とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『「スウェーデン・モデル」は有効か』レグランド塚口淑子

「スウェーデン・モデル」は有効か―持続可能な社会へむけて「スウェーデン・モデル」は有効か―持続可能な社会へむけて
(2012/02)
レグランド塚口 淑子

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スウェーデンに学ぶことがいっぱいあります。しかし、今の日本は、スウェーデンの福祉政策だけを学ぼうとしているように思います。

スウェーデンの福祉政策の背景にあるものを理解せずに、福祉政策を学んでも、全く意味がないのではないでしょうか。

本書は、スウェーデンの骨格(政治、法律、税、教育、思想、歴史、文化など)について、学ぶものです。日本は、ある意味、北欧の真逆です。真逆だからこそ、感銘するところがいっぱいあります。本書の一部を紹介させていただきます。


・スウェーデン・モデルは、社会への「信頼感」と、それに続く「法の尊重」や「再分配コストの低さ」(汚職レベルの低さ)によって、「高い経済効果」をあげていることにある

・1900年代初めのスウェーデンでは、貧困、狭い住居、飢えや病気が普通。その後、工業化の波が訪れたが、1930年代初め、アメリカの恐慌がスウェーデンにも波及し、失業率が20%を超し、ストライキとロックアウトがヨーロッパで最も多い国になった

・1889年に、参政権と「8時間労働、8時間休息、8時間の自由時間」を掲げた社民党が、1932年に政権をとり、同党による長期政権は、1976年まで続いた

・1926年の出生率がヨーロッパ最低を記録した後、子供を養育できるより良い環境(仕事も家族も)の対策がとられた。1931年「出産保険金支給制度」、1938年「児童扶養援助金」「母親への財政援助」などの制度が制定された

・1928年社民党党首ハンソンが国会で演説した「国民の家」構想(共同体意識と共感が家の基盤。良い家では、誰も特権を持たず、無視されず、蔑まず、強者は弱者を抑圧し利用せず、配慮、思いやり、協調、支援の精神がある)は、今日でも頻繁に使用される概念

・近年の日本経済の停滞は、賃金と社会保障を抑圧し、分配関係を悪化させ続け、個人消費を停滞させたことが原因。所得分配が平等的な北欧では、こうした原因による需要不足の景気停滞になることは少ない

・女性就業が一般化しても、子育てとの両立を可能にする施策がないと、「少子化」「労働力の過少供給」「家庭の所得減少」の三つの問題が生じる

・スウェーデンでも、GDPの70%以上が、第三次産業。豊かな国ほど、その比は高い。福祉関連サービスや金融サービスはサービス産業の重要な構成要因。医療・看護・介護・保育・教育は、それ自体がGDPを生む上に、雇用を増やす産業連関効果も大きい

・北欧の電力供給には、「市場競争させながら、再生可能電力の供給も市場化する固定価格買い取り制度」の工夫と「競争が非効率となる送電部門と、小規模が参入して効率を高める発電部門を分離する発送電分離政策」の工夫がある

・税負担の重い北欧諸国の方が分配は平等的。国民負担率が低いアメリカ、トルコ、メキシコなどは分配が不平等(貧困者を選別的に優遇する政策は、かえって所得分配が不平等になる)

・スウェーデンでは、財政の分野でも、地方分権が進んでいる。基礎自治体のコミューンが所得の20%台、日本の県に当たるランスチングが10%台、計30%強の税を自治体で徴収し、自治体で使っている

・スウェーデンでは、米英独と並び、ジェネリック医薬品の使用率は40~50%台。日本は19%。スウェーデンの薬剤供給公社は、より安い薬品への代替を促すために、患者に情報を提供している

・スウェーデンの社会制度の特徴は、「情報公開制度」(1766年)、「オンブズマン制度(国会・行政・マスコミのチェック機能)」(1810年)、「投票率80%を超える選挙」(1960年以降)、「省益を伴わない政治主導型の行政」「地方分権制度」(1974年に課税権)

・スウェーデン・モデルは「共働き型家族政策モデル」。女性のみが、仕事か子育てかという二者択一を強いられないようにするもの

・1996年、保育政策を教育省に移管し、就学前保育を就学前教育として位置づけ、従来の保育所を「就学前学校」と称し、公教育の一環として、子供の知識と能力の向上を図った

・婚外子が55%になった背景には、婚外子の母親として認定された方が、住宅補助金の受給、保育制度の利用、税制面で有利になることと、「総合累進課税」(夫婦の収入合計で課税)を免れるため、同棲にとどまるカップルが続出したこと


スウェーデンの人口は増えています。私が訪問した10年前、888万人だったのが、現在は937万人になっています。移民を数多く受け入れていることと、女性が離婚しても子供を育てやすい環境が整備されていることも一因です。

日本のような「貧困女子」がいません。日本のデフレの原因は、「円高」だけではないように思います。根本的な問題は、「少子化」「移民拒否政策」にありそうです。

そうならないためのモデルがスウェーデンです。本書には、そのヒントが満載です。大いに参考になります。
[ 2012/05/17 07:08 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)
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