心的エネルギーをプラスにする力を宿すということ。たった七文字のナムアミダブツが、本当に奥深いものであることを本書によって、初めて知りました。

ナムアミダブツは元祖「元気になれる魔法の呪文」です。この法然の思想(南無阿弥陀仏)が、インド仏教、中国仏教からの訣別を意味し、日本仏教の誕生をもたらしたということも、大変意義があると感じました。
[ 2012/06/14 07:02 ] 町田宗鳳・本 | TB(-) | CM(0)
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