とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『「都市縮小」の時代』矢作弘

「都市縮小」の時代 (角川oneテーマ21)「都市縮小」の時代 (角川oneテーマ21)
(2009/12/10)
矢作 弘

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日本の人口が減少を続けています。地方の中小都市人口も縮小しています。ところが、驚いたことに、欧米の中小都市も縮小しているそうです。コンパクトシティは世界共通の課題となっています。

縮小の中で、人を集め、活気を取り戻した成功事例を世界中から集めたのが、本書です。大変面白く読めました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・世界の人口10万人以上都市のうち、4分の1以上が人口を減らした。この現象は世界中の、工業都市、歴史都市、重厚長大産業都市、経済停滞都市、繊維関連都市、厳冬地帯都市、鉱業都市などで起きている

・人口減少で先進諸国のトップを走る日本だが、縮小都市研究では欧米諸国に遅れている。縮小都市研究国際会議では、縮小都市国際比較、インフラと財政、代替する新しい文化創造産業などが、議論されている

・縮小の軋轢を調整しながら、経済的、社会的な縮小の負担を、社会全体でいかに分かち合うのかが、縮小都市で問われている

・地方分権改革を進めている世界の国では、自立した縮小都市ほど、他の都市と連帯して、フルセット型の都市機能を維持している

拡散都市構造を放置すると、「高齢者などの生活支障」(車社会弱者が3分の1)、「中小市街地の衰退」(防災、防犯、子育て環境の悪化)、「財政の圧迫」(都市施設の維持、行政コストの増大)などの問題が生じる

・21世紀のアメリカの「都市のかたち」を決める条件は、人口移動・ガソリン価格・都市型産業立地。いま悲惨な中西部の縮小都市も、この3条件の幾つかに支えられれば、変貌する

・縮小都市化するインナーシティに溢れる空き地を目障りなものと見ずに、可能性をはらむ土壌と考えたほうがいい。デトロイトで始まったのが、社会変革型の都市農業運動

・クリーヴランドのデザイン地区構想には、都市型創造企業を育てる狙いがある。ポスト工業化社会でも、モノづくりは終わらない。モノづくりのソフトに携わる新都市産業をダウンタウンに集積させる考え方

・セントルイスでは、街路景観の修景プログラムが動いている。225街区の美化・活性化(街路のサイン、植栽、ベンチや彫刻などのストリートファニチャー、垂れ幕などの色彩・形状のデザインコード)に取り組む。歩いて暮らせるダウンタウンを目標にしている

医療・健康産業はアメリカGDPの16%。メディカルコンプレックスは、新都市産業としての期待が大きい。病院は労働集約型ビジネス。医師、看護師、検査技師、職員などの雇用規模が大きく、研究所には高学歴・高所得者が多い。衰退都市の税収増につながる

・ライプチヒ(旧東ドイツ)では、1970年代半ば以降に市外縁部に開発した大規模住宅団地の空き家率が増え、社会主義体制時代に放置されていた「歴史的共同住宅(19世紀末~20世紀初め)」を改築したものに人気が出て、転居する人が増えている

・ドイツの縮小都市のキーワードは“穿孔”「孔(あな)をあけること。あるいはその孔のこと」。都市空間が希薄化すると、連続した街並みに孔があく。その孔を活用して、公園、原っぱ、小さな森にして、過剰住宅対策と都市環境改善の一石二鳥を狙う

・画家には、「家賃が安く、スペースを自由に使える廃墟利用が魅力」。都市が縮小すると、ある地域が辺境化する。しかし、一方では、主流派でない人が、廃墟に宿る創造性の開拓者となる

・兵庫県尼崎市の製造業出荷額は、この40年間で3倍に増加したが、雇用者数は同時期に60%のマイナス。「雇用なき拡大」という縮小都市の典型的類型。成長することばかりを考えてきた既往の都市政策手法は、限界を露呈した

・福井市のDID地区(1km2あたり4000人以上人口密度)は拡散し、「低密度の土地浪費型」で、車依存土地利用になった。大学は郊外に移り、路線バスの高い運賃と運行本数の少なさや都心の高い駐車料金で、まち中から、若者の姿が消えた

・福井市の「コンパクトな都市づくり」対策は、1.「鉄道利用者増加」(13%増)2.「都市居住者増加」(16%増)3.まち中の歩行者自転車通行者の増加(21%増)を掲げる



本書を読み、豊かになるためには、拡大信仰を捨てて、賢い撤退をすること。「小さく賢く成長する都市」になることが、日本の都市に求められているように思いました。

製造業でも、大量生産を目指さず、独自の技術で、付加価値の高い製品をつくり続けている企業が、好調です。都市も全く同じことではないでしょうか。

都市間競争に勝つということは、独自のものをつくり出し、遠くから人やモノや情報が集まるようにすることに他ならないのだと思います。


[ 2012/05/25 07:07 ] 海外の本 | TB(0) | CM(0)
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